「カフカの絵本」
題名とおり、カフカの短編『恩返し』『初めての悩み』『羊猫』の3短編を絵本化したものである。カフカの絵本、というコンセプトには最初はとても嫌な感じがした。
なぜなら、カフカの世界は小説であり、すなわち文字であり、不条理なイメージはそれぞれの読み手の頭の中で作られるものであって、絵などあったらかえって邪魔だという感じがしたから。
しかし、この絵本を開いてみると作品のセレクトと、あとやはり絵のセンスが凄くいい。カフカの生真面目な雰囲気から滲み出るユーモアがうまくビジュアルとなっていると思う。絵は時代・国籍不明もいい感じで、ほどよく抽象的。作品のイメージを限定されずに済んでいると思う。
収録作品の中では『恩返し』が一番好き。