REVIEW

血を飲むビジュアル

2009.08.20

Nf洋画★シネフィルイマジカ
「吸血鬼ノスフェラトゥ (’22)」

 ムルナウ監督のドイツ・サイレント映画の傑作。ホラー作品。現在の基準で観ると凄い怖いということはないかも。怖さを求める人には不向きかな。

 80年前以上の作品。当時のことを考える。映画という新しいメディアに制作者は手探り。観る側も今までにない経験という時代。わかりやすくするためか、テンポは遅め。ここは正直ツライ部分もある。

 でも、作り手は見本がなかった中での映画作りはとてもエキサイティング(同時に困難も多かっただろう)だったと思うし、観る側もまったく新しい娯楽の存在に新鮮だったと思う。このあたり少し羨ましい。

 演出のひとつひとつを当時の制作現場のことを想像しながら観るのも楽しい。後から出た吸血鬼作品の本作からの影響を知ることもできた。

 あまり怖くはない、と書いたが作品の出来が悪いということはない。主人公の若者が、契約者(実は吸血鬼)に会うために人里離れた城を訪ねる、というはじまりは魅力的だし、後には吸血鬼自ら街へ乗り込んでいく流れもなかなか雰囲気ある。終始なんとも「不気味」な雰囲気はよく出ていると思う。トリック撮影もなかなか。ラストは賛否両論だろ思うけど、僕はヨーロッパ映画的なアッサリ感は好みでしたね。

 今回シネフィルイマジカで観たバージョンはフィルムに着色がしてあって、今ふうなサントラがついていた。それはそれで悪くはなかったけど、できれば白黒・サイレントのオリジナルも観るほうが当時にタイムスリップする感じでいいな、と思いました。


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