SPOTTED701&ATTIC presents 「真夏の映画狂室」 Film Review Program "B"
札幌のフリースペースATTCで開催された「真夏の映画狂室」。国内の珍しいインディペンデント・フィルムの映画祭のプログラム。そのBプログラムについてのレビューをお送りする。
■「限界人口係数」(監督:西村喜廣・1993)
Story.
近未来。人口増加問題の最終的な解決のためか「エンジニア」と呼ばれる殺人者が生まれていた…デビュー作。1995年ゆうばり国際ファンタスティック映画祭にて審査員特別賞受賞。本作は同監督の「東京残酷警察」(2008)のベースとなっている。
Review.
息が詰まった。プールで息を我慢して水面に上がった感じ。それが観終ったあとの感覚。それが本作の舞台の閉塞感・世紀末感を表現しているのかもしれない。でも、僕としては間が無いのがつらかった。これでもか、これでもかと過激なイメージが激しいスピードも伴って映し出されていく作品である。
画面が高速で動いたり、凝った特殊効果は見どころでもあるのだけど、その過剰さに疲れを感じるのは自分がオッサンなのかな、と思う。これが10代、20代前半なら「すげー」とまっすぐに評価できるのか、迷ってしまう。それにしても、本作は、アート作品でもなく、ヴィデオクリップでもない以上、なんらかの「間」というものはあったほうが、良かったのでは、と重ねて思う。
基本プロットや後半に登場する警察の感じとかとっても好き。スプラッターなクリーチャー感は監督の強く指向するセンスだと思うのだけど、後半大盛りすぎて、お腹一杯なりすぎ感はあった。
全体の過激感をより高めてみせるための、静的なシーンが欲しかった。最初から最後までフルスロットルに「キレた」感じは悪くないのだけど。どこか、ホッさせて、また過激になるリズムが欲しかった。
未見の「東京残酷警察」では、「間」について、どうなっているのか個人的に楽しみにしながら観るチャンスを待とう。
■「魔悪子が来る!!」(監督:井口昇・2008)
Story.
悪魔のような様相の魔悪子は次々に女を自分の仲間にしていって男を滅ぼす活動を開始した。ある高校をターゲットにされていく…「ENBUゼミナール」と監督・俳優養成スクールの卒業制作作品。
Review.
「片腕マシンガール」の井口監督作品。ゼミの卒制ということで、仲間で楽しく制作していった感じが画面からよく出ていて楽しい。身内ノリっぽいところはなく、そういった不快感はない。みなさんマジメなんだろうなぁ、と感じた。
内容も悪魔ふうの「魔悪子」というキャラでホラー風の設定でありながら、学校を舞台に下世話とも思える恋愛模様をユーモアを加味してわかりやすい。恋愛というテーマを決して添え物ではなく観客に恋愛の意味を感じさせるところも良質。
同時に編集や演出も基本的な映画の定石を踏んでいるので受け手を選ばない。手堅い構成を持った作品で、誰にでも楽しめそうな作品になっている。