SPOTTED701&ATTIC presents 「真夏の映画狂室」 Film Review Program "C"
2009年8/21〜8/23に札幌のフリースペースATTCで開催された「真夏の映画狂室」。国内の珍しいインディペンデント・フィルムの映画祭プログラム。そのCプログラムについてのレビューをお送りする。
■「童貞。をプロデュース」(監督:松江哲明)
Story.
ドキュメンタリー作品。2人の20代前半の童貞が登場。それぞれの現状打破のために活動を開始する。ひとりはAV現場に男優としてつれていかれ、もうひとりは好きでたまらないアイドルのために制作した自主映画を、劇場で本人に見てもらう企画を開始する。
Review.
童貞というテーマの場合、キワモノか、またはマジメすぎるか、どちらに転んでもあまり僕は観たい作品にはならないと思う。そこを本作はうまくバランスをとっている。僕の観たい作品になっていた。ドキュメンタリーだから、を言い訳にした撮りっぱなし感は無く、編集にリズムの良さを感じさせる。かつリアルな感触を画面に植えつけるのも成功していると感じた。
童貞卒業というより2人の男の「生き方」というところに大きくフォーカスされている。童貞というのは意外にサブ・テーマであって、ふたりの男のある期間の「記録」となっている。
男性のナイーブな心情がよくわかる内容になっており、女性にも興味深い内容に違いない。童貞というのを前提とした、プラトニックなストーリーだともいえる。ここに登場する二人はとても繊細な人なんだなと感じた。それに比べて自分はとても鈍感で単純だった。敏感で繊細な人ほど今の時代は生き難いのだろう。そんなことも考えさせられた。
■「ライク・ア・ローリング・ストーン」(監督:梅澤嘉朗)
Story.
「童貞。をプロデュース」に出演した梅澤嘉朗の自主映画作品。主人公はある女の子に思いをよせるが女の子はアッサリと他の男と一緒になってしまう…
Review.
恋愛についての幻想または単なる恨み節的な作品かと思っていたら、後半の展開は実に監督のイマージネーションが発揮されていて楽しい。映画というものがどうあるべきか、観客にみせることについて、キチンとわかっていて制作されている作品だと思った。ここにある恐るべき客観性は監督の趣味から作られたものなのだろうか。
■「A・Y・A・K・A」(監督:大橋裕之)
Story.
舞台はサブ・カルチャー的な雰囲気の古本屋。マニアックな店長と、一度もライブ経験のないミュージシャンのバイト男。そこに、ある日バイトとして美しい学生の女子が加わる。店長もバイト男も一目ぼれをする…
Review.
最後まで、観終わると本作の主人公はあくまで店長とバイトの男のふたりだということがわかる。そこがわかってホッとするし、気持ちのいい作品だった。ある意味、女子を排除した「男達」に捧げる作品ではないか。特に最後の店長とバイト男との包丁を目の前にしたシーンは実に美しい。こうして積み重なり合い、深まっていくコミニュケーションもあるのだ。
最初のほうの店長の意地悪そうな描写を見て、強者の店長、弱者のバイト男という構図だと凄く嫌だな、と思っていたら、そんなことはなかった。そこが良かった。店長が女の子バイトに「働きマン」を勧めるあたりは実にニヤリとするところ。