FILM REVIEW 「パシフィックハイツ」(1991)
あらすじ★若夫婦が少し無理をして、屋敷を買う。借金返済のため空部屋を貸すことにする。部屋を強引に借りた男はとんでもない間借人だった。巧みに法律の権利を楯に出ていこうとせず、いやがらせをずっと行なう。
監督が「真夜中のカーボーイ」の人とわかると、相当なベテランだと思う。それを知ると映画の流れに納得できる。キャラやストーリー設定について、とてもオーソドックスに進む。誰が観てもわかりやすい作品になってます。
難をいえば、わかりやすくキチンと娯楽性のある分、展開にはやや無理のある点がありますが、そこは「映画だから」と片づけましょう。そんな気分で観られる作品があってもいい。細かい点に気にせず楽しくいこう。
あと、良くも悪くもファッショナブルな要素はない。ないならその分映画のストーリーに集中できるので悪くないし、作品の普遍性を保つことができる。本作は18年前の上映ですが「昔だなぁ」と感じさせず、古さがマイナスになってない。
平坦ともいえる作品舞台を大きく支えるのが悪役のマイケル・キートン。本作のすべてはこの悪役のためにある。殺人鬼とかではなくて、ひたすら大家に嫌がらせをする間借人というのが、観る側に身近に感じさせて、心を大きく揺さぶる。若夫婦側に感情移入してイライラさせてくれます。
最初にも書いたとおり、展開からオチまでにはやや無理がある。だけど、マイケル・キートンの扮する「嫌がらせ屋人生」というのは単なる非現実なモンスターではなくて、ひとつの実在しうるキャラクターとして人間臭く描かれるのは興味深い。
彼にとって「嫌がらせ」というのは「娯楽」ではなく「生き方」というのが作品から伝わってくる。それはリアルに怖い。オーバーな存在として描かれているが、誰もが持っているかもしれない、理屈や常識では計れない「心の闇」をテーマにした作品ではないだろうか。