「SAPPORO次世代コンテンツ産業創造プロジェクト
第2回プロジェクト会議」
主 催:インタークロス・クリエイティブ・センター
日 時:2011年1月20日
会 場:札幌プリンスホテル別館パミール
ゲスト:押井 守(映画監督)・山下 卓(小説家)
● 押井守を招いたクリエイティブなプロジェクト
札幌市デジタル創造プラザ、通称インタークロス・クリエイティブ・センター(ICC)は豊平区にある市が運営するクリエイターの育成・支援施設。ここではクリエイターへオフィスやイベントスペース、映像編集室などの提供、機材の貸し出しから、マーケティング支援、ワークショップ等も行っている。これまでアニメーション作家、ミュージシャン、演劇関係者、映像作家等多種多様のクリエイターが入居して活躍をしている。
本施設にて昨年より「SAPPORO次世代コンテンツ産業創造プロジェクト」がスタートとした。これは、アニメーション・プロデューサーであり本施設のアドバイザーである竹内宏彰がリーダーとなり「クリエイター」と「企業」が取り組む産業創造を目指すプロジェクト。
全3回のシリーズで各2日間の日程で国内有力ゲストを迎え講演および札幌のクリエイターとのワークショップ行う内容だ。第一弾は昨年12月にゲストとして、現代美術家として世界的に知られる村上隆が登場した。
そして、今年1月の今回はアニメーション映画「攻殻機動隊」で世界に名を知られた映画監督、押井守が招かれ、1日目市内ホテルにて基調講演が行われた。その様子を紹介していこう。客席より壇上右側に席が用意され、ICCのチーフコーディネーター久保俊哉氏による紹介で押井守氏が登場した。カジュアルな格好で、髪は短くしていた。押井守氏というと長髪のイメージがあったので意外だった。
マイクにスイッチが入ると、自分は話すことは仕事ですが講演という形で一方的に話すのは得意ではないですね、と語りスタートした。それからは、自身が演出家として業界に入った当時のアニメ業界の状況から、「攻殻機動隊」で世界的な注目を浴びたことについての自分の状況の変化、世界に通用するためには表現を「特化」することが大切だと語っていった。
ここで、今回の企画のテーマに、一番、関係した発言を紹介したいと思う。
「札幌からクリエイターが世界に直結する、ということはとてもいいことだと思う。必ずしも東京を経由する必要はない。ただし、世界で活動しようと考えるクリエイターには『なぜ、世界なのか』というのを意識して欲しい。僕は重要なことを2回言います。『なぜ、世界なのか』というのを考えて欲しい」
また、講演最後に質問のコーナーがあった。学生より映画監督に必要なことを教えてください、という質問に対しては、
「人間関係を作れない人じゃないとダメですね。それができない人はやめたほうがいい。自分も得意ではないのですが、なんとかやってきた。人に伝える、飽きさせない、引きつける、こっちをむかせる、他人に自分の言うことを説得することが監督の仕事だと自分は思う。素質じゃなくてスキル。監督になりたかったら、まず、自分の家族を説得する、友人を説得する、職場のとなりの人を説得して、それができたら会社の上司を説得する。これらができないとなれないと思う」
押井守氏は、話し始めるとよどみなく言葉が続いていく。決してハッキリとした聞きやすい話し方ではないのだが講演というよりも、もっと身近で話をしているような感じで、その魅力に引き込まれていく内容だった。
現在の自分の国内での作品作りの難しさを話しつつ、最後に「でも、今、とっても楽しいですよ」と語り、プライベートで凝っている空手についても触れて「空手をやると、体にもいいし、お酒もうまい」と微笑みながら語る押井守氏は、なんともつかみ難い印象もあり、同時に強いバイタリティを感じた。
次回の本プロジェクトも注目して欲しい。
Photograph & Text by Shinichi Ishikawa (NUMERO DEUX)