NEWS / REPORT 札幌アートシーン 札幌で起こっているリアルなコト。
ニュメロデューが現場に出かけてレポートします。
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
NUMERO DEUX Report.2011.06.27
「映像と音楽。
『生』の言葉を持った映画的ステージ」
あんず音楽堂×映蔵庫 第2弾「変奏曲」
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
● 円山のバーでおこなわれた
音楽と映像のステージ。
札幌を拠点に活動する映画制作団体「映蔵庫」(主宰 長沼里奈)と、あんず音楽堂(主宰 中島杏子)による音楽と映像によるステージ企画が、中央区円山にあるバーおこなわれた。このお店「円山夜想」(マルヤマノクターン)は普段もさまざまなジャンルのライブをおこなっている。
今回の企画内容は中島杏子によるチェロ演奏に長沼里奈 監督による映像を重ねる試み。これはクラシック音楽や映像文化をもっと身近に感じて欲しいという目的があるそうだ。
会場はL字型レイアウトのお店。入ると手前にテーブル席、奥がカウンター席になっている。テーブル席の奥にチェロのステージがセットされ、映像はステージに重なるようにプロジェクターが一台。そして、ステージから観て左側の壁面にむけてもう一台セットされていた。この2台のプロジェクターの存在は本企画の特長となっている。これについて後で説明する。奥のカウンター席に座って開演を待つことにした。
● 開演をBLTサンドを食べながら待つ。
紅茶と一緒に。湯気のたつステーキを横目に。
本企画は週末の土日を使って2公演行われた。前売券はすべて売切れ。そのため会場は満席であった。開演は20時だが18時よりディナータイムで飲食が可能だったので、早めに来て食事を楽しみながら開演を待つ人が多かったかと思う。
お店はバーであるがフードメニューもいくつかあり、ステーキ料理が目玉となっている。お客さんに運ばれていく湯気をあげる鉄板皿にのせられたステーキは実に美味しそうだったが、今日は僕はBLTサンドと紅茶にした。サンドはトーストしてあり食感も良く、シンプルな具材の組み合わせがうまい。
フライドポテトも添えてあって、ちよっと食べたい程度なら2人で食べてもいいぐらいのボリュームはある。ポテトにはケチャップとマスタードもちゃんとついてるコレ個人的には重要。食べ終えて
開演60分ほど前。この空き時間は良かった。いくつかメモを整理したり、ぼんやりとする。
● 開演。特長的なステージ構成。
それは、会場を含めた映画的ともいえる表現
20時少しすぎに開演した。すると壁面のほうのスクリーンにステージ直前の時間を過ごす中島杏子の姿が投射されていた。映像の中で彼女はお店のスタッフにより本番の時間を告げられる。壁面の映像は消えて、彼女は控え室から会場にチェロを持って客席の中を進んでステージまで歩いていく。演奏が始まるとステージにむかって抽象的な映像が投射され演奏する姿に重なっていく。
ひとつの曲目が終わると、チェロをかかえて彼女は控え室に戻っていく。すると壁面に再び映像が投射され、演奏を終えチェロを抱えて自宅帰っていく彼女が映し出されていく。
演奏用のきらびやかな衣装からラフな服装に着替え、大きなチェロのケース抱えて店を出る。地下鉄に乗り、カフェでひとり遅い夕食を食べる。そして映像は終わる。
そして、一番最初のように再びステージに登場して演奏を行う。演奏が終わり控え室に姿を消すと、再びスクリーンに演奏をしていない「オフ」の彼女状態が映し出されていく。それが終わると彼女は再びステージに現れる…本公演ではこれが繰り返されていく。彼女の仕事である「演奏すること」が、何日にもわたるストーリーのように映像とステージで表現されていく。
この流れが本ステージのもっとも特長的なアイディアであり、いわゆる演奏をしている「オン」の姿の彼女は現実のバーのステージに登場して、観客の目の前で演奏をする。彼女がひとつの曲目を終わると、控え室に姿を消す。すると、そこから映像による演奏をしていない時の彼女「オフ」の状態が映し出される。普通のステージでは決して表現されることのない「オフ」の状態を映像で表現することによって、「オフ」の中での彼女の心理も観客に伝わっていく。
これはドキュメントというよりも長編 劇映画2作手がけてきた長沼里奈による「映画」的なひとつの表現技法であり、ステージという現実のライブパフォーマンス、観客を含めてひとつの「映画作品」として解釈することもできる。半分生の映画、「半生の映画」と説明できるかもしれない。
● 公演を観終えて。
今回のステージは映画表現の新しい可能性かも。
音楽と映像を組み合わせたステージというアイディアそのものは、現在ではそれほど新しいものではない。音のためのビジュアル、ビジュアルのための音といった理由でライブ・パフォーマンスはいろいろな形で行われている。
しかし、本企画における映像は、ステージの演出というワクを越えた公演全体を映画化したような表現方法として感じられた。もちろん、その演出もチェロの生演奏のたしかな存在感によって成立するものでチェロのステージも、それだけで十分満足できるものであった。
終演後、出口の階段で来客者に挨拶をしていた長沼里奈に出会った。今回の演出について聞いてみた。すると当初はシンプルにステージに映像を重ねるVJ的な演出を予定していたらしい。しかし、それが「自分がやる意味」を考えた時に、今回のような演出になったという。
Text & Photo by Shinichi Ishikawa (NUMERO DEUX)
あんず音楽堂×映蔵庫、 第2弾
「変奏曲」
2011年6月18日(土)・19日(日) 開場18:00 / 開演20:00
場所:円山夜想(マルヤマノクターン)(南1条西24)
料金 前売2,000円 / 当日2,500円
主催 あんず音楽堂 / 映蔵庫