●「マルドゥック・スクランブル 排気」(封切作品)
まず、自分の立場から。僕はアニメしか観ていません。
3部作の最終作。つまり、クライマックス〜ラスト。
そんな気負いは作品全体からが感じられない。
前作で、終わりと思ったカジノのシーンが続くのは驚く。クライマックスなのに、そんなことしていていいの?という感じ。全体を通して振り返ると、なかなか良いシーン。あえて、難をいうならこのシーンは、比較論でいけばアニメーションより、小説のほうがしっくりくる気はした。
最終決戦に備えて、主人公の心を整理していく場面。カラフルな映像とカジノという華やかな中で、もっと動きがあっても良かったかな。回想シーンに飛ばすとか。まぁ、それも小手先っぽい気もするので、結果的に地味になったけど、良い場面かと思う。ゲームを通して生き方を考える。ベタではあるが核心。
ラストのバトルは、意外にアッサリなのはいい。この控えな目なところが、本作に余韻をあたえている。主人公にとっては、戦いは 仕事でも、楽しみでもないからね。勝つか、負けるか別として、もう、彼女にとって、敵役はとても小さい存在に見えたのではないだろうか?
3部作を通して振り返ると、派手なシーンや意外な展開は思ったより少ない。一度、人生を失った主人公の再生の話として捉えれば、本作の魅力よりわかるかなと思う。動的より静的な場面で印象に残る作品だった。最後にひとことだけ、今回のチラシのデザインはいまひとつだと思う。
Text Shinichi Ishikawa / NUMERO DEUX