□ 映画の"字"間 第1回
「コクリコ坂から」
監督 宮崎吾朗
制作 スタジオジブリ
封切日 2011年7月16日
上映時間 91分
● 主役の2名以外に全力集中すること。
「映画」にとって、ストーリーは「大事」だが「絶対」ではない。映画にはビジュアルもあるし、サウンドもある。
金曜ロードSHOW!で観た。
僕は基本21時には寝室行きなので、寝よう寝ようと思いながらラストまで観てしまった。宮崎吾郎作品。僕は「ゲド戦記」を観ていません。
結論からいうと、おもしかった。僕を眠りの国に誘うのに打ち勝った作品だから。それはそれは凄い。
舞台設定は昭和38年。僕の生まれる前の話だが、作中で断片的に幼少に見た光景もあるし、見知らぬ光景もある。全編「こういう日本もあったのだな」というのを、終始もだえながら感じまくるのが本作の楽しみ方ではないか。
視線の位置。とにかく背景を一生懸命見る。主人公の男女が会話をしている時は、全力で背景を見る。炊事をしている時は、作っているものや、部屋の様子を強い精神で見る。背景美術を注視し、主人公2名以外をいかに集中して観るかがもっとも重要。
主人公の2名は料理の前に置かれた「お箸」のようなもの。
とっても大事だが本質ではない。
ストーリーは背景をみせるために存在する、
それに徹しているのは凄い。保険をかけてない。
若いカップルの誕生を出生の秘密という「ちいさなフック」を作っている。物足りない、という否定的な感想もあるみたい。でも、いいじゃん。最近の映画にある「敵を倒したら、まだ生きていて、また倒したら、真の敵はまだいる!」というクドイのはたまにお休みで。坂を自転車2人乗りで下るところは、まさに「ジブリ節」という感じで抜群の安定感はある。
ストーリーがシンプルだから、それ以外のところに目がいきやすいし、その目がいきやすい部分をしっかり作っている。これはアリだと思う。コンセプトとして成立いている。「『映画』って、ストーリーだけじゃないよ」というのをメジャーレベルの視線で作っている。それはとてもいいし、今後もトライして欲しい。
Text by Shinichi Ishikawa(NUEMRO DEUX)