▼映画レビュー
「オブリビオン」(封切作品)
あらすじ:エイリアンの襲撃を受けた未来の地球。人類は他の星に移住。無人の廃墟の地球で主人公(トム・クルーズ)は女性パートーナーと管理的仕事をしている。そんな中、事件が起こり、主人公の運命は変わっていく。
— あいまいに生きることの大切さ。
だって、本当のところは誰もわからないでしょう。—
ふと、自分は「なんのため」に生きているか考える。答えは出ない。でも、僕は生きている。つまり、実は生きるのに理由はいらないのだ。生きるのに理由がいらないなら、死ぬのも理由はいらないのかな、と考えることもある。
A.トムの冒険
トム・クルーズの新作はSF。ストーリーは内向的。キャストも最小限で、序盤などトムばっかりのプロモヴィデオ状態。だが、トムの乗るオシャレな飛行マシンや、やたら暴れる無人ポッドさんが、娯楽作にしてくれてる。そのため良い意味で内向アート映画になることを食い止めている。本当は、アクションシーンはなくても本作は成立するのだけどストーリーが前に出すぎると、「何で今さら」という批判が発生しそうな話なのだ。配役も、キラキラなメジャー感たっぷりのトム・クルーズ。さらに、確実な保険としてのモーガン・フリーマン。
B.トムのお話。
なぜ、ストーリーが前に出てはダメなのか?それは、内容がなんともシンプルだから。まぁ、それに文句はいえない感じなのだけど、ほめることもできない、そんな微妙感が頭にまとわりつく。フワフワなストーリーの中に、実にキレイな美術セット、アクションシーンを織り交ぜて、そこで作品の完成度をつなぎとめている。そのバランスが本作の妙味であり、独創性というよりもパッケージングがうまい作品だと思う。
C.トムの生き方
生きることに絶対的な理由を求めることができない。それをあえて求めると理由がみつからず逆に死にたくなってしまう。生きる理由とは実際には、さまざまな気持の複合体であり、かつ極めて流動的だといえる。つまり、生きる理由にはベースとして、「とりあえず生きてみる」という曖昧さが僕が一番大事かと思う。なぜかといえば、自分の知っていること、他人が言っていることが、すべてとは限らないから。
本作のトム・クルーズも廃墟の地球にオアシスを見いだし、「地球っていいよね」という気持からスタートしている。そこが大事だと思う。みんな適当(テキトー!)に生きようよ。真理なんて考えないでさ。
Text by Shinichi ishikawa(NUMERO DEUX)