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映画の琴(コト)『隠された記憶』
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トラブルは混乱だといえる。ツタヤにて、一度借りたのだけど観ないまま返却。気になってもう一度借りる。今回は観ることができた。そんな週もあるよね。上記予告の印象はラスト期待のサスペンス調。でも、僕は違う印象を受けた。本作はかなりアート系の作品で、ラストうんぬんより、そのプロセスが魅力となっている。謎解きに集中するより、場面場面のおもしろさを味わうのがいい。観終わった後も見返したくなる作品。サントラがないのと構図固定の長回しが多いので退屈さを感じるかもしれないけど、この2点も意図のあるものだと思う。
人はトラブルに見舞われる。それがフィクションならサスペンス作品となる。作品化されたものはふつうは実に小気味よく進み、観終わった後にカルシタスを与える。それが良作と呼ばれる。そうならば、本作は良作ではない。小気味良さもラストのカルシタスもない。圧倒的にあるのはトラブルに見舞われた側の混乱であろう。ふつうの作品なら(テンポが悪くなるので)バッサリ切られる当事者の混乱。そこをテーマにした作品であり、その点を理解すると味わいのあるアート系映画だとわかる。さまざまシーンに隠される監督の意図。それを読み解くのが楽しい。だから、繰り返し観たくなる。2度いいますが本格正統サスペンスではないのです。
Text & by Shinichi Ishikawa(NUMERO DEUX)
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