NUMERO DEUX NEWS 15029 札幌のアートなニュース。石川伸一の視点。
心に入り込むグラフィックス。
人生の中の挿絵(さしえ)について
1日、目に入るのは現実という名前のビジュアル。人生をテキストのように理詰めで作っていく。でも、その途中に目の中には単純な現実と異なる豊かな「ビジュアル」があれば、人生は立体的に楽しくなると思う。生きることがテキストなら、僕はそこに豊かな「ビジュアル」=「挿絵」が欲しい。挿絵が好きだ。小学生〜中学生の頃によく読んでいた小説には挿絵をよくみかけた。それは文字で構成される小説の中に規則的に目に入ってくる文字以外の情報。作品シーンのビジュアル化。それは小説という表現を楽しむ中で、とっても印象に残る。挿絵は小説等の文章表現に添えられる、もうひとつの表現。それによって、その世界がより魅力的になっていく。
シンヤチサトは札幌在住のイラストレーター、アーティスト。1989年よりフリーとして活動を開始。「自然から創造したモチーフ」をテーマの作品を制作している。国内はもとより、国外でもドイツのゲシュタルテン出版からのグリム童話集「GRIMM」に作品を提供。また、コペンハーゲンのホテル「FOX」の部屋をリ・デザインするプロジェクトにも参加。絵本、インテリア、アパレル、パッケージなどのジャンルを超えた多彩な活躍をしていく中、4年ぶりの個展が開催された。
会場は正方形キャンバスに描かれた平面作品約30点に埋め尽くされている。本展示の独創的なのは、クリスマスシーズンの今、シンヤチサトが想い描く「クリスマスのように見える」内容の作品展示ということ。この「のように見える」という視点はユニークでありクリエイティブ。これからも続いていくクリスマスの新しいビジョンを考えさせてくれる。そう、クリスマスは古く、そして新しく変化していく行事なのかもしれない。生活していく中での行事というのは、自分の人生を彩る「挿絵」だと思う。シンヤチサトの作品から、僕が思い浮かぶのは、生活を彩るビジョン。彼女の描くカラフルで抽象的なグラフィックスは、楽しさと共に、受け手それぞれのイメージを浮かべることができる多様性を持っていると思うのだ。その印象はとても心に入り込むほど立体的。ぜひ、展示を感じて欲しい。
会場のクラークギャラリー+SHIFTは、札幌中心部にある観光スポットとしても人気のある二条市場のあるエリア内にあるギャラリー。 北海道のクリエイティヴなアイテムを集めたお店、MUSEUMの2階にある。そして、この建物も大正時代につくられた古民家をリノベーションした建物である。この建物を観るだけでも札幌の古い建築物を鑑賞できるスポットになっている。
Text by メディア・プランナー 石 川 伸 一 (NUMERO DEUX)
シンヤチサト展「Looks like X’mas.」
会期:2015年12月1日(火)~27日(日)11:00〜19:00(月・第三火休)
会場:クラークギャラリー+SHIFT
所在:札幌市中央区南3条東2丁目6 MUSEUM 2階
Web:http://www.clarkgallery.co.jp