NUMERO DEUX NEWS 16007
札幌のアートなニュース。
地域にとって、演劇はどこから
きて、育つのだろうか。
以前、告知記事として書いたイベントについて、実際行ってみた感想、というより考えたことを書こうかと思う。イベントの内容を簡単に説明すると、地域にとっての演劇スペースの活用について、東京都豊島区立舞台芸術交流センター「あうるすぽっと」支配人である岸正人をゲストに迎え、地元ゲストとともに地域・演劇・劇場をテーマに行われる2部構成のトークセッション。とてもわかりやすく、自分のためにもなったイベントだった。ソフトな口調の岸正人さんのお話から、僕の個人的な感覚で受け取ったメッセージが2点ある。それは「舞台芸術(アート)にはお金が必要」ということ。もうひとつは「それぞれの演劇芸術施設の特性にあった企画」をおこなうべき、ということである。以下は、本イベントに参加して、個人的に感じたことを書いていく。なので、本イベントの様子を伝えるものではなく、学んだこと、頷けたこと、そして普段僕が考えていることがミックスされたのが以下のテキストとなる。
「演劇(アート)にお金は必要」という点はもちろんである。ただ、それを公的予算として考えた時、その前提として一番必要なのは市民の理解だと思う。福祉や雇用と同じくらい、演劇の予算が大切なことを理解してもらう。それについては、演劇に関する教育や広報なんだろなぁと思う。義務教育での演劇についての教育。社会人にはインターネットを利用して、スマートフォンむけの演劇の魅力について毎日更新されるようなメディアがあればいいと思うのだ。人は知らないものには興味をひかれないし、理解をしない。演劇も知られれば知られほど理解される。理解されるものには予算もつくと思う。
ただ、お金があればすべて解決するという訳でもない。そのお金を有効に使うには、演劇に関する専門知識を持つ公務員が必要。そして、その公務員は行政職員のラインに乗った正規職員としてキチンとした身分保障をすべきだと思う。演劇について日常的に考え、実践(実験)できる部署が、係も流動的に異動できるほどの人数がいたほうがいい。その理由は演劇に関するプロジェクトは、リスクもあり、時間もかかる。そこに従事する人間は長期的な視点で取り組むことが結果的にいいものが創りだされる可能性が高い。ところが、それを実行する職員の身分が短期雇用だったり、身分が不安定だとすると、どうしても短期的なビジョンしかつくれなかったり、長期的なビジョンも担当者が変わりすぎるとうまくいかない場合がある。そして、大切なのがこうした演劇に関する専門職員が行政のラインの中でも管理職なっていく仕組みあったほうがいい。行政の組織の中で「演劇畑」というひとつの層をつくるぐらいの人員の絶対数があればいいなと思うのだ。
そして、お金について、コストを抑える、というのも同時に考えなければならない。ボランティアの活用や、無料で使用できるインターネットのSNSサービス等を積極的に使いたい。
そして、その演劇施設にあったことをするには、その地域全体、行政全体で考えないといけない。そのためには演劇に関する公務員は、どんどん外に出るべきだと思う。日頃から外に出歩いて。さまざまな民間の演劇を観る、演劇人と交流を重ねていく。芸術祭とか、特別な公演以外だけではなく日常でいかにアートに関して考察し、実験を重ねていくのが大事かと思う。
そして、セクショナリズムから脱するのには演劇(アート)の部署こそ必要だと思う。演劇と関係のない他部署を巻き込んでいかなければならないと思う。演劇の部署だけでがんばる、というのはとても限界があると思うのだ。演劇の公的な政策をおこなうのは、単にアートの純粋培養をおこなうためではなく、観光資源の創出だったり、まちづくり、住民コミニュケーションのためにおこなうためだ。これには行政の本質的な役割も含まれているのだから。行政のアートへの取り組みというのは、行政の全分野に関係させるべきだと思うのだ。そのためには、つねに演劇の部署は他の部署となにか連携できることはないか、というの考え、他部署でも協力体制ができることが望ましいと思う。例えば、他部署のもっているネットワークを広報に生かすとか、他部署の管理しているものが、演劇に関して撮影等に役立つとか、考えればいろいろあると思うのだ。
矛盾するようだが、僕が同時に思うのは現在の予算、人員の中で、もっとできることが、あるのではないか、ということである。人員や予算の獲得がもちろん大切ではあるが、先に書いた、ボランティアや、ネット上SNS等の無料のサービスの活用など、お金をかけずにできること、もたくさんあると思うのだ。予算はさほどかからないことも、前例がない、規則がある、ということで実行できないことがあれば残念なこと。お金をかけない工夫というのも実に大事だと思う。
Text by メディア・プランナー 石 川 伸 一 (NUMERO DEUX)
「札幌みらい塾 2016 ACFアートサロン in わくわくホリデーホール
まちと演劇シリーズ1「地域に生きる演劇と劇場とは」
日時:2016年1月20日(水) 開場18:00 / 開演18:30 / 終演20:30
会場:わくわくホリデーホール (札幌市民ホール) 2F第一会議室(中央区北1西1)
料金:一般 1,000円 学生、ACF会員、V-net会員 500円
(大丸プレイガイドにて一般券のみ取り扱い 電話[011-221-3900])
※学生・ACF会員・V-net会員はメールにでご予約の上、当日清算(学生証、会員確認)
出演:岸 正人、木村典子、山田修市
コーディネーター:斎藤ちず
主催:ACF札幌芸術・文化フォーラム / 大和リース(株)
後援:札幌市
協力:さっぽろアートボランティア・ネットワーク(V-net)