SAPPORO GUIDE+ No.004
札幌を<初めて楽しく>アートに歩くガイド。
No.003 「雪について共有したいこと」
さて、札幌のまちに、はじめて旅行等で訪れて、文化的に楽しく歩くガイドの4回目ですね。前回は三岸好太郎美術館という、お気に入りのアートスポットを紹介しました。今回は総論的な全体的な記事しようかと。ころころと話が飛びますね。すいません。思い出したのですよ。第2回で紹介した大通公園も総論的で大事なんですけど、同じくらい大事なものを。この地を理解するのに必要かと。それは「雪」。これを書いている時期、窓をみればたくさんあるもの。札幌というまちを興味を持って理解するのに「雪」は、はずせないものだと思うのです。本記事はあくまで僕の主観ですが、この地で生まれ育った人に共通する感覚ではないか、と思って書いていきます。これを共有していただけると、冬の札幌のごく普通の街の姿を、少しプラスした楽しめると思うのです。
さて、子供のころ、そう小学生の頃ぐらいまで雪は楽しいものでした。冬になると、雪が楽しく、歩道に雪が積み上がれば、そこを意味なくキックしてみたり、パンチしてみたり、突入してみたりする訳です。小学校ではスキー授業がはじまり、校庭にスキー用の小さな山がつくられ、学校が終われば近所の広場や、公園でそりやミニスキーで遊びます。そして、親にさっぽろ雪まつりに連れていってもらいます。かまくらや雪だるまを作ったり。雪を投げ合う雪合戦をします。
さて、これがですね中学〜大学くらいまでになるともう、雪はあまりにも毎年のあたりまえのもので飽きてきますし、スキーは中高は授業であったりするので、やったりしますが、そりやかまくらづくりなどの雪遊びはあまりしなくなります。雪まつりもいかなくなってきます。遊びの興味も雪以外のものになってきます。テレビ番組、ヴィデオゲームや、映画、音楽等。もちろん、この年代でスキーを趣味として楽しむ人は一定数いると思うし、札幌は少し車を走らせれば本格的なスキー場がすぐです。でも、身の回りにある「雪」で気軽に遊んだりはしなくなってきます。
社会人になると、雪はうんざりの対象になってきます。なぜ、まずは交通機関へのダメージです。これは仕事や大事な約束に影響しますし、コストもかかる。車は10月ぐらいまでにはスタッドレスタイヤにしないといけません。雪が積もれば二車線道路が、雪で実質一車線になる時もありますし、狭めの中通なら車がすれ違うのが困難に。対向車がきたらどうしょうと思います。交通量の多い大きめな交差点がスケートリンクのようになり、ブレーキが効かない、なんてことが普通にあります。バス、鉄道は雪での遅滞が普通。飛行機も雪で運航遅れや運休もよくあること。加えて空港から市内までの40分ほどの快速も雪で止まることがあるので、冬の札幌に訪れる方は注意が必要です。救いは、札幌市内は地下鉄のアクセスでかなりカバーできるので、雪の影響を受けない地下鉄は頼もしく感じます。札幌の地下鉄はゴムタイヤであるのが特長です。
あと、自宅が一軒家だと除雪は大変な作業。これはお年寄りだけの家だと深刻な問題にもなっています。これはマンション住まいだと除雪は基本しなくていい(最低限の共有部分は管理会社がしてくれる場合が多いです)ですが、車が青空駐車場だと雪で車がすっぽりと雪に覆われてしまい車種もわからない状態になることもあります。この雪を取るにも結構大変。駐車場は屋根つきがベストだけど、賃貸だとなかなかそれは難しいです。でもせめてロードヒーティングの駐車場がいいかと思います。これがあると、ないとでは全然違います。ロードヒーティングがあれば車から下ろした雪をほっとけばいいですから。でも、ないとおろした雪を他の人に迷惑のかからないようにしないといけないのが面倒。雪を運ぶのにスコップのほか、ママさんさんダンプが必要になってきます。
まちを歩くのも雪の影響大です。夜中にしんしんと雪が降って、朝仕事に行こうと、自宅を出たら雪で道がない!なんてこともあります。そんな時はもう、雪をかき分けて歩いたり、車道を少し歩いたり大変です。そして、転びますね。僕は道産子と呼ばれる北海道生まれ育ちですが、シーズン1回は必ず派手に転びます。もう、漫画みたいにバナナの皮を踏んだ感じで。腰を打ったりします雪で転ぶというよりも、雪の下に巧妙に隠されたアイスバーンで転ぶのです。これは歩道はもちろん、特に走る車のタイヤで磨かれた車道にも多くて、信号横断の時が本当に注意。道路の真ん中で転ぶ人もみかけますし、自分も転んだこともあります。すべり対策として、冬用の靴や、普通の靴に裏にいろいろオプションでセットする対策グッズはありますが、決定的なものはないようです。だから、もう気をつけるしかない。だから、はじめての方は冬用のすべり対策のある靴は必ず履きつつ、注意深く歩くのがいいかと思います。
市内中心部は地下街や地下歩道があるので、この時期は市民は可能な限り、地上を歩かない、というのが知恵になっていると思います。除雪がされても路面の凍結状況まで解消してくれる訳ではないので、注意が必要なのです。ただ、対策として、場所によっては道の滑り止め用の砂箱が設置されていて、これは自由に砂を撒いてすべり止めにできるようになっています。
季節的な話だと11月ぐらいから雪は降り始めます。初雪というやつです。雪をみると、まず思うのは「ああ、自転車が乗れなくなる」ということです。冬期間、自転車を預けるサービスもあります。札幌ではある程度の都市でありながら、気軽な交通手段である原付等のバイクをみかけるのは珍しい。きっと長い冬が関係していると思う。
ただ、最初は降っても、溶けてしまって、つもらない。降っては溶ける。降ってほんの少しだけ積もる、という感じです。溶けることなくクリスマス時期にはおおむね街が雪に覆われる感じになります。その雪がもう積もって溶けないような状態を「根雪」といいます。世間話で「ああ、もう根雪だね」なんて会話をします。
正直、この地に住んでいると、雪は上に書いたとおり寒さ、交通機関の不便、歩きにくさを連想するので、あんまり楽しい気分になれない事実はあります。特にお年寄りには、除雪や歩くのは大変なことになってきます。
でも、雪の存在がないと寂しいと思う。1年を過ごすリズムというのを考えると、外界のすべてが雪におおわれる期間があるという季節感は、貴重なものかもしれませんし、ウィンタースポーツがこれほど気軽にできるのも、とてもいい。札幌に住む人にとって、雪とは身近で、迷惑でもあるのだけど、ないとさみしいものだと思う。知ったようなことを書きますが、世の中、楽なことばかりがいい生活とも限りません。特に雪なんて別に雪自身に悪意がある訳ではなく、自然現象にすぎない訳ですから。そして、上の写真ような雪がつくりだす光景にハッとする感動もあります。自分がメディアをつくるためのデザインの発想において、雪が作り出す光景というのは影響を受けているような気もするのです。僕にとって、雪は面倒くさいけど、離れると寂しい。そして、自分のセンスにも影響を受けている存在だと思います。そういう人、この地に結構いるかと思います。
Text by メディア・プランナー 石 川 伸 一 (NUMERO DEUX)