『フォーカス』(2014年)
ウィル・スミスは、
「気のいい、おにいちゃん」に戻れないのか。
ウィル・スミス。もうハリウッドのベテランクラスの俳優だと思う。でも、僕の中では「インディペンデンス・ディ」(1996年)、「メン・イン・ザ・ブラック」(1997年)の印象が強い。それは「気のいい、おにいちゃん」というキャラクターである。僕はそこが好きだった。ただ、それを続けるのは難しいのか。
スミスは現在47歳であり、近年では作品ごとに、いろいろなキャラクターを演じている。本作では、クールな天才詐欺師。でも、どうもしっくりこない。観ていてこの映画って何なのだろう?と、途中までよくわからなかった。ラストが近づいてわかったきた。オシャレな犯罪映画を狙っているのかな、ということ。ただ、どうもノレない。どこか、ちぐはぐなんだ。
映画前半に披露される盗みのテクニックは、なかなか見世物として、おもしろい。それが終わると、後半はガラリと舞台を変えて、ひとつの大きな詐欺を中心としたドラマになっていく。オシャレな犯罪映画に必要なものは何か? 洒落たサントラ、会話、シーン。それらがどうも見当たらない。ただ、ひとつ印象に残るのは、スミスが隠していて、こぼれ落ちた親しみやすい雰囲気。僕は47歳でも「気のいい、にいちゃん」になれると思う。次の作品で、そうなれないだろうか? 30点。
▼ アート・メディアライター 石川 伸一(NUMERO DEUX)