NUMERO DEUX NEWS 16065アートなニュース
紙って、本とは何だろう?
本の未来。それは、紙なのか、デジタルなのか。都市中心部も郊外の国道沿いにも大型書店ある。反面、スマートフォンや、デジタルパッドで急速に電子書籍の使いやすいサービスも登場していく。いったいどうなるのだろう? そんな一種の戦争状態の中で、静かなブームが紙のメディア「リトルプレス」(ジーン、ミニコミ誌、インディマガジンとも呼ばれる小規模出版物)である。
この現象は何なのだろう?リトルプレスというのは、ミニコミといった名称で1960年代くらいから現在まで続いている。それが、今あらためて注目を浴びるのは、印刷物の制作がコスト・技術的に容易になったこと。インターネットによって宣伝もやりやすい。そんなデジタルな発展が、電子書籍の登場と同時に、リトルプレスという小規模印刷物の発表にも優しくなったのはおもしろい。そしてデジタル情報に対して「紙」の持つアナログ感が、アート的な意味合いで注目を浴びているか。また、テーマも多様になったのも理由になっていると思う。
最近、本サイトにて、都内を中心にリトルプレスをお店を書いている連載記事を書いている。全7回を予定。現在まで5つのお店を紹介している。ジュンク堂池袋店 / 代官山蔦屋書店 / ユトレヒト/ タコシェ / MOUNT ZINE 。このあたりで、実際に魅力的なリトルプレスの紹介していこうかと思う。今回紹介するのは札幌発のリトルプレス「Bocket」である。
「Bocket」は、2014年に創刊。発刊は年刊。札幌のすすきのにあるお寺で開催される、日本文化体験イベント「鴨々川ノスタルジア」の公式ムック本(雑誌と書籍をあわせた性格を持つ刊行物)である。
内容は札幌のすすきの、鴨々川周辺をテーマにした「まち」を取り上げる。といってもタウン情報誌というより、文化的な考察をしている書籍に近い。活字も多く読み応えがある。デザインは堅苦しくなく、ポップすぎずいいバランスだと思う。お年を召した方にも手に取りやすい。発行人はすすきにある元芸者置屋を改装したギャラリースペース「鴨々堂」の石川圭子。編集長は札幌在住の歌人山田航である。
自分にとって、すすきのと、その周辺は「北海道最大の歓楽街」というイメージだけが強烈で、そこで止まっているように感じる。でも、そこにはお店には文化があり、あるのはお店だけではない。そんな地域に対する愛と人間らしさが感じられるリトルプレスだと思う。
最新号の3号の特集は「神社」。中島公園〜山鼻エリアにある神社を紹介。神社の基礎知識といった記事もためになる。ほかにも、札幌の競馬史、札幌在住の作家による「薄野怪談」という2ページほどのショートショート作品もおもしろい。今後も文化や人に焦点をあてて、あえて「紙」という手触りを持って発行していって欲しい。
Text by
アート・メディアライター 石 川 伸 一 (NUMERO DEUX)
『Bocket』
http://kamokamogawa-nostalgia.net/bocket/