Photo by 淳平 筈井
NUMERO DEUX NEWS 16061 アートなニュース
表現は楽しい。小さくて大きい「紙メディアの世界」=リトルプレス
代官山蔦屋書店=新しい本屋さんに馴染むリトルプレスたち。
A.)連載のイントロダクション
リトルプレスとは…個人や団体が制作から流通までを手がける小さな出版物。Zine(ジーン)ともいう。少し前なら、インディマガジンとかさらに昔はミニコミ誌とか呼ばれる種類のものかもしれない。もっと昔ならズバリ「自主制作」という感じですね。歳がばれるなぁ。意味合いはいろいろ変わっていく。「リトルプレス」のニュアンスは、規模さえ小さければテーマは自由。取材記事等のある雑誌ふうのものから、個人のアート作品に近いものまで幅広く感じる。
2016年9月。まだまだ暑かった都内。リトルプレスをあつかう魅力的なお店を7つ訪れてみました。今後、7回に分けて、ひとつひとつ紹介していきたいと思う。今回は2回目。
B.)2回目 代官山蔦屋書店を考える
前回はジュンク堂池袋店について記事を書いてみた。
今回は代官山蔦屋書店について。2回続けて大規模系のお店にしたいと思う。そこでリトルプレスの品揃えも含めて、ジュンク堂との比較もしてみる。
まず、立地ですが駅から10分以内。代官山の便利な場所かと思う。このツタヤはいわゆる「オシャレツタヤ」(僕定義)。通常の「TUTAYA」のようにわりと普通の書店にDVD,CDレンタルがある、という形態とは異なる。代官山蔦屋書店は代官山T-SITEとも呼ばれ、アート系の専門書等も充実。CDやDVDだけではなく、カフェやほか専門店も併設され「本、映画、音楽を通してライフスタイルを提案すること」というコンセプトショップ(僕の定義:いろんなものがオシャレにあるお店+カフェあり)である。
本の割合が多いものの、その他アート、カルチャー的なアイテムも充実していて「なにか、おもしろいものを見に来てみよう」という知的好奇心を満足させる空間になっている。店舗自体のスタイリッシュな雰囲気、レイアウトもそんな気分を盛り上げると思う。
C.)唯一の欠点?というか違いのニーズ。
本書店の欠点をいえば「純粋な本好き」には、この空間のこだわりは余計だと感じる人もいるかもしれない。加えて書店ではあるけど本以外のものも取り扱う結果、書籍の絶対量が少ないと思う。ただ、それに不満を感じる人は、前回紹介した、ジュンク堂書店のような大型書店に足をは運べばいいと思う。その点はユーザーの好み(気分)の問題であり、目的の問題だと思う。優劣はつけられない。
ジュンク堂書店は時代の流れも意識しつつも、基本はわかりやすい「大型書店」というつくりにこだわっていると思う。つまり、まず優先順位は多様なニーズに答えるために、圧倒的な品揃え。それを効率よく、探しやすい無駄のないレイアウト。あるのは図書館のような雰囲気で、それを愛する本好きは多いと思う。その中のリトルプレスは、こういった書店ファンに向けた読み物中心の本が揃えられていた。対して、代官山蔦屋書店は、本を中心にしつつ、ライフスタイル全体を提案するお店になっています。生活を楽しくするヒントがたくさんある空間。そして、お茶も楽しめる。そんなお店では、リトルプレスの取り扱いもジュンク堂書店とは異なっていた。
D.)代官山蔦屋書店のリトルプレスについて
さて、今回の代官山蔦屋書店でのリトルプレスは、アート系だったり、デザインにこだわったものが多い。リトルプレスの専門コーナーはなく、海外ファッション、アート雑誌、国内アート書籍のコーナーあたりに並べてある感じである。この点は大変興味深い。「読み物」系のリトルプレスが充実していたジュンク堂に対して、蔦屋書店では「アート、デザイン系」が目立った。これは、ジュンク堂は正統派の本屋さんとして、活字が中心の内容的に「書籍」に近いリトルプレスを中心に取り扱っていたに対して、代官山蔦屋書店では、活字よりビジュアルを重視した品揃えだと感じた。同じ大型書店でも、お店に並べるリトルプレスに違いがあるのは大変興味深い。これは、2つの書店のコンセプトの違いが、取り扱うリトルプレスの違いにも反映されている。
E.)エンディング
本屋さんに求められる多様なニーズ。そんな時代の流れの中で「リトルプレス」も、有力な「商品」として、大型書店でも注目されている。これはリトルプレスによって、大きなチャンスだといえるが、同時にビジネスという点では試練だともいえるだろう。
Text by
アート・メディアライター 石 川 伸 一 (NUMERO DEUX)
代官山蔦屋書店
所在地:渋谷区猿楽町17-5
1F:朝7時~深夜2時、2F:朝9時~深夜2時
東急東横線「代官山駅」より徒歩5分