NUMERO DEUX NEWS 1674-1 札幌のアートなニュース。
僧侶のメディア性
そして、アートとの共有。
僕がお坊さんに会う。いつもはお盆くらい。その時間、お経を含めて30分くらい。でも、不思議にそのことをよく憶えている。ひさびさの正座。僕にはお経は一種のサウンド。それが終わった後の僧侶の言葉、シンプルな話の中に自分の心に残る。そう、話はある意味聞いた事のあるような内容。だが、凄く心に伝わる。それは僕は僧侶のメディア性だと思うのだ。ネットどころかラジオ、TV、商業印刷物も無い時代から、僧侶は人であり「メディア」であったと僕は思う。
風間天心( かざま てんしん)は、1979年、北海道東川町生。美術家、僧侶。2006年に第9回岡本太郎現代芸術賞に入選。2011年武蔵野美術大学パリ賞によりパリ市「Cité Internationale des Arts」に滞在。個展の開催および国内外でさまざまなアート企画にも参加している。宗教と芸術を分け隔てることなく、その目的を共有できるものと考え、表現をおこなっている。
本展示では、僕たちの生活馴染み深い、のし袋やのし紙に使われる「水引」を素材にした作品。馴染み深いと僕は書いたけど正直、その僕の知識はあまりに浅い。本作の説明で中国から伝わり、仏教でも神道でも使われるのは初めて知った。そう知って見ると、異国性と日本性がマッチングしている。それは実に現代的な表情があるのがわかる。そして、それをアート作品として引き出しているのが、風間天心の作家性。そして、編集者的構成力だと思うのだ。これは、僕に心に残る。
僧侶が芸術家。僕はそれが自然なことに感じる。それはきっと、あらかじめ予定された、そう思えるのだ。意外性より、しっくりくる感じ。話を最初に戻すと、僧侶はメディアである。そして、アーティストでもあった。札幌駅の中でそれがわかった。
Text by
アート・メディアライター 石 川 伸 一 (NUMERO DEUX)
「風間天心『Ebb-Ripple-2300』」
期間:2016年9月1日(木)~2016年11月30日(水)
場所:JRタワー1階 東コンコース
http://www.tengshing-k.com/