平成28年度室蘭工業大学市民懇談会
僕が考えた事。3回にわたって書いていきます。
(1)室蘭工大という「場所」について考えたこと。
室蘭工業大学市民懇談会とは、大学と地域がともに発展するため、広く地域の方々と意見を交換することを目的した会議。室蘭・登別・伊達の3市の市長、商工会議所、教育関係者、メディア関係者と同大学の委員で構成されている。
今回、僕は本委員として選任され出席している。大学内の会議室で開催。今回から3回の連載記事で、会議の様子や、その中で僕が考えたことを書いていきたい。いきますね。
「地方大学における学生教育」
第一回である今回のテーマは「地方大学における学生教育」。会議の構成は、本テーマに沿ったカリキュラム「地域社会概論」と、学生の自主企画として開催された「室蘭本まつり」を紹介。この2つの取組みをベースに意見交換がおこなわれた。話の中では室蘭工大の学生の雰囲気や就職等に関連した内容にもふれていった。順番に書いていこう。
最初に大学カリキュラムとして「地域社会概論」。その内容は室蘭(胆振)という場所を知ってもらう。そのために講義に加えて、学生300人を室蘭のまちを任意のテーマ(例:イタンキ浜「鳴り砂」について調査(取材)。その結果を壁新聞のような形式のポスターに仕上げ、誰もが見られる形で学内で公開した。ワークショップ(体験型講義)の形をみることができる。
本講義の狙いは、学生に室蘭というまちについて、知ってもらう、興味を持ってもらうこと。室蘭工大の新入生は9割近くが室蘭という土地に初めて来た学生。そして、彼らは卒業後もほとんど室蘭(胆振方面)以外に就職していく、という事実。
それはなぜか?
僕が思ったのは、まず地理的なこともあるのかな、ということ。室蘭工大は、市内の繁華街や観光・文化施設とはかなり離れた場所にある。学生の大部分は大学周辺に住んでいる。大学には学生用の駐車場もあり、車を持っている学生もいる。しかし、停まっている車の台数眺めていると、持っていない学生のほうが多いと思った。
そして、大学には夜9時までやっている立派な食堂がある。加えて、自炊には十分な生鮮食料品等も充実している大学生協もある。大学から歩いていける範囲には室蘭焼き鳥の「一平」もあり、飲食店もそれなりにある。すると、車もない、そして経済的にも社会人ほどお金もない、学生は講義のある平日はほとんど学校とその周辺で終わるではないか。では、お休みの日には?と考えると都会的な刺激を求めて札幌に行く学生も多いのではないか。JRだと90分でいける、室蘭工大を経由する札幌行きの高速バスもある。
大学自体と地域とも関係性について、大学側から説明もあった。それはこうだ、大学は自体が地元の企業との積極的な関係性を作ってきたとはいえず、インターンを含めてこれから地元企業との関係性を作っていきたい、ということだった。正直、これは少しびっくりした。工業のまちにある60年以上の歴史ある北海道の代表的な国立工業大学。当然地元企業との密接な関係性があり、共同研究、就職先というのがかなり確立しているイメージがあったのだ。
ここまででわかるのは、学生も大学自体も、大学のある土地(地域)に対して、関係性がそれほど作られてはいない、という僕の印象である。それは意外ではあったが、逆に考えれば、まだ未開のフロンティアであり、まだまだ可能性があるということである。これは素晴らしいことだと思うのだ。
ここまで書いてふと思ったのは、
自分が住む地域に対する「関係性」「思い入れ」(愛着)というのは自然発生するものではない。自分や他者による行動や体験から得られるものである、ということです。つまり、どんなに時間(歴史)経過しても、行動に基づく地元の人間との関係性がなければ、なんら愛着も思い入れも生まれない、ということです。もちろん、物理的な風景や自然に思い入れが生まれることもあるでしょう。でも、それはやはり人との交流を「前提」にしたものではないのでしょうか。
Text by
アート・メディアライター 石 川 伸 一 (NUMERO DEUX)
平成28年度室蘭工業大学市民懇談会
会期 : 2017年1月30日(月)
会場:室蘭工業大学