まだ8月。少し恐ろしい話をします。北海道はもう秋なの?と感じる天気の時がある。夏はどこにいったの?ああ、恐ろしい。これは北海道の「遅れた夏の怪談」だと思いたい…天気について、ぼやいてみました。おわかりのとおり北海道の夏は短い。後に来るのが深い深い「冬」なのです。
僕にとって北海道の冬は生まれた時からあるもの。そして、現在もあるもの。ありふれている、といえる。でも、北海道や冬をテーマにした表現にはとても興味がある。なぜなら、僕はもっと冬のことを知りたい。なぜなら、僕はいまだに冬については、わからない。好きなのか、嫌いなのか。多分、雪国生まれの人はそんな感情のゆらぎがあると思う。
今の自分は北海道の冬を文化、芸術的に捉えることは少しはできる。ただ、もっともっとそれを深めたいと思っている、そういった時に、北海道や冬をテーマにした表現に出会うと、それによって自分の「まわり」をもっと見やすく、生活しやすくしてくれる、楽しくしてくれる「深み」が出てくると思う。素晴らしい「表現」があった。最近、それを感じたのが、アートディレクター前田景による本展示です。
テーマは北海道を美瑛を中心として、冬、雪のある光景の捉えている。ひとつひとつの写真に強度の高い凛とした美しさがあって、そこにとても僕は共感できる。思い出すのは冬の朝。カーテンを開けて窓から見えるのは、地上をひとしくおおう雪。その静けさ、美しき自然の調和。その感覚が 前田景の写真にはあると僕は感じた。
もっとも美しい部分を絶妙なタイミングで捉えられている美しさ。先に書いた、僕が冬の早朝。夜に降った雪という状況。窓から見える光景から感じる、もっとも好きな美しさをトリミングされた世界が「White Room」にある。そう、僕の冬に対する「好き」はここにある。
Text by アート・メディアライタ 石 川 伸 一 (NUMERO DEUX)
「前田景 写真展『White Room』」
会期:2017年4月15日(土)~7月5日(水)
会場:toita(北海道虻田郡洞爺湖町洞爺町85-2)