僕に「ゆらぐ感情」を生み出す、
日常と非日常の間を行き来するポップ・ミュージック。
北海道に住んでいる。
真冬の朝。思い切って窓を開けてみる。冷たい空気、白くなる息。
目に写るのは雪でフラットになっている景色。単純な気持ち良さ、
というより「感情のゆらぎ」に魅力を感じることがある。それは何だろう…
hugvillaは札幌在住のMiku Fukazawaによる女性ソロ・ユニット。その名はアイスランド語で「妄想」という意味である。電子楽器や、トイピアノ、ピアニカ などで音楽を作り出す。2014年にシングル『Ást』 をリリース。それからは国内及びアイスランドや台北でライブをおこなっている。そして今回、1stアルバム『hug』をCDでリリースした。店舗及びネット通販で入手することができる。
その音楽は、エレクトロニカ(電子音楽)と紹介することができる。ただ、それだけ書いても伝わらないだろう。このジャンルの音は意外と幅広いもので、ダンスミュージックに近いものもあるし、非常に尖ったノイジーなものもある。
本作はそのどちらでもなく、ゆったりとしてサウンドの中にはアナログな手触りが感じられる。アルバムを聴き進むにつれて、最初のイメージよりはずっと深度の深い音作りだとわかってくる。hugvilla の未知なる妄想の世界の奥に進んでいく感覚。ただ、それが暗めの印象にはならず、強い優しさを感じる音になっているのは、音作りのうまさと、キャラクターだと思う。「感情のゆらぎ」を感じさせる音がここにある。冬の今、部屋でも外でも楽しめる音だろう。
加えて本作のメディア形態の魅力も書いておくべきだろう。ダウンロード販売や、CDでも簡素なパッケージが当たり前の今。本作は紙製のオリジナル・ジャケットに、特典のブックレットと、いうとても凝った仕様になっている。これらのアートワークも本作の魅力だろう。僕は今後も本作のようなCDで凝ったアートワークで包み込んだ音楽作品は、アーティストのこだわりの中でこれからも作られ、受け入れられていくと思う。それが芸術なのだ。
Text by メディアリサーチャー石 川 伸 一 (NUMERO DEUX)
hugvilla 1st album 「hug」
CD 1,620円(税込)
https://hugvilla.jimdo.com/