REVIEW

すべてはラストの表情ために。

2008.11.01

Ys
洋画★シネフィル・イマジカ
「善き人のためのソナタ」(2006)

 ドイツ映画。お話は冷戦時代の東ドイツを舞台に、国家に反抗的な人間を取り締まるの実在した秘密警察、国家保安省(シュタージ)に属する主人公を描く。

 彼はプロフェッショナルなエージェント。尋問・盗聴等の仕事を行なう。ある時、上司の命令で劇作家と、その恋人である女優の盗聴任務を続けるうちに自分の仕事に疑問を感じていく…

 秘密警察のエージェントといっても、主人公は007のようなカッコいい男ではなくて、その風貌は冴えない独身の男である。年齢も初老に近い感じだろうか。しかし、優秀な工作員なのである。なのに、出世はあまりしていない様子なのは仕事に対して真面目すぎるからのようだ。

 誰よりも国家に忠誠を誓い、私利私欲ではなく国家のために、市民を拘束し、眠らせないで尋問し、自白させる。自分の仕事をプロフェッショナルになしとげる男の心境の変化・行動が本作の見せ場となっている。

 主人公は寡黙である。しかし、その目はいつも周囲の状況を注意深く観察している。だから、優秀な工作員なのである。しかし、その目が仕事から離れ自分の身の回りを大きく見回したときに、心境の変化が起きていく。そして、時代も冷戦時代から新たな時代に移行しようとしていた。

 主人公の仕事は特殊ではあるが、仕事に真面目で、孤独な生活をしている男、という部分は十分親近感を持てる。知らずに盗聴されている、2人の恋人同士の関係も関係も、見ごたえがあるし、そこから影響を受ける主人公も見逃せない。特殊な仕事と、孤独な男の感情がうまくミックスされたおもしろい作品となっている。ラストの主人公の表情を観た時、俳優というのは凄い職業だなと思った。その表情だけでこの映画は観る価値がある。


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