――――――――――――――――
「猫の狙うもの」
――――――――――――――――
猫は狙っていた▼大きなものではなくて、小さいものを▼小さいほうにしたのは理由がある▼ちいさいほうが自分のモノになりやすい、と考えたからだ▼小さなものが視界に入った▼自分の猫目にその画像が写りこむのを感じた▼飛びかかろうと助走をつけたい▼そのために後ろに少し少し下がる▼その瞬間、小さなものが、視界から斜め上に消えて行く▼猫はハッとしたが、飛びかかるタイミングを逃した▼ちいさなものは消えていた▼猫は静かに目を閉じて、一瞬自分の目に写り込んだ小さなものを、心にしまい込んだ。
石川伸一(NUMERO DEUX)
——————