REVIEW

最後の人

2009.08.11

Sh洋画★シネフィルイマジカ 
「最後の人」(1924)

  ドイツのサイレント映画の巨匠、ムルナウの作品。お話は高級ホテルの名誉あるドアマンから、屈辱的なトイレ係に降格されてしまった主人公の悲哀。

 セリフが聞こえないサイレント映画。こういった映画の場合、場面にセリフや状況を文字で出すのが当時一般的であったようだけど、本作では意図的に排除されている。したがって、観る方は場面だけですべてを理解する必要がある。
 それは結構、新鮮な体験。今の映画ではセリフを聴きながら、または字幕を読んでいる瞬間というのは「場面」を楽しむとは別の感覚を使う。それは頭の中で自然に行われる訳だが、そこになんらかの「場面」との断絶があるような気がする。それは別にダメということではなくて、音もあっての映画ということなのだけど。

 しかし、本作ではその断絶はない。最後まで、我々は「場面」だけを観てすべてを理解しなければならない。そこが古い映画の中の新しい体験であって、気持ち良かった。映画のテーマはとっても悲しい話なのだけど。その悲しさが「場面」だけで語られる力強さに注目していきたい。そして、テーマは現代に生きる僕達にも十分リアリティのある話なのである。


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