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NEWS No.15030 笠見康大 個展 「恣意的な、とてもプライベートな」

2015.12.18

笠見康大
NUMERO DEUX NEWS 15030
札幌のアートなニュース。

身体と思考について
本展示を観て考えたこと。

僕はメディア論とか、デザイン思考というのは、好きなんだけど、それは「論」とか「思考」というのがついている以上、基本、理屈の世界だと考えている。そのため目的とか手段とか効果という話になる。ところが、デザインもメディアも人間を相手にしている以上、すべてを理屈化するのは難しい。僕はメディア論における、完全に理屈化できない、ふわふわした部分を時代の流れと一緒に考ていくのが一番大事かな、と思っている。

僕は直感派ではないと思う。では、理屈を考えるのは得意かというと、そうでもない。いや、嫌いではないのだけど、凄く根本的な部分で理屈を全面的に信頼はしていないと思う。僕はメディアを作っていて、メディアについて考えるのが好きだし、それについて考える。メディアというものは、とても流動的でつかみにくいものである。繰り返しになるけど、結局、メディアの主体は人間であり、いくらその間に高度なデジタル機器が関与しようと、すべて理屈で考えるのは不可能だし、あまり意味がないことだと思う。大事なのは、理屈で固めつつ直感を信じる、ということだと思う。ただ、どうしても時を重ねるにつれて、理屈のほうに考えが偏ってしまうんだよね。なぜなら、そのほうが楽だから。でも、いかに直感を信じるか、という場面がある。

アートも自由であるけど、理屈でも作られている。それをどう捉えるかはアーティストにとって重要なテーマではないだろうか。

笠見康大(1982年福島県いわき市生まれ)は、札幌を拠点に活動し、昨年はVOCA展に入選、トーキョーワンダーウォール2012でトーキョーワンダーウォール賞を受賞するなど全国に活動の幅をひろげつつ、絵画というメディアに真摯に向き合い制作を続けています。(展示会場ウェブより)

今回、展示を観ると、とても自然な流れなようなものを感じて、それは気持ち良く僕の心に流れ込んでいった。いい色、そして馴染む形。わりと最近はアートという表現が、ロジカルだったり、具体的な社会的テーマを表現するものも多い。それはもちろん悪くないし、意味のあることだと思う。ただ、同時にアーティスト個人の内面にむかう表現も、もっとあってもいいと思うのだ。ここで注目すべきは、笠見康大の今回の作品の持つ「恣意的な、とてもプライベートな」と題された展示における、完成度だと思う。内面(=プライベート)の表現は、原始的だといえるが同時にとても難しいと思う。内面(=感情や無意識)の表現が、観る側にすんなりと受け入れられる完成度まで、もっていくのは大変な作業だと思うし、そこには最終的には才能がないと難しいと思う。それを今回の展示では、観る側として気持ちのよいくらいに飛び越えた軽快さと才能を感じる展示であった。

会場であるCAI02は、地下鉄大通駅から西方向に直結しているビルの地下にある現代美術ギャラリーである。カフェも併設されていて、独立した展示室が2つある。23時までオープンしているのは市内のギャラリーでは長く、平日でもいきやすい場所である。

最後に自分自身のプライベートを付け加えると、本展示を観て、どこか自分がホッとすると同時に、新たな思考へむかうエネルギーにもなったと思う。

Text by メディア・プランナー 石 川 伸 一 (NUMERO DEUX)

 

笠見康大 個展 「恣意的な、とてもプライベートな」
会期:  2015年12月5日(土)~2016年1月13日(水)13:00~23:00
休館:日曜・祝日・ 12/27-1/4
会場:  CAI02 (中央区大通西5 昭和ビルB2)

 

 

 

 

 

 


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