家庭用の共通ヴィデオ規格「VHS」の開発描いた事業所物語…と書いても、知らない人が多いでしょうね。でも、実在の会社名が登場して説明的に描かれる。だから知らなくても映画を楽しむの問題はないです。「VHS」と「ベータマックス」懐かしいですね。
主人公は西田敏行。叩き上げで定年間近。社員を大事する性格…社員を救うために本社に黙ってVHSの開発を着手する…というあたりは安心して観ることができる。想定どおりのキャラクター。
僕が想定外で、いいなと思ったのは渡辺謙。西田の部下の管理職。本社の顔色を伺い、西田の行動にハラハラする小心者です。西田の考えには当初反対ではあるが、反対もしきれない。狡猾に立ちまわることもできない。しかし、だんだん西田に考えに惹かれていく。
僕には終始本作の見どころは渡辺謙。表情もいいけど全身の演技が素晴らしい。オーバーアクション気味ではあるけど、わざとらしくないし、とってもうまい。全身の演技って、カメラが自分をど捉えているかわからないとできないから、難しいと思うのです。
ラスト近くの西田とのドライブシーンは本当良かった。本作タイトルって「沈まぬ太陽」となんとなく似てませんか?
Text by
アート・メディアライター 石 川 伸 一 (NUMERO DEUX)