名画を勘ぐる。
死と楽園
近道をしたかった。夜のビルの間を歩いていると暗闇から「ラクにしてやるよ」なんていわれたら。怖い。気持ちが飛んでいく。
楽園とは何だろう。「楽」とつくのだから、ラクなとこだろう。
本作をはじめて見たときは、名作絵画なんだろうなぁ、と思った。プッサンって、アカデミックだなぁ、新古典主義ダビッドみたいな?という気分となった。何度も見ると、どうも違う。記念碑のような写真感がない。絵としての完成度のほかにどこか魅力がある。
ただし「これは宣伝です」とクレジットが入る感じではない。なんとも不思議に飽きないし、宗教的でもない。ポイントなんとも気持ちの良さも感じさせる人物の構成力だろう。
そして、それぞれのキャラクター。ポーズを決めたり、困った顔をしたり。冷静だったり。なんとも人生の喜怒哀楽ともいえる。背景の無国籍感は逆にヌケが良く気持ちいい。清々しい。
古典指向もありつつバロック的鋭さもある。というのはお値打ちな作品である。本作は楽園(アルカディア)にも死があることに困惑する牧人たち、すなわち「人は死ぬ」ということを表現している解釈らしい。
僕はまだビルの間を歩いていく。楽になったかどうかはわからない。ただ、前にある光を目指して
歩くだけ。最初にもどる。
作品データー
「アルカディアの牧人たち」(1639年)
ニコラ・プッサン
ルーブル美術館(フランス)
Text by メディア・プランナー 石 川 伸 一 (NUMERO DEUX) Facebook / Twitter