DVD REVIEW
「ザ・フライ」
デヴィッド・クローネンバーグは好きな監督です。今年見た新作「イースタンプロミス」もいい出来でした。前作「ヒストリー・オブ・バイオレンス」から、新しいスタイルを開拓したようで、もう結構歳なのにバリバリ現役感覚なのがファンにとっても嬉しい。新しいスタイルといっても、根本的なところは変らず、古くからのファンをニヤリとさせるシーンがあるのはさすが。
さて、1986年の本作は、多分、一般的には一番知られている作品でしょうね。古典的ホラー「ハエ男の恐怖」のリメイク。といっても、かなり内容は変えているので別物という感じになってます。
ヒットした作品ですし、ストーリーもわかりやすいので、サラリと観ても楽しめるものなっています。メジャー映画ですが、クローネンバーグ特有のジメッとして画像の感じが良い雰囲気を出しています。普通のハリウッド映画とは違う感じですね。
この監督、オープニング・ロールも毎回凝っているし、撮り方とか結構オシャレだと思うのですが、それらが凄く控えめなのがポイント。演出も抑制が効いていて、そこが逆にコワイ。でも、グロテスクなシーンは凝ってます。グロといえば、まだCG全盛以前の作品なんで、出てくるものは手作りものですが、それはそれでいい味出してます。捨て難い。
ひとつのラブ・ストーリーとしても、興味深い。恋に落ちるあたりが、やや唐突だと思いますが、その後はデートのシーンとか、やりとりは自然な感じでいいし、そこに恐るべき実験の結果という強烈な事件が2人を包み込んでいくのは、身にしみるコワさがあります。
ヒロインを助けるのが、ひねくれ者の元カレという設定もいい。ヒロインの新しい彼氏が起した騒動を、元カレも登場してヒロインを助けるドラマ、という話ともいえる。ラストあたりのクライマックスはエンターティメントをはずさないスピード感があってマル。ラストはベタですがマジ泣けました。