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NEWS No.17019「ちいさいメディア〜平成28年度室蘭工業大学市民懇談会 (3)」

2017.03.20

室蘭工大a

平成28年度室蘭工業大学市民懇談会 (3)
本委員となった僕が会議に出席して自分の考えたことを書いてみます。
本記事は全3回の3つめの記事になります。
前の記事はこちらです。 

ちいさな実験、ちいさなメディア

さて、本市民懇談会「地方大学における学生教育」というテーマで、本記事でも2回にわけて、本懇談会の中で講演のあった大学や学生の取り組みについて書いていった。今回の3回目では、僕自身のアイディアとして、大学より求められたことを書いてみようと思う。

僕は事前提出を求められた意見書の中で「地方大学における学生教育」のために「小さな実験、小さなメディアを考える」ということを書いた。それはもっと具体的に書くと、以下な感じになる。僕は地域と大学はもっと結びつくべきだと考えている。そのつながりは、学生教育にも役立つことは、今回の懇談会で講演のあった大学や学生の取り組みでも明らかだ。それに、室蘭という工業都市にある会社と室蘭工大は研究や就職先として「つながり」を持てるといい。

でも「つながり」はいきなりは作れない。そのために、僕はいくつかの小さな実験(取り組み)をしてみては、と思う。それはメディアづくりがいい。なぜなら、メディアには「つながり」をつくる機能があるからだ。そのメディアは小さく、試みるのがいい。どうして?それは「大きな実験」は、大きなエネルギーをつかう。それで疲弊する。そして、大きな実験が実施できるのは、その大きな実験が「どこかでの成功例」ということが多い。しかし「どこかの成功例」が「ここ(室蘭)での成功」になるとは限らない。たとえ、まぐれで成功しても基礎的な部分でわからないままの借り物の成功は、継続性は期待できないし、結局地元で「浮いた」ものになってしまうのではないか。または疲弊し続けるか。

だから「小さいメディア」の実験をおこなうのだ。では、どんなメディアがいいか? そこも慌ててはいけない。今は大変メディアづくりが簡単になっている時代。インターネットの無料のブログやSNSを利用すればコストも安い。動画配信だって可能だ。また、まだまだ根強い効果のある紙メディアも、一昔前に比べれば安く作れる時代になっている。でも、メディアづくりはこうした媒体の種類を考える前にメディアを通して「何をやるべきか?」ということを考える必要がある。つまり、メディアを通してどういうことを実現したいのか。

「どんなメディアをつくるべきか?」そこをきめ細かく、地方の実情に合わせて議論を重ねていくことが大切だと思う。もちろん、議論だけではいけない。実践なき議論は虚しいだけである。しかし、議論なき実践も、かなり虚しいし、疲弊でもある。そう書きつつも、実は僕はどちらといえば実践をすぐやりたいタイプである。その理由としては、議論だけではわからない部分が必ずあるからである。

メディアは生き物なのである。つくった人間の思い通りになるものではないのだ。良い意味で、意図しないものとして変化する場合がある。その場合は、その良い部分を伸ばすように変えていけばいい。この柔軟性が大事。だから、メディアづくりはガチガチに決めてやってもいけない。ただ、議論は大切なのだ。

だから、議論をして方向性が決まれば小さなコストでやってみる。大きな予算を引っ張ってくることはないのだ。大きな予算は魅力的だが、企画の柔軟性を奪ってしまう可能性がある。それなら、おこづかい程度の手弁当でちいさく実践するほうがいい。そして、今ちいさなコストでメディアが作れるのだ。

だから、同時平行でいくつかの「ちいさな実験」をおこなえばいい。その中で、良いものを残して育てていけばいいのだ。こうしたやり方は大きな予算のプロジェクトでは難しいことだ。大きな企画は、どこかで落としどころを作らないといけない。しかし、そうして無難にまとめることが、あまり意味のないこともある。それなら、小さく流動的に進めるのがいい。ただ、こうした落としどころが見えにくい実験を続けるのは実に根気と精神力を使う。

でも、逆にいえば根気と精神力があれば、今は低コストでメディアを作っていくことができるのだ。そして、メディアは「ブランド」になり得る。効果的なメディアには人をつなげる力が発生する。ひとがつながれば、なにかが生まれるのである。どんなメディアがあればいいだろう? その発想の仕方は実はシンプルだ。「室蘭で室蘭工大は何を実現したいのか」?そんな逆算から、メディアを考えていけばいいと思う。  そして、小さく試行錯誤でやっていくのだ。議論を重ねて。

ishikawa

Text by
アート・メディアライター  石 川 伸 一 (NUMERO DEUX)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



NEWS

NEWS No.17018「北海道情報大学 メディアデザイン展2016」

2017.03.14

情報大学

 

増え続ける「メディア」とは何なのか?
僕たちは常に考えなければならない。

僕は紙メディアやウェブメディアの制作をしながら、わりと自然な形で「メディア・デザイン」の一部を理解していったと思っている。インターネットの出現、特にimode(懐かしい!)から現在のスマートフォンに至る「インターネットの使える携帯電話」は、僕たちの生活を一般させてしまった。「新規契約なら機種料金タダ!」なんて場合もあり、自然な形で、無理なく広まったいった。そのため劇的変化を感じにくい。でも、ふと考えてほしい。今、携帯電話(スマートフォン)の無い生活が考えられるだろううか?自分はスマホ利用しているのだろうか?、それともスマホに利用されているのだろうか? インターネット、携帯電話は僕たちのまわりにある「メディア」をもの凄いスピードで変えて、増えていったのは事実だと思う。そして、それがは今でも進行中だ。

『メディアデザイン展(通称MD展)』とは、北海道情報大学 情報メディア学部 情報メディア学科を中心とした、卒業制作等の学生優秀作品を発表する展示会。平成20年よりスタート。今年で8年目を迎える。この展示の運営は、作品管理から広報、会場スタッフもすべて学生がおこなっている。

写真はその中の出品作品のひとつ、スマートフォン用の片手入力をしやすくする、ソフトウェアを入れたスマホが展示されていた。たしかに、思うのはいわゆるスマホ以前の携帯電話は「片手だけで、すべての操作ができる」という利点があった(電話を持つ手で、操作もおこなうこと)。
しかし、それはスマートフォンの出現でやりにくくなっている。本作品は、そこを考え直す作品。ある意味地味ではあるが、僕はとても大事だと思う。なぜなら「今」が「最良」だとは限らないということだ。先にも書いたがメディアの発達のスピードは速い。そして、僕たちはすぐ忘れてしまう。しかし、過去のメディアを思い出して、現在を考えるのも大事なのだ。本作品はその好例だと感じた。

こうした学生展示の良いところは、プロやビジネスよりの展示とは違う、学生の作品やコンセプトを通して、現在のメディアについて感じてることがわかることだと思う。学生は間違いなく現在のマルチメディアの主要ユーザーであり、そして本展示では同時にメディアを学んでいる学生。そんな2つの視点つくられたもの。そこには、現在のメディアを捉える、または先のメディアを考える機会となっている。その意味で定期的におこなわれる「メディアデザイン展」は貴重な展示だと思うのだ。

「北海道情報大学 メディアデザイン展2016」
会期:2017年 2月 21日(火) ~ 2月 26日(日)
会場:大丸藤井セントラル7Fスカイホール(南1西3)

 

 

 

 

 

 

Text by

アート・メディアライター  石 川 伸 一 (NUMERO DEUX)

「500m美術館vol.21 第5回500m美術館賞 風間天心/わにぶちみき」
会期:2017年1月28日(土)~3月29日(水)
会場:札幌大通地下ギャラリー 500m美術館(札幌市営地下鉄大通駅内)

 

 

NEWS

NEWS No.17017「scherzo featuring 加賀城匡貴『お~、あ~、へ~』展」

2017.03.12

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コンパクトな「スケルツォ」の
その魅力を濃厚に書いていきたい。

札幌在住のアーティスト加賀城匡貴の初の個展が開催。そのことは先日の記事で紹介した。この展示の関連企画として、彼のステージパフォーマンスのプロジェクトであるスケルツォが個展開場にて開催。普段は100人規模の会場でおこなうことが多いスケルツォ。コンパクトな会場ながら加賀城匡貴というアーティストの本質が濃縮されたステージになった。以下、僕も濃縮してその魅力を書いていきたいと思う。

スケルツォは加賀城匡貴が日常にあるものを素材とする。それを映像やライブパフォーマンスによって、彼独自の「見方」や「新しい提案」を発表していくステージとなっている。そこには、ユーモアや、かすかなメランコリーがあり、それが魅力となっている。

ナレーションは加賀城匡貴と他のメンバーも担当する(今回は森脇俊文 )。それに弟でありDJ、サウンドクリエイターである加賀城史典がサウンドトラックを担当。さらにライブ・ミュージシャンも登場する(今回はサックスプレイヤー小野健悟)。参加するメンバー内容や会場規模によって人数は変わる。またユニークなのは別の表現者を加えておこなう場合もある。今回は日之出家金助の落語。過去では映画館にて佐藤雅彦の短編映画作品「キノ」上映と2部構成でおこなったり、イギリスのバンドベイカー・ブラザーズと共演というスタイルもあった。

スケルツォとは何なのだろう?現代アートというには説明しきれないし、ステージ・パフォーマンスというだけでは説明が足りない。ではなんだろう?と考えた時、僕が最近になって思うのは加賀城匡貴の頭の中の「アイディア」をシンプルに観客に投げかける 楽しい「授業」ではないだろうか。それに、他のメンバーやサウンド、時には他の表現とコラボレーションしていく。そして、お客さんは、それに対して「わかったり」「少しわかったり」「わからなかったり」するのではないだろうか。実はこのあたりは凄くメディア・アートに通じるワークショップ的なイベントなのかもしれない。スケルツォの定義はこれからも進行形で考えていきたい。なぜなら、スケルツォ自体も僕の受け止め方も変わっていくかと思うから。

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さて、今回のスケルツォの感想を書いてみると、コンパクトな構成ながら、RAKUGO(落語)という新要素の組み合わせは予想以上に良かった。落語自体もおもしろかったし、同時にその演目はスケルツォの世界観を理解する手助けにもなっている。そして、加賀城史典のサウンドトラックも、今回のスケールに合ったコンパクトな良さがあった。そして、ステージ最後のほうで、まるでジャズのインプロビゼーションのように小野健悟のサックスと、加賀城匡貴の映像が繰り出されるあたりはかなりカッコよかった。

ステージの後、10分間の休憩を挟んで、 加賀城匡貴と僕とのアーティストトークがおこなわれた。

ishikawa
Text by
アート・メディアライター  石 川 伸 一 (NUMERO DEUX)

scherzo featuring 加賀城匡貴「お~、あ~、へ~」展
日時:2月26日(日)17:00~19:00 ※開場は30分前
出演:加賀城匡貴(na)、森脇俊文(na)、日之出家金助(rakugo)、加賀城史典(pc, key)、小野健悟(sax)
料金:2,500円
定員:30名(先着申込制)
アーティストトーク
ゲスト:石川伸一(メディアプランナー)、司会:森脇俊文
http://scherzosketch.com/

 

 

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