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NEWS No.17016「開廊5周年記念「超日本」展」

2017.03.07

超日本

僕は日本の伝統文化・芸術には弱い。でも、今興味を急速に持ちつつある。自分のアートの興味の入口はアメリカやヨーロッパの作品だった。考えてみると、これは不思議な話で、自分は日本に住む日本人なのだから国内アートのほうがはるかに身近なはず。でも、外国作品だった。記憶はあやふやだけど中高の美術でも西洋美術史ばかり記憶に残っている。僕は日本の美術史を知らない。若いころは日本のクラシックなアートには興味がなかったのだ。今は違う。

日本の伝統文化・芸術をモチーフにした日本の現代美術作品も意外に少ないと感じる。それはきっと、アーティスト自身も外国のアート(または、国内の比較的新しい芸術や文化)からの影響が大きかったからではないか。そんな状況も近年変わってきたと思う。現代美術のアーティストが日本の伝統芸術に接近するのは、想像以上に魅力的なことなのだ。それを証明するような展示が本企画である。

札幌のクラークギャラリー+SHIFTにて開廊5周年記念特別展として「超日本」展を開催。その内奥は5組の日本人作家による、書、掛軸、盆栽、枯山水、漆、屏風絵(日本画)、襖絵、能(音)など日本の伝統的なアートの形を現代に表現した作品となっている。

この展示のおもしろさは、現代美術のおもしろさと、日本の伝統文化・芸術の魅力、という二つの要素を同時に楽しめることだろう。2倍の魅力。そして、現代美術ファンも、日本の伝統文化・芸術ファンにもアピールできそうなところ。この2つのファンがこの展示で出会うのを想像するのも楽しい。多次元な構造を持つ、ありそうでなかった企画である。

日本の伝統的芸術・文化は外国からの注目度はとても高い。日本ブランドの重要な部分である。そして、日本のアーティストが、伝統芸術にリスペクトを持って作品を作ることは未来の「日本の伝統文化」を作ることになる。注目しよう。ここには歴史があり日本の未来がある。超日本。

会期:2017年2月4日(土)〜3月31日(金)
時間:11:00〜19:00(月曜日・第三火曜日休廊)
会場:クラークギャラリー+SHIFT(南3条東2丁目 MUSEUM 2階)
http://www.clarkgallery.co.jp
出品作家:ワビサビ(平面、立体)、葛西由香(日本画)、澁木智宏(立体)、渡邊希(立体、漆)、畑中正人(音)

 

 

 

 

 

 

Text by

アート・メディアライター  石 川 伸 一 (NUMERO DEUX)

「500m美術館vol.21 第5回500m美術館賞 風間天心/わにぶちみき」
会期:2017年1月28日(土)~3月29日(水)
会場:札幌大通地下ギャラリー 500m美術館(札幌市営地下鉄大通駅内)

 

 

NEWS

NEWS No.17015-8「テラダモケイ+ TERADAMOKEIの現在展」

2017.03.04

テラダモケイ+ TERADAMOKEIの現在展

自分を「面」として、考えるのは難しい。1日のほとんどの時間、自分を「点」として考える。そう、自分は点だと思う。それを繰り返す訳だから、自分は点と思い込む。ただ、時々自分は「面」だと感じる時がある。それは自分を俯瞰して見られる時だと思う。そのきっかけとして、僕は「模型」づくりがあると思うのだ。唐突な発想かもしれないが。

僕が小学生から中学生くらいまでは模型、いわゆるプラモデルをよく作っていた。今のマルチメディア・ゲーム機ぐらい一般的な遊びだった。もちろん、当時は自分が点だとか面だとか小難しいことを考えて作っていた訳ではない。ただ、楽しかった。その気持ちを今、ふるかえると模型を作ることは「世界」を作る(触れる)こと。それが、楽しかったと思う。例えば、飛行機という実際に存在する高度なメカニックを、模型という形で自分で作る。そして、それが実際に活躍するところ想像する。そこに大きな内面の充実があったし、社会という「面」に対して自分がつながりがあるうに感じられた。

模型、そこから生まれるミニチュアの世界。なんとも魅力的だ。自分が小人の国に来たガリバーのような気分、または自分がその模型の「世界」を自分がつくりあげたクリエイターのような気分。それは自分が「点」ではなく「面」として世界に接することができる。

テラダモケイの作り出す模型はユニーク。それはさまざな「場面」を模型にして販売している。はじまりは、自分たちの設計事務所でお客さんに説明するために模型(建築物などの)に添えるアクセサリーとして制作していたという。それを展覧会に出品したところ、反響は大きかったため販売。魅力的でユーモアのあるラインナップが充実。もとは建築業界のツールだが、建築関係以外の方が買い求めることが多いという。

わざわざ未完成なものを購入する「模型」という趣味。それには、一人で淡々とおこなう作業というイメージだけど、実は内面を通じて世界とコミニュケーションしている。だから、模型づくりは楽しいのだ。

ishikawa

Text by
アート・メディアライター  石 川 伸 一 (NUMERO DEUX)

「テラダモケイ+ TERADAMOKEIの現在展」
会期:2017年1月26日(木)~3月7日(火)
会場:グランビスタギャラリー サッポロ(札幌グランドホテル1F)

 

 

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NEWS No.17014-7「道都大学美術学部『卒展+2017』」

2017.02.25

道都大学美術学部『卒展+2017』

卒業制作とは、どんな気持で作るのだろうか?

卒論も書かないで、フラットなままで社会に出た自分。今考えると書けば良かったと思う。でも、タイムマシンで今の記憶を失って戻る。そうすると、やっぱり卒論は書かなかったと思う。いや、書けなかったというべきか。その時の僕は、良く言えば吸収ばかりしていた。悪くいえばどこまでも受け身であったのだ。毎日はゆっくり流れていって、本を読んで、レコード店に開店直後に行く。夜は遠かった。来週はもっと遠かった。

道都大学美術学部の卒業制作展を観る。作品を観ながら、僕が考えるのは作品のクオリティというよりも、僕は本テキストの最初に書いた部分。つまり、作品を作った学生の気持はどんな立ち位置なのだろうか?という、まったく余計な詮索である。

卒業する、という点をどう捉えているのか。今回の制作がひとつの人生の区切りと考えるのか、今の日常の延長と考えるのか、僕のようにそこまで深く考えていないのか、そんな心情を想像しながら作品を見ていく。学生の展示はそんな楽しみ方が僕は好きだ。

なぜなら、いろいろな気持ちで作品を作る。それはまさに学生の特権なのだから。そして、どんな気持ちでも、今の段階では正解、不正解はわからないのだから。

ishikawa

Text by
アート・メディアライター  石 川 伸 一 (NUMERO DEUX)

「道都大学美術学部『卒展+2017』」
会期:2017年1月31日(火)~2月5日(日) A室 10:30-06:30
会場:大丸藤井セントラル7Fスカイホール

 

 

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