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NEWS No.17012-5「JR TOWER ARTBOX 朴炫貞『フォトスポット』 」

2017.02.15

228JRART

日常の中、スマートフォンで写真を撮る。なにかの記念のために。なにかの記憶のために。携帯電話にカメラ機能がついた時撮影」をめぐる生活は大きく変わった。僕は「撮影」とは極めて編集的行為だと思っている。なぜなら、写真は「物語」だからだ。物語には編集が必要だ。

カメラつき携帯電話やスマートフォン「以前」は、一般的には撮影とは「準備」されるものであった。つまり、旅行や、なにかの会合や集まりで、事前の撮影係が決められ、その人が当日カメラを持ってくる。または、撮影したい人が意識してカメラを持ってくる、という限定性の高いものだった。自分のことを考えると「その時代」では撮影することは年に数回だったように記憶している。

しかし、今は違う。カメラつきの携帯、スマホ。僕たちはカメラを持ち歩いている。撮影は準備するものではなく、ただ、そのシーンで「撮影するか、しないか」という取捨選択だけの問題になってた。話を最初に戻すと、写真の数だけ編集が必要になる。わたしたちは日々、「編集」に向い合いながら撮影に取り組んでいるのだ。街を歩いている時、飲食を楽しんでいる時、どこかへ行った時…

朴炫貞(パク ・ ヒョンジョン)は造形作家・研究者。武蔵野美術大学大学院博士課程卒業、造形博士。現在は、北海道大学 科学技術コミュニケーション教育研究部門 CoSTEP 特任助教である。

本作品は、『フォトスポット』というタイトルとおり、「写真を撮る」という行為、関係性を探る作品となっている。作品自体は撮影のためにひとつの「背景」となっていて、ここを通る人はこれをバックに撮影して、それをSNSで投稿。専用サイトhttp://www.photospot.work/にアップされる仕組み。僕も作品をバックに記念撮影をしてみた。作品は角度や光の具合で見え方が変わるのでユニークだ。ぜひ、やっみてほしい。こうしたアート作品の前で、素直に楽しんで撮影することができる。

本作品は、わたしたちと記念撮影という行為について、再考させるものだと思う。
写真はもっと自然な気持ちで撮ってもいいかもしれない。

ishikawa

Text by
アート・メディアライター  石 川 伸 一 (NUMERO DEUX)

「JR TOWER ARTBOX  朴炫貞『フォトスポット』 」
会期 : 2016年12月1日(木)~2017年2月18日(火)
会場:JRタワー1階東コンコース(JR札幌駅直結)

NEWS

NEWS No.17011-4「今の大学生の自由の苦しみ〜平成28年度室蘭工業大学市民懇談会 (2)」

2017.02.11

室蘭工大a

平成28年度室蘭工業大学市民懇談会 (2)
本委員となった僕が会議に出席して自分の考えたことを書いてみます。
本記事は全3回の2つめの記事になります。
前の記事はこちらです。 

大学生の75%

学生の地域につながる活動「室蘭ほんまつり」について、同大学の太田 哲平から発表があった。これは学生主体の取り組みとして「室蘭本まつり」という、古本を集めて販売するという企画である。その中では札幌の「北海道ブックフェス2016」との連携をこなったということ。文化的なつながりや、ひろがりのある良い企画である。

活動の説明の前に、本大学の学生についての説明があった。それがなかなか興味深かったので本記事はそれはついて書く。大学が学生に実施しているアンケートで「入学してよかったと思うか」という質問に答えが「良かった」というのは「25%」という答えだった。

つまり「75%」の学生が「良くない」ということ。これは驚いた。良いや悪いは個人的な問題であるが、比率は5割も超えれば、それはもはや個人的だけでは片付けられない。では、これはど解釈するべきか。まず、2つ考えられる。ひとつは、本大学ははじまった時から「良くない」と思われる大学だったのか、ふたつは今「良くない」と思われる大学になったのか。

僕は後者ではないかな、と考える。前者であればそれは大学そのものの欠陥であり、それについて僕はここで書く知識はない。でも、歴史ある国立大学にそれは無いだろう。

大学そのもものは、変わっていない中で、学生の75%が「良くない」と今の時代に感じているということを僕は仮定する。変わったのは時代(社会)なのだ。

ここで、自分の大学生だった「時代」。20年前以上の自分の話をすれば、大学に入った時は嬉しかった。その理由はとりあえず4年は社会人にならなくてすむし、学生という便利な地位を得ることができた。住まいも実家だったので暮らしという部分は高校の延長に近い感覚だったと思う。高校の頃から、バイトを少しやっていたので、実家で暮らしながらバイト代で好きなCDを買ったり、ライブに行ければ楽しいな、という感覚である。

今から、考えると実にお気楽でお恥ずかしい。「学ぶ」という観点が抜けている。その点については、講義は出席率は良かったと思う。でも、その姿勢は高校の時と同じくらい。ゼミも入らず、卒論も書かなかった。それで普通に卒業できた。正直、もっと勉強すれば良かったなと思う。

大学生活は高校より自由度が高かった。講義を自分で選択して、自分の勝手な都合で欠席することもできた。図書館は大きくて便利だった。3年のほとんどの単位がとれたので、4年生の時は本当に時間があった。レコード屋に行ったり、フリーペーパーを作ったりして遊んでいた。そんな感じで僕は大学生活は楽しかった。もし、アンケートはあれば「良かった」と回答するだろう。

話を今の時代に戻そう。室蘭工大生の「75%」の入学に入って「良くない」をどう捉えればいいのだろうか。僕が考えるこの75%は、別に大学が「嫌い」という訳ではなくて「好き」とまではいえない、というニュアンスだと思うのだ。そこに今の時代に生きる学生の意識があると思う。学生の基本的意識は、僕の時代も今の学生時代も変わらないと思う。変わっていることは2017年の時代(社会)。だから、僕が今大学生だったら、アンケートの答は「良くない」と答える可能性は高い。

僕は「今の時代」の学生は大変だと思う。彼らは、インターネットで世界中の情報にアクセスできて、行動でできる、雇用流動性が高く、強度な自由恋愛であるという、極めて自由度の高い世の中に生きている。それはとても、大変なことだと思う。自由であるその苦労は計り知れない。自由はクリエテイティヴやアートと似ている。自由と真正面に向き合うのは本当にツライ。僕はいつも逃げたいくらいだ。僕の学生時代は逃げることができたのだ。「追いかける」携帯電話もインターネットも無かったのだから。

室蘭工大生のアンケートの75%の大学に入学して「良くなかった」は、僕は大学に対する文句というより時代に対してのものだと思う。そして、「良くない」は「良くなれる」というメッセージだと思う。そこに学生の真剣さがある。本当に室工大が「嫌い」だったら、「地域社会概論」のワークショップだって、「室蘭本まつり」だって、とても成立しないと思うのですよ。それらの紹介の中には、まじめに取り組む彼らにまじめさや熱意も伝わってきました。

3回めに続きます。

ishikawa

Text by
アート・メディアライター  石 川 伸 一 (NUMERO DEUX)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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NEWS No.17010-3「高梨美幸 個展」

2017.02.08

高梨美幸

人生とは隠れていることを探す…ことではないか。人生とは「つくる」のではなく「探し当てる」ことではないか。そこわからず、人生を良い方向に進めたいと思う時。僕はやみくもに「つくる」ことに必死になる。材料を探し、なにかを組み立てようとする。または、そのために教えを乞う…でも、実はもっとまわりを見て、探す。それによって容易に人生は開けることもある。結果的にその場合が多い気がする。人生の答は実は身近にあるのだ。まわりが見えていないだけで。

もちろん「つくる」ことも人生には必要だ。「探し当て」ながら、つくっていこう。つまり、それは「受信」と「発信」ということなんだろう。

高梨美幸は札幌在住の画家。個展は今回で2回目。油彩を中心に22点が展示されていた。僕は本展示で、人生を彩るひとつを「探し当てた」気がする。作品は幻想的な第一印象があるが、2度3度と作品をみていると強い現実感を感じてくる。幻ではないのだ。ここにあるのは。描かれている女性、そしてその背景には、リアルな意思が感じられた。つまり、ここにあるのは箱庭的な幻想ではなく、作家の人生観から生み出された地に着いた表現だと僕は感じた。静かな情熱が感じられ、見る者の気持ちの充足感が高い。次回の展示にも期待したい。

ishikawa

Text by
アート・メディアライター  石 川 伸 一 (NUMERO DEUX)

「高梨美幸 個展」
会期:2017年1月31日(火)~2月5日(日) A室 10:30-06:30
会場:さいとうギャラリー(南1西3)

 

 

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