匿名性とラベル
僕は時々、人前でしゃべる時がある。20〜30人程度の小規模スペースで、お話をする時に気をつけていることがある。教えるような内容の場合は講師用の机が用意されている。これにノートパソコンや資料を置く。そして、飲み物を置くことが多い。主催者に用意されていることもあるし、自分でもってくる場合もある。ペットボトル場合、気をつけていることがある。それが、ペットボトルにある商品のラベルをとるといういことだ。分別のため、ラベルは簡単にとれる。すると、それまで強い自己主張をしていたボトルは、おとなしい無記名なモノになる。
多分、講師をやっている方で、これをする人はあまりいないと思う。僕も誰かに教わった訳ではない。自分がふと思ったのだ。それはラベリングされたものを、ものすごく目立つということ。それはそうだ。買ってもらうため、覚えてもらうためデザインされたもの。それと壇上に僕と一緒に並んだら、受講生の視線はペットボトルに貴重な視線が奪われる訳だ。それは、僕が許さない(笑)。というのは冗談だけど、自分は教える時には、余計な要素がないほうがいいと思っている。だから、僕はペットボトルのラベルを剥がす。ペリッ。
青田真也は美術家。1982年大阪府生まれ。愛知県在住。2006年京都精華大学芸術学部造形学科版画専攻卒業。2008年愛知県立芸術大学大学院美術研究科油画専攻修了。その表現は、おもちゃ、カメラ、ラケット、楽器等の誰もは目にし、持っている「表面を削る」ことで作品へと変換する。その表現の意味は、日常と非日常を考え、本質を問いかけるものである。
展示されている「削られたモノ」。この可愛らしさなんだろう。魅力を感じる。隠された。そして「削られる」前を思い出してみる。 すると、剥がされたラベルの情報から機能が浮かび、そのモノがふさわしい場所…スーパーマーケットや、家などもイメージされていく。ラベリングによって、大量生産品ということが頭に入った時のノイズな感覚が頭を悩ます…というのはややオーバーだ。それでも「削られた」後とは、確実に異なる気持ちであることはたしかだ。
Text by
アート・メディアライター 石 川 伸 一 (NUMERO DEUX)
「Shinya Aota solo exhibition」
期 間:2016年12月16日(金) 〜 2017年1月30日(月)10:00 〜 20:00
会 場:テラス計画(北2西4 赤れんが テラス5階)
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同時期開催展
青田真也「A.B.」
期 間:2016年12月16日(金) 〜 2017年2月11日(土)11:00 〜 19:00日月休
会 場:salon cojica(札幌市北区北23条西8丁目3-33 coneco bld.1F )