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NEWS No.16061「東京・リトルプレスのある風景(2)代官山蔦屋書店 」

2016.10.20
代官山ツタヤ
Photo by 淳平 筈井
NUMERO DEUX NEWS 16061 アートなニュース

表現は楽しい。小さくて大きい「紙メディアの世界」=リトルプレス
代官山蔦屋書店=新しい本屋さんに馴染むリトルプレスたち。

A.)連載のイントロダクション

リトルプレスとは…個人や団体が制作から流通までを手がける小さな出版物。Zine(ジーン)ともいう。少し前なら、インディマガジンとかさらに昔はミニコミ誌とか呼ばれる種類のものかもしれない。もっと昔ならズバリ「自主制作」という感じですね。歳がばれるなぁ。意味合いはいろいろ変わっていく。「リトルプレス」のニュアンスは、規模さえ小さければテーマは自由。取材記事等のある雑誌ふうのものから、個人のアート作品に近いものまで幅広く感じる。

2016年9月。まだまだ暑かった都内。リトルプレスをあつかう魅力的なお店を7つ訪れてみました。今後、7回に分けて、ひとつひとつ紹介していきたいと思う。今回は2回目。

B.)2回目 代官山蔦屋書店を考える

前回はジュンク堂池袋店について記事を書いてみた。
今回は代官山蔦屋書店について。2回続けて大規模系のお店にしたいと思う。そこでリトルプレスの品揃えも含めて、ジュンク堂との比較もしてみる。

まず、立地ですが駅から10分以内。代官山の便利な場所かと思う。このツタヤはいわゆる「オシャレツタヤ」(僕定義)。通常の「TUTAYA」のようにわりと普通の書店にDVD,CDレンタルがある、という形態とは異なる。代官山蔦屋書店は代官山T-SITEとも呼ばれ、アート系の専門書等も充実。CDやDVDだけではなく、カフェやほか専門店も併設され「本、映画、音楽を通してライフスタイルを提案すること」というコンセプトショップ(僕の定義:いろんなものがオシャレにあるお店+カフェあり)である。

本の割合が多いものの、その他アート、カルチャー的なアイテムも充実していて「なにか、おもしろいものを見に来てみよう」という知的好奇心を満足させる空間になっている。店舗自体のスタイリッシュな雰囲気、レイアウトもそんな気分を盛り上げると思う。

C.)唯一の欠点?というか違いのニーズ。

本書店の欠点をいえば「純粋な本好き」には、この空間のこだわりは余計だと感じる人もいるかもしれない。加えて書店ではあるけど本以外のものも取り扱う結果、書籍の絶対量が少ないと思う。ただ、それに不満を感じる人は、前回紹介した、ジュンク堂書店のような大型書店に足をは運べばいいと思う。その点はユーザーの好み(気分)の問題であり、目的の問題だと思う。優劣はつけられない。

ジュンク堂書店は時代の流れも意識しつつも、基本はわかりやすい「大型書店」というつくりにこだわっていると思う。つまり、まず優先順位は多様なニーズに答えるために、圧倒的な品揃え。それを効率よく、探しやすい無駄のないレイアウト。あるのは図書館のような雰囲気で、それを愛する本好きは多いと思う。その中のリトルプレスは、こういった書店ファンに向けた読み物中心の本が揃えられていた。対して、代官山蔦屋書店は、本を中心にしつつ、ライフスタイル全体を提案するお店になっています。生活を楽しくするヒントがたくさんある空間。そして、お茶も楽しめる。そんなお店では、リトルプレスの取り扱いもジュンク堂書店とは異なっていた。

D.)代官山蔦屋書店のリトルプレスについて

さて、今回の代官山蔦屋書店でのリトルプレスは、アート系だったり、デザインにこだわったものが多い。リトルプレスの専門コーナーはなく、海外ファッション、アート雑誌、国内アート書籍のコーナーあたりに並べてある感じである。この点は大変興味深い。「読み物」系のリトルプレスが充実していたジュンク堂に対して、蔦屋書店では「アート、デザイン系」が目立った。これは、ジュンク堂は正統派の本屋さんとして、活字が中心の内容的に「書籍」に近いリトルプレスを中心に取り扱っていたに対して、代官山蔦屋書店では、活字よりビジュアルを重視した品揃えだと感じた。同じ大型書店でも、お店に並べるリトルプレスに違いがあるのは大変興味深い。これは、2つの書店のコンセプトの違いが、取り扱うリトルプレスの違いにも反映されている。

E.)エンディング

本屋さんに求められる多様なニーズ。そんな時代の流れの中で「リトルプレス」も、有力な「商品」として、大型書店でも注目されている。これはリトルプレスによって、大きなチャンスだといえるが、同時にビジネスという点では試練だともいえるだろう。

ishikawa
Text by
アート・メディアライター 石 川 伸 一 (NUMERO DEUX)

代官山蔦屋書店
所在地:渋谷区猿楽町17-5
1F:朝7時~深夜2時、2F:朝9時~深夜2時
東急東横線「代官山駅」より徒歩5分

NEWS

NEWS No.16060「東京・リトルプレスのある風景(1)ジュンク堂池袋店 」

2016.10.17

池袋ジュンク堂
Photo by Yusuke Morimoto
NUMERO DEUX NEWS 16060 
アートなニュース。

表現は楽しい。小さくて大きい「紙メディアの世界」=リトルプレス
ジュンク堂書店 池袋店=大型書店とリトルプレスの「交際」

リトルプレスとは…個人や団体が制作から流通までを手がける小さな出版物。Zine(ジーン)ともいう。少し前なら、インディマガジンとかさらに昔はミニコミ誌とか呼ばれる種類のものかもしれない。もっと昔ならズバリ「自主制作」という感じですね。歳がばれるなぁ。意味合いはいろいろ変わっていく。「リトルプレス」のニュアンスは、規模さえ小さければテーマは自由。取材記事等のある雑誌ふうのものから、個人のアート作品に近いものまで幅広く感じる。

2016年9月。まだまだ暑かった都内。リトルプレスをあつかう魅力的なお店を7つ訪れてみました。今後、7回に分けて、ひとつひとつ紹介していきたいと思う。

その1はジュンク堂池袋店。名前のとおり場所は池袋。駅から5分程度のいい場所。ご存知のとおり、この書店は札幌でも中心部にある大型書店。紹介する池袋店も9階建でで、すべて書籍という本好きにはたまらない空間。平日の22時まで開店しているのは仕事帰りにも利用しやすく、毎日のように本を見にくる人もいるかと思う。

なんといっても9階建てですから、見るところはたくさん。「今日は、9階のアートコーナーを覗いていみようかな」という楽しみ方もありかと思う。さて、僕は思うのはこんな全国展開の大型書店が、大きく「リトルプレス」を取り扱うというところに、凄く時代の変化を感じる。それも上階の本棚の片隅ではありません。1階の入口から近い平積みもある専用コーナー。この事実は本当に驚く。何が起きたのか。

本屋さんの入口そばといえば激戦区。本屋さんとしては「一番売りたい本」「売れる本」を置きたいところでしょう。その一部になぜリトルプレスなのか。ここで、考えるのは、ジュンク堂池袋店は、ルトルプレスという名称も知らない人にもむけても、売ろうと考えている、ということ。そんなジャンルにこだわることなく「おもしろい本がありますよ」という戦略でコーナーを用意しているのではないか。これは、単なるリトルプレスの取扱店ではなく「リトルプレスという楽しみ」を貴重な店舗スペースを使用して「提案」していることがわかる。これはひと昔前の大型書店なら、考えられなかった。

話はすこしそれますが、僕はこれには「ブログ」という存在の一般化も少し関係していると思う。なぜかといえば、今はブログの書籍化というのもひとつの大きなジャンルになっている。ブログをやっている人というのは、プロではなかったり、小規模でやっている人が多いかと思う。でも、お客さんは今はプロかアマかなんて関係なく手にとって買っていく。昔は素人の本というのは売りにくかった。でも、今はブログの書籍化のように素人だったり、無名だった人の本がベストセラーになる可能性が凄くある。その影響も受けて、リトルプレスも注目をされているのではないかと思う。それに、今は印刷物制作のハードルも、パソコンのソフトの普及や、利用しやすくローコストなネットの印刷業者の存在も見逃せないと思う。

さて、本書店のリトルプレスの品揃えも、特定の傾向があると感じた。それはアート的なビジュアル中心ではなくて、誰もが興味をもちやすい、生活、仕事、趣味に関した雑誌、読み物ふう品揃えは多い。このあたりが、老舗の大型本屋さんのセレクトだなという感じがする。アートやサブ・カルチャー好きのお客さんというよりも「本好き」のお客さんをターゲットにしていると思う。ジュンク堂池袋店さんにはリトルプレスの未来、そして「書店」の未来を見たような感じがした。リトルプレスと大型書店が手をつなぐ。素敵なことだ。

Text by
アート・メディアライター 石 川 伸 一 (NUMERO DEUX)

ジュンク堂池袋店
所在地:東京都豊島区南池袋2-15-5
JR池袋駅/東武東上線池袋駅 東口より徒歩約5分
東京メトロ有楽町線/副都心線/丸ノ内線池袋駅 39番出口より徒歩約5分
西武池袋線池袋駅 西武南口より徒歩約2分

NEWS

NEWS No.16059「モリケンイチ展『その森で少女に何が起こったのか?』」

2016.10.11

IMG_6185
NUMERO DEUX NEWS 16059 
札幌のアートなニュース。

フィクション、ノンフィクション
平面の中にある立体性と物語(人生)

人生とは、物語だと思う。ややロマンチックな表現だが、そこは楽観はしていない。物語はすべてハッピーエンドで終わる訳ではない。嫌な終わり方もあるし、曖昧な終わり方もある。物語と人生の違いはなんだろうか?フィクションか、ノンフィクションかそれだけか。「それだけ?その点が大きく違うのではないか」。そうなのか。でも、物語や人生を感じ取る当事者にとっては、実はそれもどちらでも、いいことではないだろうか。事実より「どう感じるか」が僕は大切に思えてくる。そこにフィクションとノンフクションの区別は意味はない。

モリケンイチは1969年生まれの札幌在住の画家。全道美術協会 会友。2002年から2008年末までの6年間はフランスで活動。受賞歴は、第70回全道展 70周年記念賞(最高賞)受賞(2015年)、上野の森美術館大賞展 賞候補入選(2010年)、上野の森美術館「日本の自然を描く展」優秀賞(2010年)、全道展 奨励賞受賞(2013年,2014年)、北の大地ビエンナーレ展 佳作賞受賞 (2011年,2013年)、インターナショナル・イラストコンペティション佳作入選(2013年)、上野の森美術館大賞展入選(5回)。(モリケンイチ ウェブサイトより

今回の展示では、ミステリアスな少女(達)の「物語」を連作のような形でギャラリーを埋めている。それを眺めていると、彼女たちの現実と、それを見ている自分の現実。いや、彼女たちはフィクションか。もしそうなら、自分は現実か。また、彼女たちが現実なら、自分はフィクションとなるのか。作家の人生と作品の中の物語。作品のビビットな色合いは、逆に僕の頭をモノクロームにしていく。「その森で少女に何が起こったのか?」。現実と非現実を味わうような楽しみが、この作品にある。

Text by
アート・メディアライター 石 川 伸 一 (NUMERO DEUX)

「モリケンイチ展『その森で少女に何が起こったのか?』」
会期 : 2016年10月4日(火)~2016年10月16日(日)10:30-22:00 (日曜20時迄)
会場:to ov cafe(ト・オン・カフェ)(南9条西3)

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