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NEWS No.16041「ノード 第59期生札幌大谷高校美術科OG有志展」

2016.07.18

0710ノード大谷
NUMERO DEUX NEWS 16041 札幌のアートなニュース。

アーティストになるには?
そのはじまりと、終わり。

簡単かもしれない。ひとつ作品をつくればアーティストになれる。それがはじまり。では、アーティストを辞める場合はどうすればいいのだろう?会社を辞める場合は「退職届」を出すことになる。出さなければ怒られるし、非常識といわれる。では、アーティストを辞める場合はどうすればいい?アーティストは「退職届」を出す義務はない。「辞める」ことを口に出さなくてもいい。もう一度最初から考えると、入社試験も面接もある訳ではないから「辞める」のも不要かもしれない。でも、客観的にはアーティストにも必ず終わりがある。それは自分で決めることなのか、他者が決めることなのか。僕は、そこにはひとつの「事実」があればいいと思う。

本展は市内高校美術科のOB有志による展示の企画。「有志」とあることから、ゆるやかな企画かと思う。声をかけられた時点で、作品を出してみようと思った人が出展するような感じではないだろうか。出品者はそれぞれ、新作もあれば、過去作もあるのかな。卒業をしてからも作り続けている人、ひさびさに作った人もいるかと思う。作品を眺めていく。展示作品の作風の違いを感じながら、僕はそれぞれのアーティストと制作環境の違いも想像してみる。さらに、本展に出品したかったけど、できなかった人もいるのではないか、とも考える。こうした企画は、出品したアーティスト自身が「今、自分はアーティストなのか」と問いかける良い機会ではないだろうか。僕が考えるアーティストの定義を簡単。それは「作品を作り、発表する」ことを適切なタイミングで続けている人である。シンプルに言えば、作品を発表しなければアーティストは、その「事実」がアーティストの「退職届」だと僕は考えている。

Text by
アート・メディアライター 石 川 伸 一 (NUMERO DEUX)

ノード 第59期生札幌大谷高校美術科OG有志展
会期: 2016年7月6日(水)− 7月10日(日)
会場:ほくせんギャラリー アイボリー(南2西2)

 

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NEWS No.16040「浅井真理子 つるつるのみちをとおってかなたをさわりに」

2016.07.17

714浅井真理子
NUMERO DEUX NEWS 16040 
札幌のアートなニュース。


美術館を、
インタラクティヴ
机の上の小さく深い世界

美術館で私達は五感のなにを使うのか。その多くは「見る」ということではないだろうか。そこにある行動は「立って」いること。美術館でわたしたちは「立って」「見る」。そんな先入観で、本会場に入ると、少し戸惑う。

なぜか、会場には複数のテーブルに、ノートが置かれている。まるで「生徒のいない教室」のようである。不思議な謎を残したホームルームのような印象を僕は持った。手がかりは机に置かれたノート。それを証拠品を調べるように手袋をして、表紙から、ていねいにページをめくっていく。そこに描かれた線。ひらくごとに曖昧感じられてていく世界。

それをなんとか読み解こうと、ページを進めたり、戻したりしたりする。目を本から離すと、ノートの置かれた他の机が目に入る。しばらくして、ほかの机に行ってみて僕はまた同じことを繰り返す。アート展示における、この僕の「行動」は何なのだろう?僕はこれは普通、インタラクティヴな仕掛けのある作品に対する行為だと思う。しかし、本展それは存在しない。すべては一人芝居。

作品自体が、なんらかの反応をする仕掛けがある理由ではない。でも、僕は自分がノートのページをめくって、そこに書かれていて見る。考える。それを複数のテーブル間に存在し、それぞれに移動していく自分。その動きが、作品との相互コミニュケーションしているように感じる。さらには机、ノート、抽象的なドローイングというのが、アートであり、同時に日常感もある。そこが、本作品との相互感を強めているのではないか。そして、その世界に「迷う」感じが僕にはとても魅力的だった。シンプルに思える作品が、実はその深さに底までみえない感じである。

浅井真理子は東京・埼玉を拠点にするアーティスト。映像やオブジェ、写真、ドローイング等、多様なメディアを組み合わせた作品を制作。近年はとくに人の営みの中にある五感を捉え直すような作品を発表している。今回の展示では、机に手製のノートに感圧紙へのドローイングした作品を展示している。見るものは白い手袋をつけてノートの中身をのぞいていく。

Text by
アート・メディアライター 石 川 伸 一 (NUMERO DEUX)

浅井真理子 つるつるのみちをとおってかなたをさわりに
会期: 2016年6月25日(土)− 7月14日(木)・日曜休
会場: CAI02 (大通西5 昭和ビルB2)

 

NEWS

NEWS No.16039「民野宏之 個展『Colors』」

2016.07.14

730民野宏之
NUMERO DEUX NEWS 16039
札幌のアートなニュース。

一番難しいこと。
「らしさ」を構築すること。

良い意味で「石川さんらしい」と声をかけれると大変嬉しい。一杯やりたいくらい。飲めないけど。自分が自分らしいと認識される。オリジナリティと自分。それが、非常に高いレベルになったのがアートの表現ではないか。そして、そのレベルに目指すのがとても難しい、アーティスト(表現者)への道のりだと思う。なぜなら、他人に評価される自分らしさ、という点は言い換えるとオリジナリティと言うこともできる。さて、ではそれを得るにはどうすればいいのだろう?

「らしさ」は、意識すれば、すぐできるという訳ではない。自分のことなんだけど、自分の思い込みだけで「らしさ」が構築できるとは思えない。それには「〜さんらしい」他者の評価=共感も必要だと思う。そこが難しい。

民野宏之は画家。1956年北海道生まれ。札幌宮の森のアトリエを拠点としながら、様々な著名作家たちの本の装丁画などを手掛けている。近年では山本周五郎賞を受賞した湊かなえの「ユートピア」、安藤祐介のラグビー小説「不惑のスクラム」、直木賞候補となった深緑野分の「戦場のコックたち」など、次々に話題作の表紙を担当している。個展「カラーズ」開催された。本展では、絵の具のチューブやブロックの玩具、カラフルなスイーツなど「色」が印象的な、新作を含む大小合わせて約20点の油彩画を展示。なにげない日常のワンシーンを、柔らかく繊細な感性と筆づかいで描きだした作品からは、写実的でも一目で民野作品と分かる“静かな気配” が漂っている。

本展示の作品のモチーフは、どちらかというと身の回りにある物、ありふれたものだと言える。その描き方も奇をてらったものでもない。でも、作品全体からにじみ出るような「民野宏之らしさ」はとても感じる。その理由を僕は今、説明できることはできないが、さまざまなテーマで展示された作品の中にある静かな「らしさ」の表現力を味わってみてほしい。そこに「らしさ」を自分のものにするヒントがあるかもしれない。

Text by
アート・メディアライター 石 川 伸 一 (NUMERO DEUX)

民野宏之 個展「Colors」
会期:2016年7月2日(土)~30日(土)11:00~19:00
・月曜日・第三火曜日休廊/18日は祝日のため営業、19日・20日が休廊日
会場:クラークギャラリー+SHIFT(南3条東2)

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