映画レビュー/「トゥルー・グリット」(2011)
Story:ガンマンの時代。父をおたずね者に殺された14歳の娘。彼女は保安官を雇い父の仇をうつ旅でる。それに同じおたずね者を追跡するテキサスレンジャーも加わる。
● 持ち味は隠し味になった。
Story:ガンマンの時代。父をおたずね者に殺された14歳の娘。彼女は保安官を雇い父の仇をうつ旅
でる。それに同じおたずね者を追跡するテキサスレンジャーも加わる
さて、今年のクリスマス・イブは映画を観ました。普通そうでしょう(!)。札幌駅北口の付近にある名画座、蠍座にて。駅から10分圏内ですが、ひっそりとした立地がいいですね。それにしてもひさびさでした。映画館内の素敵さは変わらず。木目を生かした落ち着いたインテリア。シネプレ系のモダンで楽しげなものとは違った大人な雰囲気。とりあえず、午後の紅茶(レモン)を買いました。本当は緑の無糖があれば良かったのですが。
コーエン兄弟の新作。僕はこの監督といえば「バードンフィンク」「XYZマーダーズ」といってカルトな作品の印象が強い。もちろん、近作もいくつか観てる。でも、その2作の印象が強いのです。でも、それもそろそろ頭から振り下ろさないといけないね。今ではハリウッドの安定感あるベテラン監督という風格です。本作は西部劇。ジョン・ウェインがアカデミー賞をとった主演作品のリバイバルでかなり正当派です。
男2人と少女を加えた追跡劇。少女の勝ち気で生真面目な感じがいい。それが本作の魅力の間口をひろめている。この役が成人女性だと違うんだろうな。この少女の前では2人のガンマンはとても素直だ。本音で話す。それが自然に感じられる。なんか男女の余計なモヤモヤがなくていい。自然の中を進んでいく道中は絵としても気持ちがいい。アクションは要所要所にビシッといれる感じなので多くはない。ドラマでみせる作品だ。そこに退屈はない。
話的にそんなドンデン返しがある訳でもなく、お約束的な展開だともいえるのだけど、コーエン兄弟特有のポップな妙味は、隠し味としてはたしかにある。そこが本作を最後まで魅せる作品にしている。昔の作品は妙味が前に出ていたが、現在は隠し味になった。それがいい。僕はラストのクレジットまでテキサスレンジャー役がマッド・ディモンだとは気がつかなかった。いい役でした。今までのイメージとも違うし。
Text Shinichi Ishikawa / NUMERO DEUX