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映画の琴(コト)「嘆きのピエタ」
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ストーリー:主人公は天涯孤独。冷酷な借金取り。回収するためなら相手の手を潰し、高い場所から突き落とし、その保険金から回収をする。ある日、主人公の母を名乗る女性がつきまとうようになる。主人公は、その女性の存在と自分の生き方に戸惑いはじめる…
感想:殺伐とした作品。冒頭から主人公の絶対的な冷酷性をみせられ、その相手がちいさな工場の主人たち、という対象から現実感しか感じられないので、とっても暗い気分になる。撮り方もドキュメント的なので、よりリアルに感じる。つらい。
そんな中で、唐突に登場する主人公の「母」と名乗る女性。家に入り込み、いきなり食器を洗い、朝食の用意をする。唐突に開始される共同生活。このあたりは映画的だけど、主人公は冷酷だが無駄な残虐性は発揮しない、という設定が感じられので、わりとすんなり受け入れることができる。主人公の孤独な世界に入り込んだきたのは、女ではなく母なのか?というのは本作のフックになっている。
さて、そこからの展開が「比喩」として評価するなら、本作の多くの受賞歴は理解できる。でも、僕はストレートに話だけを追っいくと「何だこりゃ」というのが僕の感想。衝撃のラストとは感じられないし、アート映画としては撮り方が普通すぎて残酷性だけが妙に印象に残ってしまった。観念的な映画にしては、感情移入しやすい庶民性がありすぎてなんとも居心地が悪い。ラストに主人公はひとつの贖罪に到達したのかもしれないけど、本作に登場する庶民が可哀想すぎて、どうも僕は集中できなかった。Text & by 石川伸一(NUMERO DEUX)————–