毎日の字間

2016.7.17映画の琴(コト)『オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分 』

2016.07.17

オンザハイウェイ
『オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分 』(2013年)

僕は限定された状況の映画が好きです。それによって、よりリアルに感じられるから。スリルも増加。本作はそんな映画です。ほぼ全編、主人公(トム・ハーディ)はある目的のために高速道路をひとりで運転している(そして、その目的のために家族も仕事も失うかもしれない)。それだけの一晩を描いた映画。しかも夜。風景もわからない。他者との出会いもない。カメラはただ運転する主人公の横顔を写し続ける。変化があるとすれば、それは職場と家族との電話のやりとりのみ。絶望への逃避行。

本作は、主人公の性格と、一直線の夜の高速道路=主人公の人生というメタファーの部分をうまく重ねている。そのアーティステックな部分はとっても好き。でも、物足りない部分がある。たぶん、本作の唯一の主人公の電話をとおした「会話」が物足りない。ただ、主人公は電話はするが、心の底では、コミニュケーションに期待していないような気もするし、内容を問わずに過剰に期待しているような気もする。「きっと、すべてうまくいく」と。

本作の深みを感じさせる部分が主人公の「頑な」な部分であり、それを美意識として、理解できるか、できないかかで評価の別れるところだと思う。僕は主人公には共感はできない。だけど、壊れた美意識は感じられる。考えてみれば、リアルな社会で発揮できる美意識なんて、みんな壊れているのかもしれない。

70点(お役にたったらシェア願います)

Text by
アート・メディアライター 石 川 伸 一 (NUMERO DEUX)


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