表現は楽しい。小さくて大きい「紙メディアの世界」＝リトルプレス
「百年」＝実体のあるメディア。さまざまな「本」を楽しめる落ち着いた空間。

もう北海道は冬になってしまいました。雪が空を舞っています。
この記事は過ぎ去った夏の思い出の話です。

A.）いつもの前置き。　

リトルプレスとは…個人や団体が制作から流通までを手がける小さな出版物。Zine（ジーン）ともいう。少し前なら、インディマガジンとかさらに昔はミニコミ誌とか呼ばれる種類のものかもしれない。もっと昔ならズバリ「自主制作」という感じですね。歳がばれるなぁ。意味合いはいろいろ変わっていく。「リトルプレス」のニュアンスは、規模さえ小さければテーマは自由。取材記事等のある雑誌ふうのものから、個人のアート作品に近いものまで幅広く感じる。

2016年9月。まだまだ暑かった都内。リトルプレスをあつかう魅力的なお店を８つ訪れてみた。た。８回に分けて、ひとつひとつ紹介していきたいと思う。今回最終回です。

B.）これまでの記事について、そして今回は最終回。

これまでの復習。初回はジュンク堂池袋店について書いた。２回目は同じく大型書店の代官山蔦屋書店について触れた。２つの「大型書店」の「未来」。その中でのリトルプレスという視点で続けてみた。３回目は、未来という部分を引き継いで今の書店のスタイルとして渋谷にあるユトレヒトを紹介した。４回目では「過去と未来」という視点で中野にあるタコシェを紹介。２０年以上続いてるお店の魅力を書いた。そして、５回目では、リトルプレスを取り扱うだけではなく、様々な方法で「手助け」をする新しい形をもつお店MOUNT ZINEを紹介しました。それに続くように、クリエイターに優しげな視線をむけるお店ブックギャラリーポポタムを前回（６回目）紹介した。前回では７回目では「今」を感じさせるアート書籍のある、アートを勉強したくなる、恵比寿にあるNADiff A/P/A/R/Tを紹介。今回はいよいよ最終回。吉祥寺にある古本屋さん「百年」について書いてみますね。

C.）第８回目「百年」。

さて、まずまず場所なんですが。吉祥寺駅から歩いて５〜６分程度（サイトにある地図）。一度行けばおぼえられる。東急百貨店の吉祥寺店の近くなので、それがわかればまず大丈夫。

お店の僕の印象は、一見クラシック雰囲気な古本屋さん。それが、今の時代に絶妙にマッチした感じで出現したと思った。店内は、先に書いたとおり僕が学生時代に足を運んでいた昔気質の古本屋さんのイメージが重なる。落ち着いた空間が広がります。でも、コンパクトな店内には、いろんな興味を満足させてくれる本があるのが楽しい。フラリと店内に入って、今日は「古いものを楽しもう」と思えば、そういったものもあるし、逆に新しいものものある。文字中心のも、ビジュアル中心のも。メジャーな出版社もリトルプレスにもある。

実体のあるメディア「本」。その楽しみがギュッと詰まった店内が楽しい。本の「冒険」ができる空間がある。平日２３時までというのも、仕事帰りに立ち寄りやすい。ウェブサイトも充実しており、オンラインでの販売や、ポイントサービス、イベントの企画などのインターネットの活用や、積極的に発信していくスタンスは極めて現代的だと思う。

今回、全８回でお送りしたシリーズ。最後にこの「百年」を紹介したのは、僕の感覚的に一番素敵だな、と思ったから。あくまで「感覚」の話。なぜなら、リトルプレスという点でこのお店が突出して優れている訳ではいない。紹介したお店はそれぞれ特色があり、優劣はつけられない。それでもこのお店が好きなのは、吉祥寺にあるという魅力的な立地、長い営業時間、インターネット等の活用、古本からリトルプレスまでの広い守備範囲、クラシックで落ち着いた雰囲気…というそれぞれの要素が、僕は気に入っているだと思う。

Text by
アート・メディアライター  石 川 伸 一 (NUMERO DEUX)

百年
東京都武蔵野市吉祥寺本町　2-2-10　村田ビル2F
月～金／12：00～23：00・土／11：00～23：00
日／11：00～22：00
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