札幌ビエンナーレ・プレ企画実行委員インタビュー004
運営委員長:山本 謙一(やまもと・けんいち)
札幌初の国際的な芸術祭「札幌ビエンナーレ」を2014年開催実現のために有志による「札幌ビエンナーレ・プレ企画実行委員会」が結成され、第一弾として、今年4月に北海道立近代美術館で9日間(4/2-4/10)展覧会が開催される予定だ。
今回は運営委員長の山本
謙一(建築家/アウラ・アソシエーツ都市建築設計所長)にお話を聞いてみた。山本は海外からアーティストを招聘・滞在させて作品を制作してもらうアート事業を行っているS-AIRの元代表、現在は理事として見守っている立場で、その視点はビエンナーレにおける「ひとづくり」「まちづくり」にあるようだ。
『札幌ビエンナーレは展示表現とそれを可能にする「持続性のあるクリエイティブなまちづくり」=「創造的なひとづくり」という地域目的で進めるべきだと思う』Interview
with Kenichi Yamamoto
「私は運営委員長をしています。自分の仕事は本祭まで目を向けてどうアウトラインを作っていくか、札幌ビエンナーレを次世代の人間を育てる孵化器として機能させることを考えています。あと商工会議所等の関連活動も行っているので、そこと美術界をつなぎあわせるという役割もあると思います。
アートNPO法人S-AIRにおける10年の事業で40か国のアーティストを招聘して作品制作と展示をしてもらいました。 そこでは限られた中でメデイアコンテンツ、食、観光、教育、医療福祉分野等とアートに関して、地域の生活芸術文化にどんな可能性があるのか、官学民のコラボレーションを通じて国際市民交流のまちづくりをエクササイズしてきました。その経験と感触から、この札幌にはこうした事業を担う人的潜在力が育ってきており、より充実した広がりのあるこの活動に関しては、意欲的な明日を担うスタッフに育成の場として、おまかせしたいと思っています。
ビエンナーレは本祭を2014年に想定しています。すると、今一番に考えるべきは中期計画の視点です。具体的にそれはチーフ・スタッフの育成だと私は思うのです。20代〜30代の人に力をつけてもらって、彼らの時代を作る足がかりをつくりたい。ひとづくりができれば良いアウトプットにもつながります。そして、それを更に次世代につないでいくというシステム構築の場でもありたいですね。その意味で志と視野を広げるお手伝いができればと思っています。
プレ企画である程度成果を出すというのは確かに重要ですが、人材も予算も限られている為、無理をして、人が燃え尽きたり、経理が赤字になって持続性が無くなるのを私は一番心配をしています。プレ企画は規模の大きさを一番に求めるのではなくて、しっかりとした世界的な通時性と共時性、そして新たな地域性の予感を醸成したコンセプトワークを編出し、そしてここが重要ですが、それを共有、展開、そして浸透できるようキッチリすべきだと思います。そんな風に展示表現のコンセプトを小規模でもいいから語れる、そんな可能性のカタマリを表現してゆくことをめざすといいですね。
ビエンナーレの目的にはまちづくりも重要な位置づけとなります。まちづくりはひとづくり。それが札幌市のかかげる「創造都市」というテーマにもつながっていく。創造的なひとを作って創造的な場を作る。もちろん経済社会活動においても、より創造的な経済人や市民をより多く輩出してゆける地域を目指すべきです。それには持続性が必要となる。
従って、札幌ビエンナーレは2年一度やる美術展ですから、展示表現とそれを可能にする「持続性のあるクリエイティブなまちづくり」=「創造的なひとづくり」という地域目的で進めるべきだと思う。地球市民として絶えず世界最新動向を現場から嗅ぎ取る事ができ、そこから地域を見つめ、地域資源を国際交流互恵関係であらゆる分野へ繋ぎ、魅力発信し、そして常に見直し検証する、そんなプラットフォームとしてのひとづくり活動が、ビエンナーレ活動の本質の一つだと思ってます。」
Text by Shinichi Ishikawa (NUMERO DEUX)