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NEWS No.180302「500m美術館 vol25 第6回500m美術館賞 T Kit_A」

2018.03.15

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三角コーンを目にするたびに、
僕は現実がぐるりとまわる。

僕は普段の日常がふとすべてが「嘘」なんじゃないかと思うことがある。そんなマイナスな妄想を現実をぐるりとまわしてに引き戻すモノがいくつかある。そのひとつが「ロードコーン」。知っているだろうか?別名三角コーンという名で知られている。現物を見れば、みんな思い当たるよ。どうしてもわからなければ本記事写真の左に写っているものモノである。道路や駐車場や工事現場で、区分け等に使われる立体的な標識といえる。見知らぬ土地でも、これを見ると「ああ、夢じゃない」と僕は思う。

三角コーンは可愛らしい。標識というと平面が普通だが「彼」は立体。彼は外の世界のいろいろな場所に存在し、パブリックな空間なら大体の場所が似合う。僕はなぜ彼に支配されるのか?それは彼が「意思」を持っているからだろ思う。彼のいる場所には理由がある。その理由によって僕の行動は多くの場合制限される。

例えば「僕はそこに行きたいのに」彼は「それはやめろ」と存在で注意する。時には、ポールのように結ばれた複数に「彼ら」によって僕の自由は激しく制限される。多分、無力に近い彼らには反抗はできるのだけど心理的抵抗があったできない(または人間である「彼」のボスの存在が怖い)。ただ、見知らぬ土地の見知らぬお店に駐車場にある三角コーンはなんとも僕に安心感を与えてくれる。また、工事現場跡や、工場のような場所で役目を終えた彼の姿は哀愁を感じる。仕事と失われた仕事。考えさせる。

Kit_Aは1966年北海道生まれ、札幌在住。北海道教育大学大学院教育学研究科修了。道端のロードコーン(三角コーン)の写真を撮り続ける、それをテーマにした作品を多く制作している。本展示でも大量の三角コーンの写真や、それをモチーフにした作品がディスプレイされている。僕は本展示を通じて三角コーンのことを思い出す。逆に本展示がなければ三角コーンのことはいつまでも無意識のままだろう。

アートには「思い出させる」という役割があると思う。それはとても重要な役割である。なぜなら、僕達は日々の生活の中で目の前の「するべきこと」ばかりに追い立てられる。その状況の中では「それをやるか」「(半分絶望的な)現実逃避」の2択しかない。そこにアートは人生の調和と多様性を教えてくれる。Kit_A の三角コーンの作品もまさにそうだ。人生の余白を教えてくれる。

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Text by  メディアリサーチャー石 川 伸 一 (NUMERO DEUX)

「500m美術館 vol25 第6回500m美術館賞 T Kit_A」
会期:会期 : 2017年1月27日(土)〜2018年3月28日(水)
会場:500m美術館(地下鉄大通駅と地下鉄東西線バスセンター前駅間の地下コンコース内)
http://500m.jp/

 

NEWS

NEWS No.180301「登別市議会・観光委員会との意見交換会」

2018.03.10

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「一極集中型」(点)の観光から、
「ネットワーク型」(点をむすぶ)の観光へ移行する。
新しい観光のための小さいステップ。

今の観光は名所を「確認」することだと思う。僕達は旅の前に効率よくネットやガイドブックで、旅先の名所を調べる。そこまでの道のりを調べて、そこへ行く。到着した先でガイドにある写真と同じことを確認する。これは名所という「点」を求めて、そこをクリアする喜びを体験する。これは観光の王道であり、これからもそうありつづけると思う。ただ僕はさらに違う「観光」がないかと考えるのだ。

僕は近頃「面」で考える観光というの考えている。「断片」といってもいいかもしれない。それを見物しにいく。簡単にいえば、見知らぬ土地のさりげない光景に着目するということだ。具体的には、週末に車や公共交通をつかって見知らぬ土地にいってみる。そこでふつうはネット等で、そこの名所・名物を調べて訪ねるところだが、そこをあえて避ける。そこに住み人が子供を遊ばせるような公園、公民館等の公共施設、住宅街などを歩いてみる。最初は近場で十分だ。例えば、札幌市内でも僕は行ったことのないエリアはたくさんある。特に地下鉄のアクセスから遠いところは、知らないところが多い。そういう場所に行ってみる。

そこに人がいる以上、家があり、ちいさくても公園があり、お店もあるだろう。正直、最初は退屈かもしれない。でも、見知らぬ土地を歩く新鮮さはあるはずだ。そこを「楽しむ」のは内面の楽しみであり、僕ならそこを歩きながらメディアや原稿のことを考えるだろう。それは人それぞれで、写真を撮ってみてもいい、仕事や家族のことを考えてもいい。大切なのは「その場」に居ることを楽しむことなのだ 。楽しむとは「考える」ことだ。

僕は登別市の議員サポーターをしています。このは議員の会議で出席して議員と意見交換する内容です。先月、それが開催されました。その内容について、僕が考えたこと書いてきます。

本会議の重要なキーワードとして「全市観光」というのがありました。これは登別全体を「観光市」として捉えて、いろいろな観光スポットを開拓していこう、というアイディアです。この点について登別をあまりご存知ではない人には説明が必要かと思います。説明してみます。登別は全国的に有名な温泉スポットであることはご存知かと思います。

では、登別市全体が温泉街な雰囲気かというと、その点はかなり異なります。それは僕は登別に住んでみて初めて実感しました。では、それは住まないと実感できなかったのか?という訳ではなくて自分の不勉強を感じています。例えば、登別市の地図を見てみると隣の室蘭よりずっと大きな市だということがわかります。恥ずかしながら、僕はわかっていませんでした。

登別市とはかなり広いエリアなのです。僕が住むまで登別のイメージは「全体が湯気が出ているような温泉のまち」でした。しかし、僕の住んでいる場所では、登別温泉に行くのは少し手間だと感じるくらい距離感があります。でも、その代わり海が近いし、登山が楽しめる山もある。大学のキャンパスを歩く楽しみもある。その場所なりのガイドブックにはない「ちいさな観光エリア」だと思います。それは「全市観光」のポイントになると思います。

「全市観光」とは名所を否定するものではありません。名所の間に存在する「ちいさな観光エリア」と「名所」をむすんでいって「面」仕上げる。それが僕が考える「全市観光」です。僕は名所や名物を作り出すのも大事ですが、同時に既にある「ちいさな観光エリア」をきちんと整理して、紹介することが大事なのです。名所をつくるよりも、今あるものを発見して、キチンと紹介するメディアをつくるほうが重要だと思うのです。

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Text by  メディアリサーチャー石 川 伸 一 (NUMERO DEUX)

「登別市議会・観光委員会との意見交換会」
会期 : 2018年2月8日(木)
会場:登別市役所

 

 

 

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NEWS No.180203「林 紗綾香 / 空ろ木の花(うつろぎのはな)」

2018.02.20


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普遍性の再発見は、
ベッドのスマホをやめさせる。

最近、ベッドの枕元にスマートフォンを置くのをやめた。そんなに深い意味はないが、そこにあるとついつい使いすぎてしまうからだ。使うこと自体悪いことではないし、それは好きな行為でもある。でも、好きなことが必ずしも自分に良いことにつながらないこともある。ベッドの中のスマホはそんな行為だった。僕は寝ながらSNSに反応し、メールに返事をする。そう、寝ながら。そこには風景はなく。指と液晶ディスプレイだけが浮かび上がる。

私達は、日々たくさんのコミニュケーションをおこなう。人と人は交流する。口から言葉を使って。カラダを使って。機械を使って…多くなれば、なるほど僕達の感覚は麻痺していく。きっと、大昔のコミニュケーションとは、一大事ではなかったのか。スマホどころか、電話もない手紙もない時代。その当時は「その時」に人の口から出る言葉、仕草というのは、とても大切に扱われたと思うのだ。物理的距離もこえられず、記録もされないコミュニケーションというのは、なんて貴重なものだろうか!

林 紗綾香(はやし さやか)の本作では、2つの「窓」に映る情景を描くビデオインスタレーション作品となっており、1日という時間の流れの中で昭和の日常を映し出す内容となっている。そこには、ノスタルジックというより僕には大切な「発見」があった。普遍性の再認識である。

平成も終わろうとしている今。なぜ「昭和」なのか。それはきっと、わたしたちがもっともリアルに感じられる「昔」ではないだろうか。例えば、軽い読者等にある「昭和あるある」という思想は、実は深いレベルのものであり批評性や記念性、進化も含めた記憶断片だと僕は思う。

本作にミニマムな映像の中に浮かびあがるイメージはなんとも愛しく、ノスタルジックと同時に現代的でもある。つまりここにあるのは「普遍」のイメージなのだ。僕は現代のアートにおいて「普遍の表現」にむかう、というのはとても大事なことだと思っている。なぜなら、現代スマホ片手に生活する僕達がもっとも忘れるのが「普遍」なのである。普遍性から離れれば離れるほど僕達は混乱してしまう。僕がベッドからスマホを手放したのは「寝る」という行為を邪魔しない普遍の再発見だったからかもしれない。

ishikawa

Text by  メディアリサーチャー石 川 伸 一 (NUMERO DEUX)

「JR TOWER ARTBOX  林 紗綾香  /  空ろ木の花(うつろぎのはな)」
会期 : 2017年12月1日(金)~2018年2月28日(木)
会場:JRタワー1階東コンコース(JR札幌駅直結)

 

 

 

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