芸術祭を成功させるには、
「芸術祭がやっていない期間」が大事だと思う。
タイトルどおりことを僕はいつも思っています。僕は他の「お祭り」はわかりませんが、芸術祭については、やや極論ですが芸術祭の直前でもない「芸術祭がやっていない期間」が一番大事だと思うのですよ。
これは単純に「芸術祭広報をがんばる」ということと少し違う。ただ単に「芸術祭がある」ということを知らせるのでは足りなくて、札幌に住む人や会社が「芸術祭」っていいな、という「近づく気持」を作り出すことなんです。凄く難しいと思います。「アート」だから。
アートとは時代とともに変化していくものですし、知識も必要になる分野です。そして、決して趣味や仕事ではない限りアートは決して日常的なものでもない。でもね、別に札幌市民がみんなアートの専門家になれ、ということではないのです。ただ「札幌はアートのまちだよね」ということを市民が基本認識してもらうことなんです。
僕は昨年の札幌国際芸術祭で、大通やススキノエリアの商業ビルの空間をつかって展示をしたことが、とても素晴らしく「札幌らしい」と思った。札幌は、郊外のモエレ沼公園や、芸術の森は国内でも有数のアートスポットだと思うけど。やっぱり中央区中心部のテレビ塔、大通公園があり、北最大の繁華街すすきのがくっついた「地方都市」の姿が札幌だと思うのですよ。
だから、次回もメインはかならずこのエリアの展示を重視して欲しい。同時に、このエリアで「芸術祭ではない期間」でも小規模でいいから「まちの中のアート展示」をやって欲しい。もちろん「500mm美術館」は、まちの中のアート展示として素晴らしい。これをもっと拡張して欲しい。すすきの駅や、西11丁目駅でもやってほしい。
また、市役所や区役所の市民が一番利用する場所に、常にアート展示があるような状態をつくれないだろうか。また、クロスホテルやグランドホテルがやっているようなロビーでのアート展示が、もっと市内のホテル等の宿泊施設で常設できないだろうか。きちんとキュレーションされた作品が1〜2点でもロビー等に常設であれば、それは「札幌=アートのまち」という印象を残せると思うのだ。
500m美術館では、昨年の札幌国際芸術祭2017を振り返る展示がおこなされている。その内容は、ふたつある。ひとつは参加アーティストが描いたスケッチ、プランドローイング、 模型、作品の一部や作品制作の過程を紹介。もうひとつは、写真で、各会場の作品展示やプロジェクト、イベントなどを展示。芸術祭の先駆けとなった札幌ビエンナーレ・プレや札幌国際芸術祭2014のアーカイブ、北海道美術史年表なども展示されている。
本展示、札幌というまちの「芸術祭をやっていない」期間の素晴らしい広報活動だと思う。地下鉄構内にある本展示を道ゆく人がこれらを見て「今札幌はアートをがんばっているんだ」ということを一人でも多くわかってもらう機会だと思う。それは、次回の芸術祭の成功につながるカギになると思うのだ。
Text by メディアリサーチャー石 川 伸 一 (NUMERO DEUX)
「500m美術館がみた札幌国際芸術祭2017」
会期:会期 : 2017年11月3日(金)〜2018年1月16日(火)
会場:500m美術館(地下鉄大通駅と地下鉄東西線バスセンター前駅間の地下コンコース内)