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NEWS No.16078-6「伊庭靖子展 光の感触」

2016.12.25

伊庭靖子
NUMERO DEUX NEWS 16077-6アートなニュース

食べものとアートはどう消化するのか。
「存在」とはどこにあるのか?

まず、食べ物の話をしようか。忘年会、クリスマス…会食の機会が多い時期。宴会のテーブル。飲み物や食べ物は、口から入り身体で消化・吸収されていく。口から入るものは、誰にでも間違いない存在するもの。でも、そこから個人差が発生する。それは消化器官の能力。同じものでも、栄養としての吸収が違う。同じものを食べても、太る人も、変わらない人もいる。

では、アートの場合はどうだろうか? アートもほとんどは「存在する」(もしかしたら、存在しないアートというのもあるかもしれない。でも、それは少数だろう)。その多くは「目」から入ってくる。ギャラリーに行く。静かな館内に入る。目がアートは捉える。水晶体に写るものは、ほとんどみんな同じだろう。でも、そこから個人差が発生する。食べ物の場合は消化器官。アートの場合は「感性」といいたいところだが、実は違うと僕は考える。「考え方」だと思う。以下繰り返そう。

アートは「感性」だといわれる。まぁ、それは間違いでもない。でも、観る側にとって一番大事なのは「考え方」だと思う。目で捉えたものをどう考えるか。「美しい」「優しい」「きれい」これらの「感性」はもちろん正しい。しかし、その後の「考え」=「思考」がアートの鑑賞にとって大事。なぜなら、それが頭の中の栄養となる。「美しい」→「なぜ、美しいのか?」「優しい→なぜ、優しいのか?」 「きれい→なぜ、きれいなのか?」この自問自答がアート鑑賞の最大の問題であり、楽しみだと思う。「それは難しい?」アートというのは、シンプルであり、難しいものでもあるのだ。難しくてもいいじゃない。別に回答がわからなくても、いいのだから。路頭に迷うこともないし、誰かに怒られることもない。そして、正解のないところがアートの良いところだと思う。

伊庭靖子は、1967年・京都出身の美術家。その手法は、ソファ、食器、枕など身近なものを題材にする。それを自分で撮影し、写真と実物の両方をもとに平面作品を描く。最初の印象はスーパーリアリズム。しかし、写真と現物(過去と現在)。同じで異なる2つのモデルから描くことによって、なにか違う雰囲気が作品に生まれている。その「何かを」を感じとり、考えるのが楽しい。そして、描かれるモノの日常性も、わかりやすく心に届く。でも、作家の主観は深い。そこを考えるのが何とも楽しい。

ishikawa
Text by
アート・メディアライター  石 川 伸 一 (NUMERO DEUX)

 

会場のギャラリー柏は、北海道の代表的な菓子ブランド六花亭の札幌本店の中にある。六花亭は昔から、芸術・文化に関する活動や施設運営もしていて、札幌本店には本ギャラリーの他にもコンサートホールもある。2015年にオープンした札幌本店は、おいしいお菓子の販売店であり、同時に札幌の新たな文化や芸術の発信場所になっている。

「伊庭靖子展 光の感触」
会 期:2016/11/01(火) ~ 2017/02/12(日) 10:00~19:00
会 場:ギャラリー柏(北4条西6 六花亭札幌本店5階)
http://www.rokkatei.co.jp/

NEWS

NEWS No.16077-5「東京・リトルプレスのある風景(7)「NADiff A/P/A/R/T(ナディッフ アパート)」

2016.12.24

NADiff

NUMERO DEUX NEWS 16077-5 アートなニュース

表現は楽しい。小さくて大きい「紙メディアの世界」=リトルプレス
「NADiff A/P/A/R/T(ナディッフ アパート)」。
美術について考えさせる正統派のアートブックストア。

もう北海道は冬になってしまいました。雪が空を舞っています。
この記事は過ぎ去った夏の思い出の話です。

A.)いつもの前置き。 

リトルプレスとは…個人や団体が制作から流通までを手がける小さな出版物。Zine(ジーン)ともいう。少し前なら、インディマガジンとかさらに昔はミニコミ誌とか呼ばれる種類のものかもしれない。もっと昔ならズバリ「自主制作」という感じですね。歳がばれるなぁ。意味合いはいろいろ変わっていく。「リトルプレス」のニュアンスは、規模さえ小さければテーマは自由。取材記事等のある雑誌ふうのものから、個人のアート作品に近いものまで幅広く感じる。

2016年9月。まだまだ暑かった都内。リトルプレスをあつかう魅力的なお店を8つ訪れてみた。た。8回に分けて、ひとつひとつ紹介していきたいと思う。最後のひとつ前。7回目です。前置きはこのへんで。すすみましょう。

B.)これまでの記事について、そして今回!

これまでの復習。初回はジュンク堂池袋店について書いた。2回目は同じく大型書店の代官山蔦屋書店について触れた。2つの「大型書店」「未来」。その中でのリトルプレスという視点で続けてみた。3回目は、未来という部分を引き継いで今の書店のスタイルとして渋谷にあるユトレヒトを紹介した。4回目では「過去と未来」という視点で中野にあるタコシェを紹介。20年以上続いてるお店の魅力を書いた。そして、5回目では、リトルプレスを取り扱うだけではなく、様々な方法で「手助け」をする新しい形をもつお店MOUNT ZINEを紹介しました。それに続くように、クリエイターに優しげな視線をむけるお店ブックギャラリーポポタムを前回(6回目)紹介した。さて、今回は、恵比寿にあるNADiff A/P/A/R/Tである。ここのポイントは「今」を感じさせるアート書籍のある。本で勉強したくなる。空間でした。

C.)第7回目「NADiff A/P/A/R/T(ナディッフ アパート)」。

さて、まずまず場所なんですが。恵比寿駅から歩いて10分程度で、道のりは静か。歩いていても気持ちいい。でも、わかりづらい印象です。中通の奥のほうにあるので、ひっこんでいる。でも、対策としては、サイトにある地図をよく見ればいいかと思います。このリンクの地図が一番わかりやすいかと思いました。

さて、お店の印象としては、アート好きにはたまらない空間という感じです。書店ですが、地下にギャラリーも併設されています。本は写真関係の書籍が多いのが特長かと思います。リトルプレスという視点だと、今回本シリーズ記事の中では少なめです。でも、この空間にいると「なにか作りたく」なるような気持ちにまります。そして、そのヒントになる本や表現(ギャラリー)がそろっている。まとめると、正統派の「今」を感じさせるアート書店という印象でした。アートについて、もっと学ばないといけないな、という気持ちになりました。

…アート(クリエイティヴ)な表現には良く「感性」が大事という。それはもちろ、正しい。でも、忘れてはいけない。同じくらい大事なのが「過去から学ぶこと」。その方法としての「本」を読むことは大切にしたい…これを軽視してはいけない。NADiff A/P/A/R/Tに来ると、本で学ぶアートの大事さ(そして、楽しみ!)がわかる。

ishikawa
Text by
アート・メディアライター  石 川 伸 一 (NUMERO DEUX)

NADiff A/P/A/R/T(ナディッフ アパート)
東京都渋谷区恵比寿1-18-4
営業時間:12:00-20:00/無休

http://www.nadiff.com/

 

 

 

NEWS

NEWS No.16076-4「pass:age support surfaceの世界展」

2016.12.13

surpportsurface
NUMERO DEUX NEWS 1675-4 札幌のアートなニュース。

服の持つメディア性。
新しいステップを持った服。

映画「さらば青春の光」では、モッズとロッカーズが対立が描かれる。両者はファッションも違う。フード付きの軍用コートと革ジャンパー。つまり、服装が一番わかりやすく、彼らの立ち位置や思想を示している。そう考えると服装は「メディア」だと考えられる。この例だけではなく「ファッション」は常にメディアであった。最近はファッションは少し元気がない。ファストファッションは僕は否定はしない。でも、そこにはどうもメディア性が感じられない。今は、自分の立ち位置や思想は服装で示さなくても良くなった。なぜならSNSのアカウントを入手して、自分の好きなグループや仲間を「検索」すればいい。そこに服装のメディア性は不要。では、もう「メディア」としての服は成立しないのだろうか?

研壁宣男(すりかべ・のりお)はファッションデザイナー。1966年岐阜県生まれ。桑沢デザイン研究所卒業。在学中より受賞歴あり。イタリアに渡りミラノのセレクトショップ「10 CORSO COMO」にてオリジナルブランド“NN STUDIO”のチーフデザイナーを務める。その後も数々の活躍を経て1999年よりブランドsupport surfaceを立ち上げて国内外に展開をおこなっている。今回そのアイテムの展示がおこなわれた。北海道ではなかなか現物を見られない。貴重な機会だったと思う。

support surfaceの服を直にみる。魅力的なセンスに加えて、僕が感じたのは「優しさ」。それは、和と洋の服装の利点を活かした「着やすさ」を追求したデザイン。そこから伝わるものかもしれない。そう、服装の「新しいメディア性」が感じられた。鋭い、尖った個性というよりも、着る人のことを考え、確かなコンセプトから生まれたデザイン、そこからにじみ出る「優しさ」。その服を着る人への信頼感と安心感。僕は思う。これからの服は他者へのメディア性をもちつつ、着る人への気分にも影響(人生)を与える…そんな、服が昔からもっていた機能…でも、今どこか忘れがちなまところを、思い出させる服であって欲しい。それは(積極的に)「着てみたい!」という気持ちにさせる服が嬉しい。support surfaceにはそれがある。

Text by
アート・メディアライター 石 川 伸 一 (NUMERO DEUX)

「pass:age   support surfaceの世界展」
会 期:2016年10月20日(木)〜12月6日(火)11:00~19:00(最終日17:00)
会 場:グランビスタギャラリー サッポロ(北1西4 札幌グランドホテル1階ロビー内)
http://www.supportsurface.jp/

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