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NEWS

NEWS No.16069「磯優子展『祈りの細胞』」

2016.11.19

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NUMERO DEUX NEWS 1669 
札幌のアートなニュース。

「女性性」に関係して(いると思う)
僕が、ささやかに考えること。

僕のささやかな思考。社会の中で女性にはなぜだろう?、と考えさせることがある。ふとした瞬間に女性の、男性にはわかりにくいところを感じる。それは、問題だとか、困るとか、そういうネガティヴな話ではないよ。それは性別問題ではない。実際のそういったことは性別ではなく、個人の性格の問題だと僕はわかった。だから、そんなことは特に深く僕は考えたくはない。

僕が考えたいのは、男女間のもっと、軽やかに、そしてしっとりとした感触のある相違。結果としては、なんでもないけど、ちょっとしたプロセスの中で男女の相違。僕はそこに楽しく興味がある。最初はそれは何なのだろうと思った。最初は性別だとわからなかった。個性の問題なのか?いや、その人の職業なのか?と思考を進めるうちに、最後はそれは「性別ではないだろうか」という答にいきついた。そう考えるのが一番自然だったから。そんな、何気なく、そして深そうな男女の相違を僕は思考える。その体験は、記憶して、心にコレクションしていく。日々それは更新。僕はますます男女の、ちょっとした相違に興味を重ねていく。

磯優子(いそ ゆうこ)は1989年釧路生まれ・札幌在住。札幌大谷大学短期大学部 専攻科美術専攻 デザインコース修了。女性性をテーマにした作品を制作する。平面のデザインワークも行う。独自に研究を重ね、版画とCGの中間「グラフィック転写」という技法で作品を制作。女性10名の作家グループ文無商會スッテンテンに所属。多数のグループ展に参加。個展は今回で3回目となる。

本展示を見る。まず思ったのは先に書いた、僕が思う男女の相違について。そして、まず作品のひとつひとつが魅力的。アートとして美しいし、商業イラストでもビシッと使いたくなる格好よさ。ひとつひとつの線や色が、とてもなんとも気持ちが動く良さ。それを単に女性らしい、というところで簡単に理解してはいけない、そんな気がする。それは神を理解した、と思うごとくである。逆に、この線や色やフォルムはなぜ、女性らしさに表現として到達したのか?そんなことを深く深く考えたい。そして、CGを使った版画的技法。これは現代的でユニークで見どころになっている。

女性はデリケートな存在。センシティヴというよりデリケート。ただ、それは「男よりデリケート」という単純な比較論ではない。なぜなら、男性だってデリケートなところはある。女性の持つ多次元的な繊細を感じ取って、考えたい展覧会だと思った。本展示では、抽象的なグラフィックでありながら、非常に「生」の女性を感じ取ることができる。それは、ひとつの男女の相違の経験として、心にコレクションされていくだろう。本展示は、女性には特に共感を得られる内容だし、男性には女性を理解するために実にアート的でいい機会だと思う。足を運んでいただきたい。

Text by
アート・メディアライター 石 川 伸 一 (NUMERO DEUX)

「磯優子展『祈りの細胞』」
会期:2016年11月03日 ~ 2016年11月29日
平 日 12:00~24:00/日祝日 12:00~21:00 水曜定休
会場:CAFE ESQUISSE(カフェ エスキス)(北1条西23)

NEWS

NEWS No.16068「齋藤周展『合図』」

2016.11.16

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NUMERO DEUX NEWS 1668 
札幌のアートなニュース。

齋藤周が、表現に取り組んだ、
もうひとつの「合図」

 

週末。観光客で賑わう二条市場を通り抜ける。視界に入るもの。道路、信号、人、お店の看板。様々な情報にあふれる。クラークギャラリーを目指す。階段を登る。展示会場には齋藤周が在廊していた。話をしてみる。今回の展示は 前回から、1年ぶりだということだ。たしかにそうかもしれない。「発表ペースを決めているのですか?」と聞いてみると「決めている訳ではないが、年に一度はやりたい」という気持ちだそうだ。逆に発表したいときにやる、というスタイルは馴染まないらしい。それだと、できなくなりそうだと言う。なるほど。その気持ちはわかる感じはした。自由なクリエイティヴにも、なんらかの区切りは必要ということだろうか。また、齋藤周にとって展示とは、友人や知り合いに自分の今を知らせる意味もあるようだ。そう考えると1年に一度は良いスペースだと思う。

本展示のテーマは「合図」(=言葉以外の伝達手段)。この意味は一般的には、社会的に決められたもの。それは、生活や仕事をするうえで明確に決められたものである。例えば、陸上競技におけるピストル音。それはスタートの「合図」。しかし、この展示の合図はその意味とは異なる。齋藤周がみつけた合図とは、社会的決められていない、パーソナルのもの。例えば、仕事場でふと前から積み重なっていた書類が目に入って、それになにかをふと思う。それを何かの「合図」と感じとることである。

これも、僕も凄くわかる。意味としては「直感」のニュアスンスに近いが、先に書いた例にように「前から積み重なっていた書類」から、感じ取るという部分が純粋な直感とは異なる。なにかに「合図」をもらったのだ。このもうひとつの「合図」はなんだか難しい話のように思える。しかし、実はわたしたちみんなが、なにげない日常で体験している。この合図を軽く意識的に、時には無意識的に受け取って行動が決められる。そんなこともあるかと思う。僕たちの日々は理屈と社会的ルールだけで動いているいる訳ではない。

本展示の齋藤周が注目した、もうひとつの「合図」。それを視覚化した作品が展示されている。作品をみていると、なぜか僕は楽しい気分になった。その理由は、多分、この「合図」には自分に多く共感があり、それがアート作品となっているおもしろさ。そして、人が理屈や決められたルールだけで動いていない事実。そのことに僕は実にホッとする。齋藤周が描いた「合図」をあなたにも体験して欲しい。そして、明日の僕はどんな「合図」を受け取るだろう?

Text by
アート・メディアライター
石 川 伸 一 (NUMERO DEUX)

「齋藤周展『合図』」
会期:2016年11月4日~30日/11:00~19:00(月曜日・第三火曜日休廊)
会場:クラークギャラリー+SHIFT(南3東2 MUSEUM2階)

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NEWS No.16067「リトルプレスを読む 3冊目『安レトルトカレーの研究(1)』」

2016.11.10
安レトルト

NUMERO DEUX NEWS 16067アートなニュース

紙って、本とは何だろう?〜カレーへの飽くなき興味。

A.いつもの前書き

本の未来。それは、紙なのか、デジタルなのか。都市中心部も郊外の国道沿いにも大型書店ある。反面、スマートフォンや、デジタルパッドで急速に電子書籍の使いやすいサービスも登場していく。いったいどうなるのだろう? そんな一種の戦争状態の中で、静かなブームが紙のメディア「リトルプレス」(ジーン、ミニコミ誌、インディマガジンとも呼ばれる小規模出版物)である。

この現象は何なのだろう?リトルプレスというのは、ミニコミといった名称で1960年代くらいから現在まで続いている。それが、今あらためて注目を浴びるのは、印刷物の制作がコスト・技術的に容易になったこと。インターネットによって宣伝もやりやすい。そんなデジタルな発展が、電子書籍の登場と同時に、リトルプレスという小規模印刷物の発表にも優しくなったのはおもしろい。そしてデジタル情報に対して「紙」の持つアナログ感が、アート的な意味合いで注目を浴びているか。また、テーマも多様になったのも理由になっていると思う。

最近、本サイトにて、都内を中心にリトルプレスをお店を書いている連載記事を書いている。全7回を予定。現在まで5つのお店を紹介している。ジュンク堂池袋店  /  代官山蔦屋書店  / ユトレヒトタコシェ / MOUNT ZINE 。このあたりで、実際に魅力的なリトルプレスの紹介していこうかと思う。そういうことで、前回は札幌のススキノの鴨々川界隈を中心に、文化的なテーマを扱うBocketを紹介した。2回目は、札幌と京都をテーマにした北海道と京都と その界隈を紹介した。今回は、地域というテーマから変えて「レトルトカレー」を紹介するリトルプレスを紹介したいと思う。

B. 『安レトルトカレーの研究』を味わう。

 今回紹介するのは『安レトルトカレーの研究』。A5サイズ。40ページで一色印刷の小冊子。著者はパリッコ。この人物はサイトを見てみると、DJ・トラックメイカー/漫画家・イラストレーター/居酒屋ライターと多彩な活動をおこなっている。さて、本誌の内容は、タイトルで予想のとおり、レトルト・カレーの紹介本である。黄色の表紙まわりが可愛らしい。

カレーはすっかりわたしたちのお馴染みの料理。特に自宅で簡単につくれるレトルトカレーは、カップ(インスタント)ラーメンに並ぶ誰もが「あって良かった!」と心から思う食品だろう。本誌面では、レトルトカレー54種類を紹介。見開きで4商品。グラムやカロリー、辛み、甘み、スパイス感…等を★での4段階評価表。それと200文字前後のコメントが添えられている。文章は、筆者の言葉でズバズバ書かれている。商業誌とは違う文の味わいが気持ちいいし、実用的だ。

そして、誌面のカレーのパッケージは著者によるイラスト。これもいい味を出している。ページの合間にはコラム漫画もあってアクセント。リトルプレスというよりミニコミという呼び名がしっくりくる。ページ構成もよく考えられていて、凝ってはいないが好感のもてるデザイン、内容もすっと頭にはいってくる。1色印刷の潔さも僕は好き。

現在は凝った写真等、ビジュアルデザインに凝ったリトルプレスも多い。そういったものも、もちろん僕は好きだ。でも、本誌のようなシンプルに、でもキチンとした構成で作り上げるのも素敵だと思う。そしてテーマも実用的。リトルプレスとはいろいろ自由なクリエイティブがあるのがいい。そんなことをあらためて思い起こす小冊子だった。

日常の朝。仕事に行く時。「今日は忙しい。夜はレトルトカレーにしようか」と思う。仕事帰りにスーパーに行こうか。そんな時とりあえず本誌をバッグに放り込むのがいい。昼休みにでも読んで、ささやかなディナー選びをしてみよう。きっと楽しくページを開けると思う。これは素敵な楽しみだと思うし、リトルプレス特有の「モノ」感に優しさを感じるだろう。生活につながるリトルプレスだ。

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アート・メディアライター  石 川 伸 一 (NUMERO DEUX)

『安レトルトカレーの研究(1)』
¥500(税込)A5判・計44ページ
2014年7月6日発行
著者・編集・絵 パリッコ
http://www.lbt-web.com/paricco/

http://www.lbt-web.com/paricco/kenkyu_book_1/

http://paricco.thebase.in/items/629941


 

 

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