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NEWS No.16067「リトルプレスを読む 3冊目『安レトルトカレーの研究(1)』」

2016.11.10
安レトルト

NUMERO DEUX NEWS 16067アートなニュース

紙って、本とは何だろう?〜カレーへの飽くなき興味。

A.いつもの前書き

本の未来。それは、紙なのか、デジタルなのか。都市中心部も郊外の国道沿いにも大型書店ある。反面、スマートフォンや、デジタルパッドで急速に電子書籍の使いやすいサービスも登場していく。いったいどうなるのだろう? そんな一種の戦争状態の中で、静かなブームが紙のメディア「リトルプレス」(ジーン、ミニコミ誌、インディマガジンとも呼ばれる小規模出版物)である。

この現象は何なのだろう?リトルプレスというのは、ミニコミといった名称で1960年代くらいから現在まで続いている。それが、今あらためて注目を浴びるのは、印刷物の制作がコスト・技術的に容易になったこと。インターネットによって宣伝もやりやすい。そんなデジタルな発展が、電子書籍の登場と同時に、リトルプレスという小規模印刷物の発表にも優しくなったのはおもしろい。そしてデジタル情報に対して「紙」の持つアナログ感が、アート的な意味合いで注目を浴びているか。また、テーマも多様になったのも理由になっていると思う。

最近、本サイトにて、都内を中心にリトルプレスをお店を書いている連載記事を書いている。全7回を予定。現在まで5つのお店を紹介している。ジュンク堂池袋店  /  代官山蔦屋書店  / ユトレヒトタコシェ / MOUNT ZINE 。このあたりで、実際に魅力的なリトルプレスの紹介していこうかと思う。そういうことで、前回は札幌のススキノの鴨々川界隈を中心に、文化的なテーマを扱うBocketを紹介した。2回目は、札幌と京都をテーマにした北海道と京都と その界隈を紹介した。今回は、地域というテーマから変えて「レトルトカレー」を紹介するリトルプレスを紹介したいと思う。

B. 『安レトルトカレーの研究』を味わう。

 今回紹介するのは『安レトルトカレーの研究』。A5サイズ。40ページで一色印刷の小冊子。著者はパリッコ。この人物はサイトを見てみると、DJ・トラックメイカー/漫画家・イラストレーター/居酒屋ライターと多彩な活動をおこなっている。さて、本誌の内容は、タイトルで予想のとおり、レトルト・カレーの紹介本である。黄色の表紙まわりが可愛らしい。

カレーはすっかりわたしたちのお馴染みの料理。特に自宅で簡単につくれるレトルトカレーは、カップ(インスタント)ラーメンに並ぶ誰もが「あって良かった!」と心から思う食品だろう。本誌面では、レトルトカレー54種類を紹介。見開きで4商品。グラムやカロリー、辛み、甘み、スパイス感…等を★での4段階評価表。それと200文字前後のコメントが添えられている。文章は、筆者の言葉でズバズバ書かれている。商業誌とは違う文の味わいが気持ちいいし、実用的だ。

そして、誌面のカレーのパッケージは著者によるイラスト。これもいい味を出している。ページの合間にはコラム漫画もあってアクセント。リトルプレスというよりミニコミという呼び名がしっくりくる。ページ構成もよく考えられていて、凝ってはいないが好感のもてるデザイン、内容もすっと頭にはいってくる。1色印刷の潔さも僕は好き。

現在は凝った写真等、ビジュアルデザインに凝ったリトルプレスも多い。そういったものも、もちろん僕は好きだ。でも、本誌のようなシンプルに、でもキチンとした構成で作り上げるのも素敵だと思う。そしてテーマも実用的。リトルプレスとはいろいろ自由なクリエイティブがあるのがいい。そんなことをあらためて思い起こす小冊子だった。

日常の朝。仕事に行く時。「今日は忙しい。夜はレトルトカレーにしようか」と思う。仕事帰りにスーパーに行こうか。そんな時とりあえず本誌をバッグに放り込むのがいい。昼休みにでも読んで、ささやかなディナー選びをしてみよう。きっと楽しくページを開けると思う。これは素敵な楽しみだと思うし、リトルプレス特有の「モノ」感に優しさを感じるだろう。生活につながるリトルプレスだ。

安レトルト2

アート・メディアライター  石 川 伸 一 (NUMERO DEUX)

『安レトルトカレーの研究(1)』
¥500(税込)A5判・計44ページ
2014年7月6日発行
著者・編集・絵 パリッコ
http://www.lbt-web.com/paricco/

http://www.lbt-web.com/paricco/kenkyu_book_1/

http://paricco.thebase.in/items/629941


 

 

NEWS

NEWS No.16066「リトルプレスを読む 2冊目『北海道と京都と その界隈』(札幌)」

2016.11.06
Cwh5HW0UsAArrRv

NUMERO DEUX NEWS 16066アートなニュース

紙って、本とは何だろう?〜ポップはすごい。

A.いつもの前書き

本の未来。それは、紙なのか、デジタルなのか。都市中心部も郊外の国道沿いにも大型書店ある。反面、スマートフォンや、デジタルパッドで急速に電子書籍の使いやすいサービスも登場していく。いったいどうなるのだろう? そんな一種の戦争状態の中で、静かなブームが紙のメディア「リトルプレス」(ジーン、ミニコミ誌、インディマガジンとも呼ばれる小規模出版物)である。

この現象は何なのだろう?リトルプレスというのは、ミニコミといった名称で1960年代くらいから現在まで続いている。それが、今あらためて注目を浴びるのは、印刷物の制作がコスト・技術的に容易になったこと。インターネットによって宣伝もやりやすい。そんなデジタルな発展が、電子書籍の登場と同時に、リトルプレスという小規模印刷物の発表にも優しくなったのはおもしろい。そしてデジタル情報に対して「紙」の持つアナログ感が、アート的な意味合いで注目を浴びているか。また、テーマも多様になったのも理由になっていると思う。

最近、本サイトにて、都内を中心にリトルプレスをお店を書いている連載記事を書いている。全7回を予定。現在まで5つのお店を紹介している。ジュンク堂池袋店  /  代官山蔦屋書店  / ユトレヒトタコシェ / MOUNT ZINE 。このあたりで、実際に魅力的なリトルプレスの紹介していこうかと思う。そういうことで、前回は札幌のススキノの鴨々川界隈を中心に、文化的なテーマを扱うBocketを紹介した。今回は再び札幌発のリトルプレスを紹介したいと思う。

B. 「北海道と京都と その界隈」を読む

今回紹介するのは札幌発のリトルプレス「北海道と京都と その界隈」。本紙は、2016年4月に初号発行。現在3号まで発行されている。タブロイド判の新聞風のスタイル。僕はこうしたカタチも好き。綴じものとは違った味わいがある。小脇に抱えて街を歩いて、空き時間に楽しみに読みたい気分になる。多少かさばっても気にならない。

さて、その内容は、京都と北海道をテーマにしたもの。なんとも、不思議な距離感。制作している2人の人物が、これら地域に縁があり、観光地という共通点もある。だから、作ってみた、という感じでらしい。こういう気軽な理由もリトルプレスのいいところ。そのためか、内容も軽くを目を通したところ、観光ガイドとも、固い文化的考察とも違った印象を受ける。でも、違うのだ。続けよう。

内容は、酒器のお店の取材記事、朝ごはんについて、ドライブインのレポート、その他ちいさな記事も散りばめられている。繰り返そう。その記事も観光ガイドとも文化的考察とも違うように思える。でも、よく読んでみるとわかった。どの記事もガイドであり考察なのだ。ただ、すこしやり方が違うだけ。そこに本紙の美しいクリエイティブがあると感じる。そして、記事ひとつひとつの完成度の高さ。入り口。タイトルまわりからポップに思わせる。でも、しっかり読み込むとテキストのヴィジュアルのデザインも、読み手を「いいものいただきました」という気分にさせてくれる。プロのお仕事を感じた。入手したのは代官山蔦屋。その空間にも似合っていた。ポップなのも味。

アート・メディアライター  石 川 伸 一 (NUMERO DEUX)

『北海道と京都と その界隈』
編集・発行:畠山尚デザイン制作室
タブロイド判 / 16P
https://www.facebook.com/sonokaiwai/

 

 

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NEWS No.16065「リトルプレスを読む 1冊目『Bocket』(札幌)」

2016.11.03
bocket

NUMERO DEUX NEWS 16065アートなニュース

紙って、本とは何だろう?

本の未来。それは、紙なのか、デジタルなのか。都市中心部も郊外の国道沿いにも大型書店ある。反面、スマートフォンや、デジタルパッドで急速に電子書籍の使いやすいサービスも登場していく。いったいどうなるのだろう? そんな一種の戦争状態の中で、静かなブームが紙のメディア「リトルプレス」(ジーン、ミニコミ誌、インディマガジンとも呼ばれる小規模出版物)である。

この現象は何なのだろう?リトルプレスというのは、ミニコミといった名称で1960年代くらいから現在まで続いている。それが、今あらためて注目を浴びるのは、印刷物の制作がコスト・技術的に容易になったこと。インターネットによって宣伝もやりやすい。そんなデジタルな発展が、電子書籍の登場と同時に、リトルプレスという小規模印刷物の発表にも優しくなったのはおもしろい。そしてデジタル情報に対して「紙」の持つアナログ感が、アート的な意味合いで注目を浴びているか。また、テーマも多様になったのも理由になっていると思う。

最近、本サイトにて、都内を中心にリトルプレスをお店を書いている連載記事を書いている。全7回を予定。現在まで5つのお店を紹介している。ジュンク堂池袋店  /  代官山蔦屋書店  / ユトレヒトタコシェ / MOUNT ZINE 。このあたりで、実際に魅力的なリトルプレスの紹介していこうかと思う。今回紹介するのは札幌発のリトルプレス「Bocket」である。

「Bocket」は、2014年に創刊。発刊は年刊。札幌のすすきのにあるお寺で開催される、日本文化体験イベント「鴨々川ノスタルジア」の公式ムック本(雑誌と書籍をあわせた性格を持つ刊行物)である。

内容は札幌のすすきの、鴨々川周辺をテーマにした「まち」を取り上げる。といってもタウン情報誌というより、文化的な考察をしている書籍に近い。活字も多く読み応えがある。デザインは堅苦しくなく、ポップすぎずいいバランスだと思う。お年を召した方にも手に取りやすい。発行人はすすきにある元芸者置屋を改装したギャラリースペース「鴨々堂」の石川圭子。編集長は札幌在住の歌人山田航である。

自分にとって、すすきのと、その周辺は「北海道最大の歓楽街」というイメージだけが強烈で、そこで止まっているように感じる。でも、そこにはお店には文化があり、あるのはお店だけではない。そんな地域に対する愛と人間らしさが感じられるリトルプレスだと思う。

最新号の3号の特集は「神社」。中島公園〜山鼻エリアにある神社を紹介。神社の基礎知識といった記事もためになる。ほかにも、札幌の競馬史、札幌在住の作家による「薄野怪談」という2ページほどのショートショート作品もおもしろい。今後も文化や人に焦点をあてて、あえて「紙」という手触りを持って発行していって欲しい。

Text by
アート・メディアライター  石 川 伸 一 (NUMERO DEUX)

『Bocket』
http://kamokamogawa-nostalgia.net/bocket/

 

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