ARCHIVES / ARTICLE

NEWS

NEWS No.16062「東京・リトルプレスのある風景(3)ユトレヒト 」

2016.10.22
ユトレヒト

NUMERO DEUX NEWS 16062 アートなニュース


表現は楽しい。小さくて大きい「紙メディアの世界」=リトルプレス
リトルプレス、今と未来。そして、書店の未来。

A.)連載の(お約束の)イントロダクション

リトルプレスとは…個人や団体が制作から流通までを手がける小さな出版物。Zine(ジーン)ともいう。少し前なら、インディマガジンとかさらに昔はミニコミ誌とか呼ばれる種類のものかもしれない。もっと昔ならズバリ「自主制作」という感じですね。歳がばれるなぁ。意味合いはいろいろ変わっていく。「リトルプレス」のニュアンスは、規模さえ小さければテーマは自由。取材記事等のある雑誌ふうのものから、個人のアート作品に近いものまで幅広く感じる。

2016年9月。まだまだ暑かった都内。リトルプレスをあつかう魅力的なお店を7つ訪れてみました。今後、7回に分けて、ひとつひとつ紹介していきたいと思う。いよいよ(?)3回目。

B.)第3回目 「ユトレヒト」のもっている3つの「書店の未来」

初回はジュンク堂池袋店について書いた。2回目は同じく大型書店の代官山蔦屋書店について触れた。大型書店の「未来」。その中でのリトルプレスという視点で続けてみた。今回紹介するお店は大型店舗ではない。でも「書店の未来」というキーワードは引き継いで考えたい。今回紹介するのは、渋谷にある「ユトレヒト」である。

まず立地。最寄り駅のひとつが渋谷駅。人でいっぱい。この人の数も慣れるのだろうか、と思う。そうなった時、良くも悪くも自分は変わるのだろう。続けよう「渋谷駅」「原宿・明治神宮前駅」「表参道駅」から10分程度。住宅街の中にあるので、ややわかりにくい。でもウェブサイトには地図だけではなく、実際の道のりを写真で細かく説明されている。これをスマートフォン片手に見ていけば、たどり着けると思う。こうしたウェブの機能やスマートフォンの存在を生かした点は、立地の不利、というハードルを下げる。こんな点も「未来の書店」の必要要素。ウェブのデザインのセンスもよく、わかりやすい。自然にテクノロジーとつながってる。そこで感じるのが

→「未来の書店1=ネット等テクノロジーの自然な活用」。

「ユトレヒト」は、一般書店では、なかなかない国内外のアート、デザイン、ファッション関連書籍を中心に取り扱っている。その中にはリトルプレスも含まれている。書籍の販売のほかにも、インテリア・アパレルショップに置かれる本の選定やシェアオフィス等各種施設における設置する本の提案、アートブックフェア『THE TOKYO ART BOOK FAIR』の共同開催もおこなっている。つまり、本をキーワードに積極的に店外にビジネスを展開。これからの本屋さんは、外に出かける本屋さんじゃないとダメだと思う。

→「未来2=本売り場でお客さんを待つ、だけではない経営」

「ユトレヒト」は古い集合物件の中にある。その一室がシンプルに趣味良くリフォームされている。店内は明るく、そして、空間が多い。従来の書店は背の高さくらいある本棚を可能な限り壁面なり、フロアに設置するのが基本だったと思う。しかし、この書店は本の他にも空間を作っているる。例えば壁面はギャラリースペースになっている。その展示を観に来た人が、交流をしている風景がみられた。おしゃべりできる書店。リアルな出会いの場になる空間。そこに人があつまる。

→「未来3=居心地よく、コミニュケーションと出会いのある空間」

E.)エンディング本屋さんは、昔は本を売っていれば良かった。売れるものも大手出版者やメディアによりあらかじめ用意されていた。お客さんが来るのをただ待っていれば良かった。委託販売という低リスクもあった。しかし、今はネットだけの書店、電子書籍にその地位を簡単に奪われる自体となった。そうなった時、本屋さんは、本を売るのではなく人と人をつなげる「本という文化」を売らないといけない場所になったと思う。そうなった時、リトルプレスというひとつのジャンルは、有力に入り込む余地ができた。なぜなら、リトルプレスほど、本を「文化」として感じさせるものもないからだ。

ishikawa
Text by
アート・メディアライター 石 川 伸 一 (NUMERO DEUX)

ユトレヒト
所在地:東京都渋谷区神宮前5-36-6 ケーリーマンション2C
営業時間 12:00-20:00
月曜日休み(祝日の場合は翌日)

NEWS

NEWS No.16061「東京・リトルプレスのある風景(2)代官山蔦屋書店 」

2016.10.20
代官山ツタヤ
Photo by 淳平 筈井
NUMERO DEUX NEWS 16061 アートなニュース

表現は楽しい。小さくて大きい「紙メディアの世界」=リトルプレス
代官山蔦屋書店=新しい本屋さんに馴染むリトルプレスたち。

A.)連載のイントロダクション

リトルプレスとは…個人や団体が制作から流通までを手がける小さな出版物。Zine(ジーン)ともいう。少し前なら、インディマガジンとかさらに昔はミニコミ誌とか呼ばれる種類のものかもしれない。もっと昔ならズバリ「自主制作」という感じですね。歳がばれるなぁ。意味合いはいろいろ変わっていく。「リトルプレス」のニュアンスは、規模さえ小さければテーマは自由。取材記事等のある雑誌ふうのものから、個人のアート作品に近いものまで幅広く感じる。

2016年9月。まだまだ暑かった都内。リトルプレスをあつかう魅力的なお店を7つ訪れてみました。今後、7回に分けて、ひとつひとつ紹介していきたいと思う。今回は2回目。

B.)2回目 代官山蔦屋書店を考える

前回はジュンク堂池袋店について記事を書いてみた。
今回は代官山蔦屋書店について。2回続けて大規模系のお店にしたいと思う。そこでリトルプレスの品揃えも含めて、ジュンク堂との比較もしてみる。

まず、立地ですが駅から10分以内。代官山の便利な場所かと思う。このツタヤはいわゆる「オシャレツタヤ」(僕定義)。通常の「TUTAYA」のようにわりと普通の書店にDVD,CDレンタルがある、という形態とは異なる。代官山蔦屋書店は代官山T-SITEとも呼ばれ、アート系の専門書等も充実。CDやDVDだけではなく、カフェやほか専門店も併設され「本、映画、音楽を通してライフスタイルを提案すること」というコンセプトショップ(僕の定義:いろんなものがオシャレにあるお店+カフェあり)である。

本の割合が多いものの、その他アート、カルチャー的なアイテムも充実していて「なにか、おもしろいものを見に来てみよう」という知的好奇心を満足させる空間になっている。店舗自体のスタイリッシュな雰囲気、レイアウトもそんな気分を盛り上げると思う。

C.)唯一の欠点?というか違いのニーズ。

本書店の欠点をいえば「純粋な本好き」には、この空間のこだわりは余計だと感じる人もいるかもしれない。加えて書店ではあるけど本以外のものも取り扱う結果、書籍の絶対量が少ないと思う。ただ、それに不満を感じる人は、前回紹介した、ジュンク堂書店のような大型書店に足をは運べばいいと思う。その点はユーザーの好み(気分)の問題であり、目的の問題だと思う。優劣はつけられない。

ジュンク堂書店は時代の流れも意識しつつも、基本はわかりやすい「大型書店」というつくりにこだわっていると思う。つまり、まず優先順位は多様なニーズに答えるために、圧倒的な品揃え。それを効率よく、探しやすい無駄のないレイアウト。あるのは図書館のような雰囲気で、それを愛する本好きは多いと思う。その中のリトルプレスは、こういった書店ファンに向けた読み物中心の本が揃えられていた。対して、代官山蔦屋書店は、本を中心にしつつ、ライフスタイル全体を提案するお店になっています。生活を楽しくするヒントがたくさんある空間。そして、お茶も楽しめる。そんなお店では、リトルプレスの取り扱いもジュンク堂書店とは異なっていた。

D.)代官山蔦屋書店のリトルプレスについて

さて、今回の代官山蔦屋書店でのリトルプレスは、アート系だったり、デザインにこだわったものが多い。リトルプレスの専門コーナーはなく、海外ファッション、アート雑誌、国内アート書籍のコーナーあたりに並べてある感じである。この点は大変興味深い。「読み物」系のリトルプレスが充実していたジュンク堂に対して、蔦屋書店では「アート、デザイン系」が目立った。これは、ジュンク堂は正統派の本屋さんとして、活字が中心の内容的に「書籍」に近いリトルプレスを中心に取り扱っていたに対して、代官山蔦屋書店では、活字よりビジュアルを重視した品揃えだと感じた。同じ大型書店でも、お店に並べるリトルプレスに違いがあるのは大変興味深い。これは、2つの書店のコンセプトの違いが、取り扱うリトルプレスの違いにも反映されている。

E.)エンディング

本屋さんに求められる多様なニーズ。そんな時代の流れの中で「リトルプレス」も、有力な「商品」として、大型書店でも注目されている。これはリトルプレスによって、大きなチャンスだといえるが、同時にビジネスという点では試練だともいえるだろう。

ishikawa
Text by
アート・メディアライター 石 川 伸 一 (NUMERO DEUX)

代官山蔦屋書店
所在地:渋谷区猿楽町17-5
1F:朝7時~深夜2時、2F:朝9時~深夜2時
東急東横線「代官山駅」より徒歩5分

NEWS

NEWS No.16060「東京・リトルプレスのある風景(1)ジュンク堂池袋店 」

2016.10.17

池袋ジュンク堂
Photo by Yusuke Morimoto
NUMERO DEUX NEWS 16060 
アートなニュース。

表現は楽しい。小さくて大きい「紙メディアの世界」=リトルプレス
ジュンク堂書店 池袋店=大型書店とリトルプレスの「交際」

リトルプレスとは…個人や団体が制作から流通までを手がける小さな出版物。Zine(ジーン)ともいう。少し前なら、インディマガジンとかさらに昔はミニコミ誌とか呼ばれる種類のものかもしれない。もっと昔ならズバリ「自主制作」という感じですね。歳がばれるなぁ。意味合いはいろいろ変わっていく。「リトルプレス」のニュアンスは、規模さえ小さければテーマは自由。取材記事等のある雑誌ふうのものから、個人のアート作品に近いものまで幅広く感じる。

2016年9月。まだまだ暑かった都内。リトルプレスをあつかう魅力的なお店を7つ訪れてみました。今後、7回に分けて、ひとつひとつ紹介していきたいと思う。

その1はジュンク堂池袋店。名前のとおり場所は池袋。駅から5分程度のいい場所。ご存知のとおり、この書店は札幌でも中心部にある大型書店。紹介する池袋店も9階建でで、すべて書籍という本好きにはたまらない空間。平日の22時まで開店しているのは仕事帰りにも利用しやすく、毎日のように本を見にくる人もいるかと思う。

なんといっても9階建てですから、見るところはたくさん。「今日は、9階のアートコーナーを覗いていみようかな」という楽しみ方もありかと思う。さて、僕は思うのはこんな全国展開の大型書店が、大きく「リトルプレス」を取り扱うというところに、凄く時代の変化を感じる。それも上階の本棚の片隅ではありません。1階の入口から近い平積みもある専用コーナー。この事実は本当に驚く。何が起きたのか。

本屋さんの入口そばといえば激戦区。本屋さんとしては「一番売りたい本」「売れる本」を置きたいところでしょう。その一部になぜリトルプレスなのか。ここで、考えるのは、ジュンク堂池袋店は、ルトルプレスという名称も知らない人にもむけても、売ろうと考えている、ということ。そんなジャンルにこだわることなく「おもしろい本がありますよ」という戦略でコーナーを用意しているのではないか。これは、単なるリトルプレスの取扱店ではなく「リトルプレスという楽しみ」を貴重な店舗スペースを使用して「提案」していることがわかる。これはひと昔前の大型書店なら、考えられなかった。

話はすこしそれますが、僕はこれには「ブログ」という存在の一般化も少し関係していると思う。なぜかといえば、今はブログの書籍化というのもひとつの大きなジャンルになっている。ブログをやっている人というのは、プロではなかったり、小規模でやっている人が多いかと思う。でも、お客さんは今はプロかアマかなんて関係なく手にとって買っていく。昔は素人の本というのは売りにくかった。でも、今はブログの書籍化のように素人だったり、無名だった人の本がベストセラーになる可能性が凄くある。その影響も受けて、リトルプレスも注目をされているのではないかと思う。それに、今は印刷物制作のハードルも、パソコンのソフトの普及や、利用しやすくローコストなネットの印刷業者の存在も見逃せないと思う。

さて、本書店のリトルプレスの品揃えも、特定の傾向があると感じた。それはアート的なビジュアル中心ではなくて、誰もが興味をもちやすい、生活、仕事、趣味に関した雑誌、読み物ふう品揃えは多い。このあたりが、老舗の大型本屋さんのセレクトだなという感じがする。アートやサブ・カルチャー好きのお客さんというよりも「本好き」のお客さんをターゲットにしていると思う。ジュンク堂池袋店さんにはリトルプレスの未来、そして「書店」の未来を見たような感じがした。リトルプレスと大型書店が手をつなぐ。素敵なことだ。

Text by
アート・メディアライター 石 川 伸 一 (NUMERO DEUX)

ジュンク堂池袋店
所在地:東京都豊島区南池袋2-15-5
JR池袋駅/東武東上線池袋駅 東口より徒歩約5分
東京メトロ有楽町線/副都心線/丸ノ内線池袋駅 39番出口より徒歩約5分
西武池袋線池袋駅 西武南口より徒歩約2分

«...10...676869...80...»
ARTICLE

CATEGORY

LATEST ENTRIES

ARCHIVES

CLASSIC CONTENTS

website design by shie sato

SAPPORO ART & DESIGN MAGAZINE NUMERO DEUX 札幌 アート&デザインマガジン ニュメロデュー

copyright @ NUMERO DEUX allrights reserved.
top