本続編は、クローネンバーグ監督作品ではない。それだけで、興味が持てなくて観てなかった。でも、まぁ今回観てみた。結論からいうと、これはやはり前作の「ザ・フライ」も観ておかないと、つらいかなぁという作品。なんというか、前作の「おまけ」というか、そんな程度の作品ではないかなぁ。もちろん、僕の個人的な見解であります。
「おまけ」といっても、それはヒドイとはイコールではありませんよ。「おまけ」(本作)にも良さはある。でも、それは本体(前作)があってのこと。
本作には、クロネーンバーグ印の狂気や、せつないラブ・ロマンスも、考えさせるラストもありません。まったくない訳ではなくて、なんかうっすいーい感じであります。とりあえず、主人公は息子だけど父には似ておりません。あの父(ジェフ・ゴールドブラム)のくっどい顔がいいのにね。普通のインテリぼっちゃんになっております。んで、可愛らしいガールフレンドもできて、そして、前作同様の悲劇話に流れていきます。
なんというか、本作の制作側は前作を超えようとか、新しいものを見せようという気がほとんど感じられない。オリジナル(ハエ男の恐怖)の続編(ハエ男の逆襲)にならって、という言い訳も用意している。別にこれら悪いことではなくて、結果として新しい試みが失敗するより「前作にならって、こんな感じで」というのが本作だと思う。だから、まぁまとまりはあるし、流れは悪くない。ハエ男のクリーチャーの動きも当時としては、かなりよくできてる。芸術性をあきらめ、そんなハッタリに力点を置いているのは好感がもてる。少なくても、ラストまで退屈はさせない職人魂は感じる。ただ、ラストのメッセージ性は前作とのハッキリした差を感じた。前作の良さを思い出した。
Text by
アート・メディアライター 石 川 伸 一 (NUMERO DEUX)