美術史の字間 No.001-8「フラ・アンジェリコ 受胎告知(1438-45年頃) 」

2017.12.31

フラアンジェリコ受胎告知

現代美術が好きな僕の美術史の話。

僕は美術のどのへんが好きか?と聞かれれば「このへん」と自分から半径3メートルくらいを指しそうな人間です。つまり、現代美術が好きなのです。ただ、その意味はだんだん変わってきています。昔は現代美術「だけ」が好きでした。でも、今は美術の中で、「絞るなら現代美術」が好きという感じになってます。美術全体に興味が向いてきてます。そこで、本記事では美術史をテーマに僕の好きな作品を紹介していこうと思います。今回の作品は「フラ・アンジェリコ 受胎告知」という作品です。

まず、本作品をめぐる、おおまかな状況を説明します。この時期の美術作品は「宗教の教え」についての最大の「メディア」でした。これらは今の新聞、TV、ネットのように「政治」や「生き方」について人々に物語るものでした。

この時期にはたくさん(というかほとんど全部)の宗教画の中で、本作が好きなのは、なんともスッキリとした構図に、かわいらしいとも感じる人物の描き方。とても500年前のとは思えない洗練された印象です。この作品がつくられた時期が、いわゆる「ルネサンス」時代。それ以前の中世美術の「閉塞感」を打ち破る作品になっています。

まぁ、なんというか美術史は一定の周期で「古典文化」(ギリシャ、ローマ時代)を再評価しよう!という時代があり、それに当時の新しい要素を加わってシーンが活性化するということが繰り返されています。本作も「受胎告知」(天使からキリストの母マリアにイエスの妊娠を告げられる)というキリスト教の基本テーマに、新しい視点を加えて描かれた作品かと思います。

ルネサンスのテーマは「人間性の回復」。それが多数の作家が、さまざまな技法でそれを描いています。本作もそのひとつであり、一見人間味には乏しい印象があります。しかし、ストイックに表現を進めて行って、作品全体の細部を記号化して、観るものに語りけかけている。そこには現代に通じるデザイン性があると僕は思うのです。

ishikawa

Text by  メディアリサーチャー石 川 伸 一 (NUMERO DEUX)


 

 


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