「ハイ・ライズ」(2016)
集合住宅といわれる
マンションは 何の集合なのか?
原作ファンからの「「ハイ・ライズ」」感想。
僕は団地生まれであり、団地育ち。自立してからも賃貸マンションくらし。
多くの時間を集合住宅の中でくらしてきた。
そこに僕の居心地はある。仕事帰りに見えるのは、いくつかの部屋
他人のプライバシーに興味を持つ気はないが、
それでも隣人の動きはなんとなく自分の中に入ってくる。
自然の見えることで考えてしまう。つくられる集合の意識。
本作は原作のJ・G・バラードの原作を読んでるファンか、
そうでないか、であるかで大分変わってくるかと思う。
僕はファンである。
その立場の感想だと、バラードの原作をほどほど
うまく映像化していると思う。ほどほど、と書くと偉そうで
恐縮だが、そもそも小説の映画というのは大変難しい。
原作の忠実な再現というのは無理なもので、そうでなくてもいい
だから、イメージとして違和感がない、というポイントだと思う。
その点は本映像化は悪くない。ミッドセンチュリーに歪んだ空虚な
味を加えたマンションのセットは見応えはあった。
ストーリーはわかりにくいが、イメージの方向は正しい。
あと、キャスティング。
正直、主人公役のトム・ヒドルストンは、僕は原作イメージじゃない。
カッコ良すぎ。ただ、映像化を考えた時に絵になっているので、
この配役は悪くないと思う。ワイルダー、ロイヤルの配役は
かなりイメージどおり。ヒドルストンの起用はあえて、
メジャーな色気が欲しかったのかな、と思う。それはありだと思う。
ロイヤルのジェレミーアイアンズは、初見からハマリ役だと思った。
でも、映画の中では生かしきれてない感じがした。それはヒドルストン
以外、そう思う。そう、本作はヒドルストンの映画なのである。
彼は終始、戸惑い、裸になる。傍観者。革命家ではない。
マンションに住むことは、集合になることである。
僕は、それに今は不満はない。思い出してみると、
以前、住んでいた場所では不満のある時もあった。
その時、いろいろな話し合いがおこなった。問題はシンプルなのであった。
でも、賃貸の集合住宅では、シンプルな問題もいろいろな人間関係性の中で、
解決を図ることになった。
「ハイ・ライズ」を見るとそういったことを思い出した。
Text by アート/メディア リサーチャー 石 川 伸 一 (NUMERO DEUX)