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2016.8.11 映画の琴(コト)『 アイズ ワイド シャット 』

2016.08.11

eyes

『 アイズ ワイド シャット 』(1999年)

僕がキューブリックの作品で、一番好きなのが本作。少し変わっているかもしれない。でも、素直な自分の印象。理由としては話がわかりやすい(監督の真意を理解しているかは別だけど)。

話は主人公(トム・クルーズ)は妻(ニコール・キッドマン)と喧嘩をする。その最中、仕事で夜に家を出る。それが終わっても家に帰りたくない。妻のことがあるから。しかたがなく、夜の街をぶらぶらする。売春婦の誘いにのってみたり(でも、しない)、旧友が演奏しているジャズ・バーに行ってみたり。

そこから、奇妙で危険な香りのするパーティを知る。そして自らの意思で足を踏み入れることになる…本作のトムはミッション・インポッシブルとは異なり弱々しい。社会的地位はあるし、笑顔は相変わらず素敵だけど弱い男。

「夜の街」「弱々しい男」。この2つの要素だけで、僕は好きになる。そんな設定の主役が「余計なことに首を突っ込む」ということが映画的エンターティメントになっていて好奇心をそそる。ありがちな話ともいえるけど、どんなシーンでもキューブリックの映像美で退屈しない。さりげないシーンが本当にいい。

主役の2人の起用は賛否両論だとは思うけど、メジャー感の強い2人の役者によって、作品を最後で魅せる力になっていると思う。もやもやした作品であるるけど、僕も現実では実に「もやもや」としている「弱い男」である。そこに共感し、好きになった。

90点(お役にたったらシェア願います)

Text by
アート・メディアライター 石 川 伸 一 (NUMERO DEUX)

毎日の字間

2016.7.17映画の琴(コト)『オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分 』

2016.07.17

オンザハイウェイ
『オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分 』(2013年)

僕は限定された状況の映画が好きです。それによって、よりリアルに感じられるから。スリルも増加。本作はそんな映画です。ほぼ全編、主人公(トム・ハーディ)はある目的のために高速道路をひとりで運転している(そして、その目的のために家族も仕事も失うかもしれない)。それだけの一晩を描いた映画。しかも夜。風景もわからない。他者との出会いもない。カメラはただ運転する主人公の横顔を写し続ける。変化があるとすれば、それは職場と家族との電話のやりとりのみ。絶望への逃避行。

本作は、主人公の性格と、一直線の夜の高速道路=主人公の人生というメタファーの部分をうまく重ねている。そのアーティステックな部分はとっても好き。でも、物足りない部分がある。たぶん、本作の唯一の主人公の電話をとおした「会話」が物足りない。ただ、主人公は電話はするが、心の底では、コミニュケーションに期待していないような気もするし、内容を問わずに過剰に期待しているような気もする。「きっと、すべてうまくいく」と。

本作の深みを感じさせる部分が主人公の「頑な」な部分であり、それを美意識として、理解できるか、できないかかで評価の別れるところだと思う。僕は主人公には共感はできない。だけど、壊れた美意識は感じられる。考えてみれば、リアルな社会で発揮できる美意識なんて、みんな壊れているのかもしれない。

70点(お役にたったらシェア願います)

Text by
アート・メディアライター 石 川 伸 一 (NUMERO DEUX)

毎日の字間

2016.7.17映画の琴(コト)『ピエロがお前を嘲笑う』

2016.07.17

ピエロ
『ピエロがお前を嘲笑う』(2014年)

はじまりは取調室。逮捕された主人公の証言から過去が語られる。冴えない青年がハッカー犯罪集団の仲間に入り、悪事を重ねて行く。犯罪サスペンス作品で冒頭に現在があり「語られる」という構造「ユージュアル・サスペクツ」と通じる。これはとっても興味深い。なぜなら、オチに自信がないとできない仕組みですから。なので、あまり本編に触れるのは野暮かもしれない。あとを観てのお楽しみ。ここで書くとすれば、こうしたハッカー映画では、インターネットの世界(サイバースペース)をどう描くのか?という、ところが僕は興味があった。本作では、一見したところ、なんか人がいっぱいな満員電車(?)みたいな描写。多分イメージ的にはクラブ的な雰囲気で、それはそれで良かったです。また、本作はドイツ映画であり、あまり観る機会もないので「ドイツの若者って、こんな感じなんだなー」というのもおもしろかった。そことラストを含めて考えると、本作は「青春映画」といってもいいかもしれませんね。そこが、「ユージュアル・サスペクツ」とは凄く違う。

 80点(お役にたったらシェア願います)

Text by
アート・メディアライター 石 川 伸 一 (NUMERO DEUX)

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