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2016.5.21 映画の琴(コト)『マイ・インターン』

2016.05.22

myintern
『マイ・インターン』(2015年)

デニーロに命令するハサウェイなんて、
まるでアメコミの世界だろう??

興味はあった。でも、観てなかった。僕は主役の2人は好きなのである。では、なぜ観なかったのか。それは、劇中で「社長」のアン・ハサウェイは嫌だったし「定年退職後にインターン」のロバート・デニーロなんて、もっと観たくなかった。ハサウェイといえば、一生懸命な下積みな感じ。そういう役柄がいい。それがいきなり「社長さん」では、もう楽しむ部分がないじゃないか。そうです、僕は「プラダを着た悪魔」を引きずっています。認めます。次にデニーロといえば犯罪者か刑事か、特殊工作員(または、社会不適合者)に決まっている。それ以外に選択肢等ない。銃を持たないデニーロ。逃げない、追わないデニーロ。それはダメ。絶対にこの映画はうまくいってない。

デニーロに命令するハサウェイなんで、まるでアメコミの世界だろう??だから、観ないと思ったけど、観る事にした。この2人に別れをつげるために!さようならタクシードライバー!

ところが、びっくりするほど本作悪くないのである。奇跡のバランスの暖かいお話。すいません、好きです本作。正直、作品として薄い。ただ、薄っぺらにはならず「薄味」に上品に仕上げた感じなのである。サジ加減の絶妙さ。「そんなにうまくいかないよ」という話なんだけど、そこを観る側にファンタジーとしてうまく納得させているのがうまい。

キャラから説明していくと、ハサウェイは社長であるが、最高経営責任者交代に怯え、家庭不安もあり、子供の幼稚園でも孤独…ああ、いいと思う。この不安定感。弱々しさ。でも、仕事はひたすら一生懸命。いいじゃん。実によろしい。デニーロといえば品良く、でも気取らない「おじさん」。職場の若者に囲まれて、あっという間に人気者。そこがなんともスッと納得できるのがこの人のうまさなんでしょうね。ある意味、鼻につく過剰な演技であるのだけど、少しに時間であっという間に観る側をなっとくさせてしまう。そして、その行動は正しい。

2人のキャラクターの実に「気持ちのいい」の部分をクローズアップして、話を進行させている。正直、二人の関係性は芝居じみている、芝居だからしかたがないか。そうだ、これは芝居なのだ。映像もフレッシュで健康的な明るさ満ちている。本作では、唯一不法侵入なアクションシーンがある。その時のデニーロ立ち回りはさすがな感じがした。今観ているのはマイケル・マンの「ヒート」だったかな?と思ったくらい(嘘ですけどね。でもデニーロカッコ良かった)。

ラストのシーンでは、デニーロはもはや、ハサウェイのグル(師匠)なのかもしれない。ありえない話なんだけ、2人の魅力と薄味の品の良いシナリオによって「こんな会社ないよ!」ではなく「素直にいい話だなー」と思える。現実は厳しい。でも、ファンタジーを信じないと、僕達は生きていけない。そして、本作は実に良質の表現をみせてくれる。90点。

▼ 石川  伸一(NUMERO DEUX)

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2016.5.18 映画の琴(コト)『フォーカス』

2016.05.21

『フォーカス』(2014年)

ウィル・スミスは、
「気のいい、おにいちゃん」に戻れないのか。

ウィル・スミス。もうハリウッドのベテランクラスの俳優だと思う。でも、僕の中では「インディペンデンス・ディ」(1996年)、「メン・イン・ザ・ブラック」(1997年)の印象が強い。それは「気のいい、おにいちゃん」というキャラクターである。僕はそこが好きだった。ただ、それを続けるのは難しいのか。

スミスは現在47歳であり、近年では作品ごとに、いろいろなキャラクターを演じている。本作では、クールな天才詐欺師。でも、どうもしっくりこない。観ていてこの映画って何なのだろう?と、途中までよくわからなかった。ラストが近づいてわかったきた。オシャレな犯罪映画を狙っているのかな、ということ。ただ、どうもノレない。どこか、ちぐはぐなんだ。

映画前半に披露される盗みのテクニックは、なかなか見世物として、おもしろい。それが終わると、後半はガラリと舞台を変えて、ひとつの大きな詐欺を中心としたドラマになっていく。オシャレな犯罪映画に必要なものは何か? 洒落たサントラ、会話、シーン。それらがどうも見当たらない。ただ、ひとつ印象に残るのは、スミスが隠していて、こぼれ落ちた親しみやすい雰囲気。僕は47歳でも「気のいい、にいちゃん」になれると思う。次の作品で、そうなれないだろうか? 30点。

▼ アート・メディアライター 石川 伸一(NUMERO DEUX)

 

 

 

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2016.5.15 映画の琴(コト)『バードマン』

2016.05.15

birdman
『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(2014年)

映画の時間はいつも楽しい。
観たい観たいと思っていた。やっと観た。

上映当時から評判が高かった作品。ぜひ映画館で観よう!と思って行きそびれる。そして、しばし忘れる。というよくあるパターン。でも、ふと思い出した。その時間のおかげでDVDも安くなっている。自宅のミニ・シアター(ただの居間)で観ることができた。僕は主演のマイケル・キートンが好きだ。そして、エドワード・ノートンも好きだ。だから、期待ができる。僕はキートンの「バットマン」が一番好き。エドワード・ノートンは、いろいろ印象的な役が多いけど「ファイトクラブ」が好きかな。

さて、本作はストーリー自体が、それほど突飛ではない。「バードマン」という、娯楽作のスター俳優だった主人公(キートン)が歳をとり、今度はニューヨークの舞台俳優としてカムバックしようとしている。そのドラマ。 娯楽作品からアートな舞台を目指す。そこの難しさ。家族との関係。ブラックユーモア。迷路のような楽屋の中を中心にグルグルとドラマが展開されていく。その「カメラワーク」と「サウンドトラック」が、とってもセンスがいい。この2点が本作の見どころ。それは主人公の内面世界の話だといえる。スターだけの問題、というより誰もが生きていると、変わりたい、カムバックしたい、というコトがあると思う。そんな点を考えさせくれる。90点
『バードマン』興味があったら、楽しんでください。

▼ 石川  伸一(NUMERO DEUX)

 

 

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