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2017.10.8 映画の琴(コト)「ダンケルク」

2017.10.08

ダンケルク
「ダンケルク」(2017年)

クリストファー・ノーラン監督の新作。僕はこの監督作品は好きだけど「バットマン」は苦手かな。ティム・バートン版のほうが好きです。これは否定ではなくて、ノーランの「バットマン」のカッコよさというのはわかる。だけど(僕の考える)アメコミヒーローという枠をはずれてしまっている感じがするのだ。それは「バットマン ビギンズ」の最初のシーンから違和感があった。

これは単なる僕のバートン好きだからかもしれないけど、ノーランの料理の仕方というのは非常に個性的で「インターステラー」は大好きなんだけど、SFというより「ノーランだなぁ」とまず思っていますのは、いいのか悪いのかわからない。

「ダンケルク」もまた例外ではない。実際にあった出来事の戦争映画という、いろいろなアプローチでたくさん作られたジャンルの作品。それをどう料理するのか? と思ったら、陸・海・空の3つのシーンで構成して「陸」の緊張感を中心に、控えめなドラマで展開されている。大作戦のスケール感や、カルシタスというのは、とにかく抑えて、抑えて大きな画面に、ちいさなドラマが進んでいって、ちいさなままに終わる。大スペクタルでもないし、ちいさく切り取った濃厚なドラマがある訳でもない。あえて、いえば「現実的な詩」ということだろうか? とにかく、僕はノーランのファンだといえる作品である。

ishikawa
Text by  メディアリサーチャー 石 川 伸 一 (NUMERO DEUX)

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2017.09.24 映画の琴(コト)「ワンダーウーマン」

2017.09.24

wonderwoman
「ワンダーウーマン」(2017年)

アメリカン・コミックの映画化。最近多いですよね。でも、なんだかんだいって主役のヒロインは少なめ。本作は、正統派強いヒロインものだといえます。こういう映画って、主人公が「強い」というのは当たり前なので、圧倒的な強さをみせるシーンというのが必要で、CGの発達のよってそのあたりは本当に昔よりは映像化しやすくなっていると思う。本作でも迫力あるシーンがあります。

ただ、それだけでは2時間の映画にならない訳で、プラスアルファが必要になる。ワンダーウーマンは、クラシックなヒロインなので、戦闘時にそんなに強い個性がない。バットマンのようにさまざまな武器や乗り物を使いこなす訳ではない。見せ方のバリエーションは少ないのだ。だから、本作は思ったりより、アクションは少ない。控えめにしている。

その代わり主人公が「女性」という部分をうまくクローズアップしていると僕は感じた。なんて、書くと女を売り物にいているのか、と思われそうだけど、そういうのとはまったく違うと言っておきたい。あくまで、僕の感覚なんだけど、本作は女性の持つ、細やかさ、母性的な優しさ、そして、男性が女性に抱く感情というのを、いろいろなシーンで、小さくキメ細かく表現されていている。それが一番の見どころだと思います。そして、最初はお姫様的な勘違いをしていた主人公が、人類を守る立派なヒロインになるところが、描かれいる。

ishikawa
Text by メディア・リサーチャー 石 川 伸 一 (NUMERO DEUX)

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2017.07.09 映画の琴(コト)「LION ライオン 25年目のただいま」

2017.07.09

lion
「LION ライオン 25年目のただいま」(2016年)

実話をもとにした作品。話はインド貧困家庭の主人公。5歳の時、ある予想外のアクシデントから家族とひき離されてしまう。危険なホームレス状態を乗り越え、オーストラリアの裕福な夫婦の養子となる。なに不自由のない生活を手に入れた主人公だが、大学生になった時。生き別れの家族を探す決意をする…。

実話ベース。そのため話に極端な転結はない。良い話をとして普通の流れだ。構成は主人公がホームレスな5歳の頃と、養子となり大学生になった2部に別れる。印象としては、ホームレス状態の緊張感と、インドの光景を美しく捉えている点で、5歳の頃のシーンが圧倒的に印象に残る。極論すれば、僕としては大学生からラストまでは、単なる答え合わせの場面だと思うのだ。どうもあまり惹かれるところがない。

そこまで違和感を感じるのは、子役と成人役のギャップが大きいところにある。ルックスの点で、まず似ているとは感じられなかった。加えて、5歳の頃の役はやんちゃながら頭が良く、ハングリー精神もあり、世の中の闇も理解している雰囲気。ところが、大学生になった主人公は、育ちの良い、親しみやすい社交的なキャラクターに加えて、ひ弱な印象もある。弱く陰がない。とても5歳で絶体絶命とも思える危機を乗り越えて、少数派といえる恵まれた家庭への養子になれた人物につながらない。

僕は、主人公の大学生時代役のデーヴ・パテールは良い俳優だと思う。養親や恋人、義理の兄弟の関係性について演技もうまい。彼自身も魅力的なキャラクターで映画の画面映えもする。シリアスな映画の雰囲気もグッと良くしている。ただ、どうしても5歳の頃の主人公とつながらない。そのため、5歳と大学生の主人公は別の人物であり、大学生の彼は他人の家族を探す行動をしているように感じられる。

僕は、もっと5歳の頃の主人公とルックスも性格も近づけたキャラクターのほうが、主人公との一致という点で違和感は少なかったと思う。ただ、そうなった場合、ラストの雰囲気は暗めとなり、カルシタスは弱くなると思う。そういう意味では、本作のキャスティングは正解なのだろう。でも、2人の主人公は似ていないと思うのだ。

ishikawa
Text by アート・メディアライター 石 川 伸 一 (NUMERO DEUX)

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